法律ノート 第1026回 弁護士 鈴木淳司
September 25, 2016
このアメリカ法律ノートが今のところ二冊の本になったのは、ある弁護士の方が出版社につなげてくださったからです。先日その弁護士の方に本当に久し振りにお会いしました。私の見立てとしてはまだまだお元気そうでしたが、ご本人いわく、夏は避暑地に行って、半分隠居をはじめたよ、とおっしゃっていました。少々時間をいただいて色々お話をさせていただき、楽しい時間を過ごしました。時間の経つのは早いものだとつくづく思いました。なかなか挨拶をしなかった非礼を詫びましたが、つい最近お会いした錯覚に陥りました。
「弁護士費用ー成功報酬か否か」[3]
さて、前二回、「最近、日本から米国に進出してきた企業で会計の分野で働いている者です。会社の売掛金の回収で弁護士に頼もうと思って、色々話を聞いているのですが、成功報酬で請け負ってくれる事務所と、事件の終了まで弁護士の費用を負担しなければならないと言う事務所があります。どのように弁護士費用を考えれば良いのかわかりませんが、何か指針はありませんか」という質問を考えました。
今回は続けて考えて最終回としましょう。
完全成功報酬制と着手金+成功報酬
前回は完全成功報酬制という考え方と、着手金プラス成功報酬という概念を考えました。弁護士の報酬にも色々なパターンがあるんですね。
今回は、時間単位での請求というコンセプトを考えておきましょう。
時間単位で報酬を考える
実は、成功報酬という受任方法はアメリカでは一般的ではなく、多くの案件は弁護士の時間がどの程度かかるかで算出されます。
時間ごとに細かく明細を出して請求する場合もありますし、ある程度時間がかかることを予測して、一括して請求する場合もあります。
基本的な考え方として、弁護士は時間を売るという考え方をしています。
したがって、どの程度の時間、案件に専従するのか、という観点から考えているのです。この時間を計算する方法は、通常、毎月区切りで請求することもありますし、一括して先払いをすることもあります。ほとんどの弁護士は後払いではなく、先払いを要求します。弁護士としても回収できない危険を避けたいのですね。
このようなスタイルで法律事務所はキャッシュフローを維持しながら事務所を経営していくのがアメリカでは普通です。私の所属する事務所も同様です。
コスト度外視の闘いも
時々、私は信義に反するような事件で、被害者を弁護したいと思い、金勘定を無視して弁護をすることがあります。普通の事務所ではキャッシュフローが悪くなるので、同僚に良い顔をされないかもしれません。それを承知で引き受けている事例は、読者のみなさんも法律ノートで時々ご覧になっていると思います。私のわがままに我慢をしてくれる、所属事務所に感謝してもしきれないのです。
弁護士にとって、このようなお金のことを考えない闘いというのは、かなりリスクになるのです。公の利益のために、自分を犠牲にする弁護士も多くいるのです。
時間計算の単価は様々
時間計算で請求する弁護士が多いと書きましたが、一時間あたりの値段というのはまちまちだと思います。都市部では高いですし、大型の事務所はオーバーヘッドのコストもかかるので、単価も高くなる傾向にあります。
時々、自分の時間あたりの値段を自慢するような人がいますが、良く意味がわかりません。
時間あたりの値段が高ければ良いとは言い切れませんので、どの程度の時間がかかるのかとの関係で、リーズナブルかどうかを見極める必要があると思います。
今回の質問のような事例では、掛かった時間で弁護士の費用を決めるケースが多いと思います。
実際には、かなりの高確率で回収の見通しがなければ、成功報酬での契約を躊躇する弁護士が多いのではないでしょうか。
次回また新しい質問を考えていきましょう。また、一週間季節の変わり目ですので風邪に注意しながらがんばっていきましょうね。