今回は、ビザを利用してアメリカで就業する外国人一般が持つ「権利」について、考えてみたいと思います。
外国人もアメリカ国民同様に守られている
私が所属する事務所では、雇用者側、被用者側を問わず、様々な外国人の「権利」に関する問題が持ち込まれますが、外国人のなかには、雇用主がビザのスポンサーとなるため、被用者である外国人の権利が弱い、と考えられている方もいます。
たしかに、力関係の観点からは、ビザをスポンサーする、されているという関係にあるので、権利が「弱い」のではと思われる方がいても、仕方がないのかもしれません。
しかし、そのようなことはなく、ビザにもとづいて働いている外国人であろうが、アメリカ国民であろうが、法律では同様に守られています。あまり「権利、権利」と敏感になるのはどうかとも思いますが、正当な権利を侵害する行為については、恐れるに足らずです。自分で抱え込まずに、相談先は必ず確保されたほうが良いと思います。
外国人でも米労働法は平等に
さて、外国人の権利で問題になる主なポイントに労働法の問題があります。
私もたくさんの事件を経験してきましたが、外国人であろうと米国民であろうと、米国内で就業する人達には同様の権利が保証されていることを覚えておいてください。
たとえば、最低賃金、時間外就労、差別、ハラスメントなど、一般的に適用される法律は外国人にも等しく適用されます。
労働法に関しては、州レベルでも連邦レベルでも、相談窓口は豊富に用意されています。弁護士に相談しなくとも、行政機関の相談窓口が用意されているのです。
外国人が特別に配慮される点
労働関係で、外国人に特有の問題点がいくつかあります。
まず、外国人が正当な権利を行使する場合など、雇用者が、ビザに関して不利益な言及をするというケースがあります。
たとえば、雇用者が「ビザを剥奪するぞ」とか「ビザに関して警察や移民局に言うぞ」というような場合です。これは、違法です。雇用者側としては、ビザにかかわらず、正当な懲戒をすることは可能ですが、ビザを絡めて懲戒するぞ、ということは禁止されていますので注意が必要です。
それから、外国人労働者に対して、住居費、制服、仕事に必要な器具の提供などをした対価として、給金から差し引くということを行っている雇用者も少なくありません。
まず、そもそも就労時に契約書などの約束に書かれた内容に違えている給与しかもらえていない場合、最低賃金を割り込んでいる実際の支払しか受け取れない場合などには、違法ということになります。
雇用主にクレームを出すこと、その対策とリスク
ビザを持って働いている場合の外国人の苦悩は、雇用者に対してクレームをして、辞職するか、解雇された場合、そのままアメリカに滞在して就業を続けていけるのか、ということがあります。
たしかに、これはビザの種類によって、場合分けをしなければなりません。
どのようなビザにしても、スポンサーが基本的に必要なので、新しく、ビザをスポンサーしてくれる雇用主を探すことが第一歩になると思います。
また、新たにスポンサーをみつけ、雇用先を変更したとしても、変更後に前のスポンサーに対するクレームをすることも可能ではあります。
ただし、クレームをする期間はある程度限られています(これを出訴期間の問題といいます)ので、行政機関や弁護士と相談して対応策を事前に協議しておく必要があります。
スポンサーが見つからない場合には、アメリカを離れなくてはならなくなりそうです。
アメリカ国籍を持った人と婚姻するなど、家族関係に頼ってビザや永住権の申請をする方法はありますが、就労を基礎として新たにビザを取るというのであれば、どうしても新たなスポンサー開拓をしなければならない、ということは心においてくださいね。
外国人のビザスポンサーになる側として
一方で、雇用者側としても、外国人に対して一切米国民と同様に扱うことが義務付けられているわけですから、就業規則や、違法行為の通報先などを整備したうえで、外国人であること、差別を禁止すること、などについて社内教育することはとても重要であるということを覚えておいてください。
このような対応を会社がすることにより、会社ぐるみで不正をしているのか、会社内の特定個人が不正な行為をしているのか判断材料となります。
とにかく、外国人であることで、一切労働法などで別扱いすることは法律で禁止されています。このことは、心に留め置いてくださいね。
次回また新しいトピックを考えていきたいと思います。