法律ノート 第1501回 弁護士 鈴木淳司
Nov 29, 2025
皆さんはサンクスギビングをどのようにお過ごしになったのでしょうか。私は美味しいターキーやハムを食べ、いつもは会わない人たちと楽しい会話をして、良い気分転換になりました。今回は一回皆さんからの質問にお答えするのをお休みさせていただき、最近扱った事件について考えさせてください。
カリフォルニアの山の奥にある車の保管場所(ヤード)で、私と既知の友人男性は工具を持って、ぐちゃぐちゃになった事故車から被害者の持ち物を引き上げていました。
かなりの大事故でドアもうまくあかないため、私の力では足りず、助けを借りていたわけです。
そこに別の事故車を見に女性が来て、罵詈雑言を吐き散らしていました。
何かと思って見に行くと、娘が事故に遭ったということでした。
まだ高校生で運転し始めたばかりなのに、母親の車を借りているところで、対向車がレーンをはみ出てきてぶつかってきたということでした。
私がヤードに入るときに登録していた連絡先にこの母親から電話が入ってきたのは数日後でした。
この女性はこのヤードのオーナー夫婦でした。
話があるということなので、次に機会を見つめてその夫婦と娘さんに会うことにしました。
娘さんは白人でしたが、事故の影響かさらに青白く、細く見えました。
事故の話を聞きましたが、神がいるとすれば、彼女を助けたのだと思いました。
飲酒運転で操舵不能になったトラック運転手が対面通行の道路をはみ出し、被害者のいるレーンに入ってきました。
この娘さんの前を走るSUVに正面衝突し、夫婦が亡くなりました。
そして、そのトラックは宙を舞い、娘さんの車にぶつかりました。
うまく娘さんがハンドルを切っていたこともあり、外傷はありませんでした。
この前を走るSUVのおかげで命を守ってもらったという結果といえるかもしれません。
遠い場所の事件だったので、私は受任を躊躇していましたが、「今までヤードを経営してきて、実際に事故車を見にきた弁護士は皆無だったけど、あなたは詳細を見にきていた。
だから頼みたい」と懇願されました。
未成年者のことも助けてあげたいという正義感もあり、受任しました。私自身は「交通事故専門」とは言えませんが、受任をすることがありますし、結果は出してきました。
この「専門」ではないことがあとで、好結果につながります。
この彼女の様態は事故の日にアドレナリンが出ていたのかもしれませんが、その後悪化しました。
めまいや気絶も経験し、フラッシュバックもひどくなってきました。
また、家族の引っ越しなどもあり、治療の進行が遅れていました。
私は、すべて治療が落ち着くまでゆっくり治してほしい、ということを言っていました。
やはり、損害賠償をするとしても、一番重要なのは、健康です。
体がちゃんと治癒することが最優先です。
安心したようで、忙しい親も付き添いながら、治療を進めていき、状況は好転してきました。
一方で、この事故では死亡した夫婦がいます。
私が弁護している娘さんも、このお二人が守ってくれたという状況にあります。
私も、娘さん、そしてその親御さんも、やはり死亡した夫婦が守ってくれた、という気持ちがあります。
その夫婦の弁護士が当初から私に連絡をしてきました。
「一緒に弁護をしよう」とか、「事件の内容を共有しよう」とか、いわゆる仲良くしようということでした。
しかし、私は牽制を続けました。
保険金の総額は決まっているので、最終的には、この弁護士とは友好関係にはならないということをわかっていたからです。
こういうとき、弁護士としては板挟みになります。
自分のクライアントのためには全力を尽くしたい、という一方で、夫婦を突然なくした家族にとっては、主に3人の成人した子供さんたちですが、かけがえのない両親を一瞬にして失ったわけです。
非常に悩ましい状況です。
死亡した夫婦の弁護士は執拗に私に連絡をしてきましたが、受け流していました。
時間が流れ、私の弁護する娘さんの状況も好転してきてトンネルの出口が見えてきました。
死亡してしまった場合には、すぐに損害額が確定できるのですが、これから生きていく人たちにとっては、損害額の算定が難しいのです。
ある程度目処がついてきたこともあり、調停が設定されました。
私はクライアントに「急いでおらず、その娘さんの回復が最重要だ」と言ってきましたが、急いでいる弁護士がいるので、調停がゴリ押しされてきました。
かなり引き伸ばしてから調停をすることにしました。
ところが、気が進みません。
私が、クライアントである娘さんの利益を主張すればするほど、保険支払額の総額が決まっているので、死亡した夫婦の相続人が受け取る額は減ります。
一方で、私のクライアントはまだ未成年者です。
これから長い将来がありますので、その将来を守らなくてはなりません。
私は訴訟弁護士ですから、調停を蹴って訴訟に行く気はある、ということをクライアントにもわかってもらい、調停に臨みました。
死亡した夫婦を代理するのは、いわゆる「交通事故専門」の経験豊かな人ですが、私のクライアントのリハビリは、そこまで必要ではない、などとねじ込んできました。
一般的に交通事故専門の弁護士は、自分が懇意にしているカイロプラクターに事件を送り、そこで治療費をかさ増しするということを日常的に行っています。
事件をつくっている面があるのです。
私は、本件でも、他の件でも、とにかく治療している医師から指示を受けて行動をするように言い含めています。
そうすれば、本当に客観的に必要な治療を受けていることになるからですし、そうあるべきです。
私が「交通事故専門」ではないことが、主張に迫力を加えました。
最終的には私のクライアント家族が満足する額で和解に至りました。
私もサンクスギビング前に、この家族にも平穏を提供できたとホッとしました。
死亡した夫婦の相続人も和解が成立したのですから、納得をしてくれたのだと思います。
皆、被害者ではありますので、和解したということで、このホリデーシーズンを平和に過ごされているとよいな、と心から祈っています。
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