法律ノート 第1447回 弁護士 鈴木淳司
Dec 9, 2024
もう12月ですが、例年に比べて比較的暖かい日が多いように感じます。
これも温暖化の一形態なのでしょうか。
スキー場も雪の少ないところが多いと聞きます。
もうホリデーシーズンですが、以前と比べて各民家のホリデーデコレーションがきらびやかになってきていますね。
LEDの多用もあるのでしょうが、私が驚くのは空気で膨らませたサンタや動物とかが、人間よりも大きなサイズでいくつも並んでいる家があることです。
片付けも大変でしょう。車で夜走っていると、車のライトをつけなくても良いくらいキラキラしています。
みなさんは、お元気にされていますか。
米_企業機密の保護(1)_1447
さて、今回からまた、皆さんからいただいている質問を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると「カリフォルニアで会社を設立し、数年前からスタートアップを行っています。最近、一人被用者が退職したのですが、私の持っているノウハウを不正に流用されているような情報をウェブで目にしました。もちろん、退職後も守秘義務等で情報は守っています。雇用をするときにある程度弁護士からもアドバイスをもらいました。ただ、情報の保護が不完全だったのではないかと思うようになりました。会社の財産を守るために法律的に何ができるのか、そして不正に使用されてしまった場合には何ができるのか、知りたいです。」というものです。
とにかく、情報など目にみえないものが財産である企業も増えていますので、今回の質問にあるような、情報の管理、守秘はとても重要になってきています。
企業機密情報の漏洩を防ぐ規定@カリフォルニア
カリフォルニア州法においては、企業機密情報の漏洩を防ぐための規定があります。
まず、見ておきたいのは、カリフォルニア州統一取引機密保持法(CUTSA)です。
このCUTSAにおいて、取引機密とは「一般に知られていない、独立した経済的価値を有し、その機密を保持するために企業において合理的な労力がかかる情報」と定義されています(Citizens of Humanity, LLC v. Costco Wholesale Corp., 171 Cal. App. 4th
1、San Jose Construction, Inc. v. S.B.C.C., Inc., 155 Cal.App.)。
ですので、まずは今回質問されている方が言う「機密情報」は、この定義に当てはまるものであることを実際に確認する必要があります。
企業機密を保護する要件
このCUTSAによると、企業機密を保護するためには、企業において、情報を「機密」または「企業機密」としてラベル付けすること、情報へのアクセスを制限していること、情報を開示する前に受信者に情報を保護することに書面で同意させること、を保護の要件としています。
今回の質問をされている会社も雇用時に弁護士の方に相談されているということですので、少なくとも、カリフォルニア州法、特にCUTSAに基づく情報の管理をされているかは確認されなければなりません。
さらに秘密保持契約で保護
次に、企業は、機密情報にアクセスできる従業員との秘密保持契約 (NDA)を通じて、企業機密をさらに保護することが可能です。
NDA契約を作成、締結する場合、機密情報は何かを明確に定義し、その秘密を保持する当事者の義務を概説する必要があります。
主要なカリフォルニア州の州および連邦裁判所は、機密情報を使用して競争したり、顧客を勧誘したりすることを防ぐことを目的としたNDA の効力、そしてその契約の履行について、幅広く認めています(ReadyLink Healthcarev. Cotton、126 Cal. App. 4th 11006)。
したがって、詳細にその企業の「機密情報」をしっかり定義して、どのような義務を課すのか、詳細に記述すれば、情報漏洩の抑止になると思います。
公のデータベースから、企業の機密情報を分離
第三点目ですが、公のデータベースから、企業の機密情報を除くということも広く法律で定められています。
たとえば、民間企業がその事業の維持、所在地移転、または拡大を行うために州または地方自治体が提供している補助金などを利用したい場合、「企業秘密」については、政府のデータベースに基本的には義務付けられている公開の要件から免除し、企業秘密情報を公的にアクセス可能な記録から分離することが義務付けられていて、これによって追加の保護を提供しています。
ですので、守秘したい「機密情報」をちゃんと定めていれば、政府機関もその保護を履行してくれるメカニズムも揃っています。
まずは、上記の3点について、質問されている企業ではちゃんと情報の保護がなされてきたのかを検証する必要があります。
そのうえで、退職した人が情報を流用していると考える場合には、そのことについて、ちゃんと対処していかなければならないので、また次回続けて考えていきましょう。
また、コロナ罹患者も増えているようですが、なんだかインフルエンザと変わらないくらいカジュアルな受け止め方になってきたと思います。
どのような認識でも、とにかくウイルスに感染して良いことなどありませんから、また一週間体を温めながらがんばっていきましょうね。
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