アメリカで起業の手続き‐契約書類(3)_1372

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1372回 弁護士 鈴木淳司
Jun 25, 2023

 消息不明の潜水艦で5人死亡というニュースがありましたが、その潰れてしまった船内を見るとあまりの狭さに恐怖を感じました。
私が疑問なのは、今の世の中カメラやコンピュータが発達しているわけですから、無人で色々な角度から沈んだ船を撮影すれば人間に危険は生じません。
25万ドルも払って乗るなら、何かお金をかけて沈んだ船を撮影して観ることができたはずです。
どうしても肉眼で見たいというのは、ビデオを通して観るのでは満足がいかないという人間の欲求でしょうか。
私はダイビングのプロダイバーの資格があるのですが、40メートル潜るとすでに暗く、浮上するのも気を使います。
今回のような潜水艦が潜った深度はそもそも無謀に思います。

アメリカで起業の手続き‐契約書類(3)_1372

 さて、前回まで「コロナ禍で、すでに10年以上働いていた会社をやめることになり、自分でコンサルタントとしての起業をはじめることにしました。すでに永住権はあるので、個人でIT関係のコンサル業務をしたいと思い、数社とすでに話をしています。今まで、会社内にいると気づかなかったのですが、色々な書類にサインしなければ先に進めずなかなか仕事が始められない状況であります。簡単に一つの契約で始めることはできないものでしょうか。そして、通常はどの程度の期間が経って、どのような書類にサインしなければならないのでしょうか」という質問を考えてきました。
今回、もう一度今回この質問を考えていきたいと思います。

前回までのおさらい

 NDAは締結したとして、次は実際に行う仕事の契約になるわけです。
単発であれば、一つの契約書を締結します。

一方で、継続していくつも契約をするのであれば、基本契約書を締結して、各プロジェクトでワークオーダーを締結するのが一般的です。
ここまでは前回考えました。

一つの契約書で全てを網羅できるか

 雇用関係というのは、包括的に雇用者の指示に従って動く契約ですが、今回質問がある請負契約というのは、目的を達成することの契約ですので、一つひとつプロジェクトの目的が違う可能性があります。
ですので、一つの契約書で全て将来のカバーができるとは言えません。
そうすると、簡単に一つの契約書ですべてをカバーするよりも、プロジェクト一つひとつに関して、どのように仕事を進め、どのような結果を求められるのかは、両者の利益になる場合が多いと思います。

取り決めをはっきりさせて利益を守る

もし、今回の質問者のように、一つの契約にまとめられないか、という質問ですが、契約を締結するのが面倒だと感じられているのかもしれません。
しかし、雇用のように法律では手厚く守られていないマンツーマンのような請負契約であれば、一つ一つプロジェクトを吟味して、当事者同士話しをして、何をやるかをはっきり決めることは、お互いを通して交通整理ができ、お互いの利益を守ることができます。

 請負契約で決めることは、基本的に、目的を設定します。
その目的達成のために、いくら対価として支払うのか、納期はいつまでなのか、何を保証するのか、どのような方法で目的達成を行うのか、他に人を使ってやっても良いのか、誰がプロジェクトに関わるのか、などを決めます。
そうすると、一つずつのプロジェクトで違うところが出てきます。

基本契約書で、契約全体のベースを整理

一方で、基本契約書で基礎的な部分、たとえば不履行があった場合、契約を変更する場合、天災などがあった場合、プロジェクトの進行で何か疑義がありチェックが必要である場合など、細かくプロジェクトに関しない、両者間の整理は基本契約書で行うというのは、やり方としては良いと思います。

契約書締結の面倒臭さも、自己防衛の為

 いちいち契約書の添付書類など改定が面倒だと思われるかもしれませんが、それがイコール自分の防御にもなると思います。
添付書類で、基本契約書を改定していく内容を定めていけば、その時点で必要な契約関係を結べると思います。

 このようにプロジェクト毎に、どのような内容を、いつまで、そして対価になるのかを当事者同士吟味することは、契約関係では良いことだと思います。

今回質問されている方のように、契約書の締結が面倒くさいと感じる方もいるのかもしれませんが、その面倒くさい作業を我慢することで、ご自身のプロテクションになることもあるということを理解してください。

 今回は、一つひとつ深い契約内容は考えられませんでしたが、また読者の皆様の質問を待って考えていきたいと思います。

次回予告

 次回は、法律ノート第1367回から1369回で考えた禁止命令のトピックを補足していきたいと思います。

私の書いた記事を3回通さずよく読まず、第1369回の記事に対して「この様な記事を残されたままではあまり時間のロスやストレスが多くなると思います。」という誰を代理して物を言っているのか、全部を読まずに浅い批判を行う読者がでてきたので、もう少し1369回の記事を深めて書いていきたいと思います。法律ノートは、何回かに分けて一つのトピックを書いています。

ちゃんと記事を辿らず自分の狭い経験だけで語る人がいるのは残念なことです。
とは言え、私が書いていることが欠けていることもあるでしょうから、次回対応をしていきたいと思います。

また、一週間暑さに気をつけてがんばっていきましょう。

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作成者: jinkencom

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