アメリカで起業の手続き‐契約書類(2)_1371

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1371回 弁護士 鈴木淳司
Jun 19, 2023

 2023年のカリフォルニアも、もう夏ですが、冬から春にかけて信じられないような雨が降ったので、いつもと違い若干蒸しているところが多いです。
雨のおかげで、虫達も活発になっていて、いつもより蚊、アリ、などの小さな虫が忙しくしています。
人間を刺す虫たちとの戦いが激しくなりそうですね。
みなさんは蚊にさされていませんか。

アメリカで起業の手続き‐契約書類(2)_1371

 さて、前回から「コロナ禍で、すでに10年以上働いていた会社をやめることになり、自分でコンサルタントとしての起業をはじめることにしました。すでに永住権はあるので、個人でIT関係のコンサル業務をしたいと思い、数社とすでに話をしています。今まで、会社内にいると気づかなかったのですが、色々な書類にサインしなければ先に進めずなかなか仕事が始められない状況であります。簡単に一つの契約で始めることはできないものでしょうか。そして、通常はどの程度の期間が経って、どのような書類にサインしなければならないのでしょうか」という質問を考え始めました。

まずはNDAの内容をよく理解しておく

前回は、NDA(守秘義務契約)とはどのような内容なのかを考えて、ビジネスの関係に先駆けて出てきた場合には、NDAの目的は機密の保持ですので、開示される情報について、秘密を守ることに違和感がなければ双方向の形にしてサインをすることはさほどの問題にはならないと思います。

ただし、機密の対象となる情報は何なのか、良く理解して、あまりにも機密の範囲が広ければ狭める交渉をすることもありえます。
とにかく、何を開示してはいけないのか、良く理解しておくことは重要です。

契約書をどうするかは当事者次第

 また、今回質問されている方が、契約書を一つに纏められないものか、ということを言われています。

もちろん契約書がどのようなものになるのかは、当事者の間で好きなように変えられるのが原則です。
究極を言えば、口約束だけでも仕事の依頼はできますし、その金額も決められます。

ただし、口頭だけで契約をすると、後日、話が食い違ってきたり、契約の履行を求める場合、裁判で解決する場合の出訴制限の違いが生じたりします。
お互いにとっての不利益を避けるために、書面があるのが一般的です。

NDAは、NDAのあとに出てくるであろう契約書と纏めて一つにすることは可能なわけですし、一つに纏まっている契約書もいくつもあります。
一方で、NDAと他の契約を分けておく実益もあります。

NDAと契約書を分けるメリット

NDAは、秘密を守る契約ですから、期間についても実際の仕事をする期間よりも、守秘する期間が長くなることも少なくありません。
また、実際に仕事をする契約は、以下考えていきますが、労務を提供して、それに対して対価をもらうという内容になりますので、NDAとは趣が違う内容になります。

同じ当事者で結ばれるとしても、内容が異なることを約束するわけですから、2つ違った契約にする実益もあるわけです。
一つにしたいというお気持ちはわかりますが、目的が違う契約書の場合別々に締結したほうが、実益がある場合も考えられることを理解してください。

請負契約する=「やること」を決める

 さて、NDAを締結した場合、お互いに企業と質問者で、情報を開示してどのような仕事をどの期間内に、どういった対価で行うのか話を始めますね。

雇用関係と違って請負契約ですから、ある程度の範囲を決めて全体的に監督をしながら仕事をしてもらうというよりは、具体的に「やること」を指定して、その成果物に対して対価をもらうということになります。

そうすると、「やること」の設定には、ある程度のやり取りが必要なうえに、やり取りをして合意をしたことをできるだけ詳細に決めておかなければなりません。

基本契約書+αで合意する利点

そして、「やること」の内容を決めるのは一度ではなく、何度も行われる可能性もありますよね。
そうすると、「やること」一つひとつについて新たに契約書を締結するというよりも、例えば最初に基本契約書を締結し、そのあと「やること」一つひとつについて、ワークオーダーなどの形で対応することも考えられます。

または、基本契約書に添付書類1,2,3として、「やること」を記載していくという方法論も考えられましょうか。
雇用は包括的にポジションを決めて、仕事を決めてあとは、会社の指示にしたがって仕事をするわけですが、請負契約というのは、成果物が何かを定めて、それに向けて仕事をしていくという性質があるので、「やること」を決めておくことが重要になるということを理解してください。

「やること」はクリアーに合意しておく

ITの関係者であれば、「やること」もそれなりに専門的に記載しなければならないでしょうし、法律の問題というよりは、「やること」をどれだけクリアーに合意しておくのか、というところが問題になってきます。
ですので、基本契約書を締結したあとに、「やること」を詳細に決めるというやり方は、理にかなっていると思います。
そういう意味では、またサインをしなければならない書類が増えてしまう可能性はありますね。

 次回ここから考えていきましょう。

私はなぜか夏になると時々カレーを食べたくなります。
母によると、私が母の胎内にいるときに、母親はカレーを無性に食べたくなったと言っていました。
そして、私は7月に生まれたので、この時期から食べたくなるのかもしれませんね。

みなさんも栄養補給をして、夏バテ対策をしながらまた一週間がんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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