法律ノート 第1365回 弁護士 鈴木淳司
May 7, 2023
春真っ盛りと思ったら、また雨が多くなってきました。
ミシガンから友人家族が遊びに来ていたので、週末付き合っていましたが、晴れていない、各所濡れている、というカリフォルニアを他州から来た人たちに説明するのが大変でした。
カリフォルニアといえば、火事というイメージが植え付けられているのかもしれません。
かなりの大所帯でバーベキューなどを楽しみました。
次回は、私がミシガンにいって季節の良いときにゴルフでもしたいものです。
皆さんは週末リフレッシュされていますか。
米国_隣人トラブルによる調停(2)_1365
さて、前回から「ベイエリアで一軒家を借りて住んでいる学生です。友人たちと一緒に借りているのですが、最近隣家とのトラブルが色々生じています。音楽がうるさいとか、車の止め方が悪いとか、夜中に大声が聞こえるとか、口頭や書面で苦情が入ります。一度は警察まで呼ばれましたが、ただ事情を聞かれて終わりました。私の家では、隣人が言うような問題を起こす人はいませんし、言われている苦情も理解できないものが多い状況です。このようなことが1年近くつづいているのですが、法律でなんとかならないものでしょうか」という質問を考えてきました。
調停サービスとは
地域の調停(Mediation)がそれなりに役立つということを前回考えました。
調停というと、皆さんにわかりやすいのが離婚の調停という響きでしょうか。
調停というのは、裁判という正式な手続ではなく、意見や立場を主張しあい、調停委員がその間を取り持って、お互い納得のうえで事件を解決するやり方です。
訴訟は、プロがいないと難しい
訴訟というのは、民事訴訟法とか、刑事訴訟法という言葉を聞かれたことがあるかもしれませんが、手続がびっしり決まっています。
その手続に沿って、進行していくので、プロがいないとなかなか太刀打ちできません。
調停なら、当事者間でも実行可能
一方で、調停というのは、訴訟法の枠に囚われているわけではなく、どちらかというとフリースタイルで言うことを言い、そのうえで、仲を取り持つ調停委員がお互いを説得していくという構図になっています。
ですので、今回質問されている方の事案に関しても、調停であれば弁護士に頼らずとも形としては、当事者だけでも充分実行可能になります。
ローコストで、相互理解しやすい
コストを抑えて、相手方の言い分も聞けるということはとても効率的だと思っています。
調停がうまく行かず、訴訟になるとしても、相手方が何を言っているのか充分に理解している方が、裁判はうまく進むと思っています。
このような地域団体が調停を斡旋しているのであれば、ぜひ隣人問題については調停を活用されると良いと思います。
調停を申し立てると相手方に通知されます。
そして、隣人も参加することになると(通常、訴訟よりもコストが掛かりませんし、隣人も言いたいことを言える機会になるわけです)、お互いに証拠や書面を事前に出す場合もあります。
事前に出さない場合には、当日状況をすべて説明する必要が生じてきます。
どのような形でも事情を説明するわけですから、自分が考えていることについてすべて時系列でメモにまとめておくのが良いと思います。
箇条書きが良いと思います。
調停委員を間に挟むこともできる
実際に調停になると、隣人と相対することはあまり好まないかもしれません。
そのときは調停委員にいって、一方的に話を聞いてもらい、交互に話を聞きながら調停を進めることもできます。
調停は、何かルールが細かくあるわけではないので、通常は訴訟では出せないような証拠も出して、聞いてもらうことも可能になります。
訴訟では、作法が決まっていて、一定の証拠は出せない、という場合もあります。
ですので、調停では幅広く主張ができるので、裁判よりも、自分の持っている不満、なぜ相手方のやっていることが不当なのか、などを主張できることになるわけです。
手続きも数時間で終わる場合もありましょうし、数日かかる場合もあります。
進行についても、決まったものがあるわけではなく、経験のある調停委員はちゃんと仕切って、お互いに主張するポイントをまとめるなどの対応もしてくれるでしょう。
そうすると最初から、調停委員がどういうスタイルで調停をするのか、確かめた上で自分の快適なやり方で進めたいということを進言することもできると思います。
また、隣人がどのように考えているのかも聞けるチャンスであります。
隣人が考えている問題、を知る機会
もしかしたら、今回質問されている方も気づかないような問題が潜んでいる可能性もありますよね。
自分たちで気づかなかった、隣人が考えている問題というのも、知ることができるかもしれません。
また、コストについても、弁護士に委任するよりもかなり安く調停ができる可能性が高いです。
隣人問題で、訴訟にお金を費やすのは馬鹿らしいです。
仲良くなれば良いですが、仲良くまではできなくとも、相手方がどういう思考回路をもっているのか、それが常識に外れているのかなどを調停委員を交え色々な意見を聞くこともできますので、今回質問されているような事例では、地域に根ざした調停サービスをぜひ活用されてください。
次回また新しくいただいている質問を考えていきましょう。
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