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虚偽の話をして求婚した米国人男性を訴えたい_1091

法律ノート 第1091回 弁護士 鈴木淳司
Jan. 10, 2018

 法律ノート読者の皆さんあけましておめでとうございます。今年も法律ノートをよろしくお願いいたします。2017年年末はバタバタしまして、新年を迎え若干のんびりすることができました。皆さんの年末年始はいかがだったでしょうか。皆さんにとって平穏で幸せな一年になりますように祈っております。

虚偽の話をして求婚した米国人男性を訴えたい_1091

 新年を迎え、最初に取り上げる質問は以下のようにまとめられます。「はじめて法律相談をする者(女性)です。私はアメリカ(中西部)の男性とインターネットで知り合いました。数年インターネット上でやり取りをしていたのですが、彼から結婚をしたいという話になりました。実は、その当時私は別居していた夫がいました(子供はいない)。私はアメリカに行ってみたかったこともあったので、夫からの離婚の申し出を承諾し、離婚は成立しました。また、仕事もパートで2つやっていたのですが、それも辞めて渡米しました。結婚することを念頭に渡米して彼と合流したのですが、彼が言っていた持ち家もなく、無職であり、とても一緒に生活できる状況ではありませんでした。結婚をすればアメリカで働けるので、はやく結婚をしようと言われましたが、やはり結婚には踏み切れず日本に帰国しました。こういう場合、詐欺などで訴えられないものでしょうか。」というものです。

SNSを通じた犯罪は急増中

 新年からあまりおめでたくない話でありますが、弁護士の仕事はこういうものであります。いただいた長い電子メールの文面を見ると、法律相談というよりも人生相談に近い感じがしました。やはり、怒りなど感情が収まらない状況なのかもしれません。

 インターネットでの出会いは近年当たり前で、今回相談されている方のような状況も少なくないと思います。ただ、良かったのはなんらかの犯罪に巻き込まれなかったことでしょうか。ソーシャルメディアなどを通じての犯罪が急増していますので、そういったことはいつも頭に入れておかなければならないと思います。

 さて、今回のような色恋沙汰に関する話題がこじれて法律の問題になることもあろうとは思います。よくちまたでは「結婚詐欺」という言葉も耳にしますよね。しかし、結婚などをエサにする話はなかなか法律で咎めるのは難しい現状があります。

 以下、考えていきましょう。

裁判での立証が難しい詐欺

 今回の相談にあるような内容で、どのような請求ができるかを考えると、この男性はお金を盗んだり、横領していたりといったことはありませんので、直感的に考えられるとすれば詐欺ということになるのでしょうか。

 詐欺というのは、かなり裁判で立証が難しいのですが、今回のような事例の場合は一層難しくなります。詐欺というのは、お金を取ることを目的とした行為なので、まず「金を取るぞ」という意思が立証できるかカギになります。そしてその「金を取ってやるぞ」という意思に基づいて騙してお金を払わせるという一連のプロセスが数珠つなぎになっていることが必要になります。

 法律用語で言うと、詐欺行為、錯誤、処分行為という流れと言います。用語はどうでも良いのですが、金を取ってやるぞ、という意思を持ってから一連のプロセスが繋がってはじめて詐欺というものが主張できます。そうすると、一部でも、このプロセスがなかったりつながっていないと詐欺は成立しないのです。

詐欺があっても損害がなくては裁判にできない

 今回の相談されている事例では、男性はお金や財物を取ろうとしているわけではなさそうです。たしかに相談者に対して見栄を張っているのか、いい加減なのか、わかりませんが、事実とは違うことを伝えています。相談者はその虚偽を信じて渡米しています。そうすると、詐欺にひっかかったと思うかもしれませんが、この男性が「お金を取ってやるぞ」という意図をもって嘘をいったとは立証し難いわけです。

 また、詐欺があったとしても、損害がなくては裁判できません。今回相談されている方は、たしかに、離婚もし職も離れたという自分にとっては不利益を被ったのかもしれません。また、渡航にお金や労力もかかっていることでしょう。しかし、相手の男性にとって何か利得があったとそもそも言えないかもしれませんし、虚偽の話からダイレクトに損害が発生しているわけではありません。ですので、今回のような場合には、「詐欺」というのは法律的には主張するのは難しいかもしれません。

 もちろん人として、このような目に遭っている方を見るのは心苦しいですし、お怒りもごもっともだと思います。最善は、自分に合ったパートナーをはやく見つけて過去を忘れることではないでしょうかね。

 次回また、新しいトピックを考えていきたいと思います。今年も法律ノートをよろしくお願いいたします。東海岸は冷凍庫のようになっていますし、ベイエリアは雨が多いですが、新年を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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前科あり。米国入国できる?

August 08, 2017




 
前科がある場合の米国入国
 
トランプ政権となって、外国人の犯罪がフォーカスされることが多くなりました。かなり、多くの方々が心配されている分野でもあります。ベクトルは違いますが、移民に対する締め付けは、先週トランプ政権がサポートする移民法の大改正案(議会を通過するのは現実的ではないと言われている)を見ても明らかです。
今回は、外国人の犯罪と、米国入国について整理して考えてみたいとおもいます。
 
犯罪歴は事前申告が原則
まず、犯罪歴がある場合、米国入国に先立って、申告をすることが前置となっています。
ビザなしの渡航(ESTA)においても、ビザを申請する場合にも、そして永住権を申請する場合には、まず犯罪歴を明らかにしなければなりません。この犯罪歴は米国における犯罪に限られず、申請者の犯罪歴をすべて指します。
そして、犯罪歴を申告することを怠った場合、入国に際して、「詐害行為」とみなされて、入国禁止になってしまう可能性があります。ですので、まずは隠さず申告をするということが重要です。
米国の同時多発テロ事件以降、前科についての情報は米国内の行政機関においてかなり広範囲に共有されています。したがって、「申告しなくてもわからないだろう」という考えはやめたほうが良いと思います。
 
 
一律入国禁止か裁量によるビザ発給か
犯罪歴がある場合、米国入国で2つのパターンがあります。
一つは、犯罪歴があることで一律入国禁止となる場合、もう一つは、裁量によってビザがでる場合です。
まず一律入国禁止となる場合について簡単にまとめておきましょう。
注意していただきたいのは、入国禁止に関する法律はかなり多岐に渡り複雑ですので、ここでは代表的なものだけを取り上げておきます。
 
まず、麻薬および売春関連の罪については一律禁止とされています。
次に、道徳違背(Crime of Moral Turpitude)の前科がある場合には、入国禁止になります。
道徳違背の罪というのは、移民法独特の定義で言い回しです。
道徳違背というのは、一般的に「社会に根づいた道徳観を揺るがすような罪」と言われていますが、移民法上、一体どのような罪が道徳違背なのか明文で定められているわけではありません。審判例の積み重ねによって、どの罪が道徳違背となるか先例があるだけです。ですので、判断の指針はあっても、確固とした罪の列挙はありません。
今までの、先例を見ると、殺人、性的暴行、ドメスティック・バイオレンス、幼児・児童虐待、強盗、詐欺などの重大犯罪が道徳違背とされています。
その他にもかなり広範囲の罪が道徳違背とされていますので、疑義があれば専門家に、先例と照らし合わせてもらってください。
 
道徳違背の前科の例外
道徳違背の前科があれば、原則入国禁止となりますが、例外があります。
一つの例外は、前科が18歳未満のときに行われた犯罪の実行行為に基づく場合で、ビザ申請時から遡って5年以上経過している場合です。
もうひとつの例外は、法定刑が一年以下の罪(軽罪)の罪に問われ、実刑で6月を上回って服役していない場合です。
たとえば、窃盗は場合によっては、移民法上道徳違背とされる場合がありますが、カリフォルニア州の罪によっては、法定刑は最長で一年以下の禁錮となっていて、初犯では罰金のみで済む場合もあります。このような罪では形式上、移民法に照らすと道徳違背となってしまうかもしれませんが、例外的に入国禁止とはされていません。
 
この道徳違背に該当するかどうかの判断、例外規定が適用されるかどうかの判断は、かなり複雑なので、具体的な事例に関しては専門家に相談されることをお勧めします。
この他にも、道徳違背でなくても、2つ以上の有罪歴があり、合計で5年以上服役している場合(禁錮および懲役を含む)には原則入国禁止とされています。
 
 
免除申請とビザ取得
上記のように、移民法上明文で定められている入国禁止事由に該当する場合には、例外的な免除申請を別途行って認められなければ、米国に入国するのはかなり難しいということになります。
これらの一律入国禁止事由に該当しない犯罪歴であれば、米国政府の裁量により、ビザが発給されます。犯罪歴がある場合には、ESTAを利用して、ビザなしの渡航はできませんので、必ずビザの申請をして、許可を得なくてはなりません。
一般的な短期の渡航であれば、Bビザを取ることになろうと思います。
裁量による発給ですので、必ず許可を得ることができるとは限りませんが、軽微な罪である限り、ビザが自動的に拒否されるということはありません。
重要なのは、ビザを申請するときに、前科を申告するわけですが、前科に関する書類一式を申請書類に添付しなければならないことです。
したがって、米国内で以前有罪の判決を受けている場合には、有罪の言渡しを受けた裁判所に直接連絡をして、該当する書類をすべて揃えてから、ビザの申請をすることになります。手間がかかるのです。
 
今回は、一般的に犯罪歴がある場合の、米国への入国についてざっとまとめました。
犯罪歴があれば即入国禁止ということではなく、上記のような様々な要素を検討しなければなりません。
ですので、単純に米国入国を諦めるのではなく、専門家に相談をして、入国の方法がないか考えてみてください。
 
次回、また新しいトピックを取り上げたいと思います。