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クリエイターの著作物、売るべきか?(2)_1153





法律ノート 第1153回 弁護士 鈴木淳司
March 26, 2019
日本の弁護士会経由で、弁護士のインターンが来ていたので、週末ナパに行ってきました。今は、どこのワイナリーに行っても、結構な試飲料をとったり、ワインクラブ(定期購入)の入会を勧めたり、食事も出したりと、一日を使う大々的なビジネスとなっていました。昔は、試飲料も無料でしたし、かなり牧歌的だったので、ちょっと行って2,3軒楽しもうか、などという乗りで十分だったのですが、今では予約をして、お金を払い、出向くことになっています。時代が変わったのですね。

クリエイターの著作物、売るべきか?(2)_1153

さて前回から考えてきた「日本在住の者です。色々な文筆活動(クリエーター)を仕事にしています。最近、アメリカのゲームソフト会社から私が書いているゲーム系のストーリーを買いたい、すなわち著作権ごと買いたいという申し入れがありました。そこで、交渉をしているのですが、契約書に公証をしなければならない、と書かれています。このような場合、どのように対応するべきなのか教えてください。」という質問を今回続けて考えていきましょう。

著作権売買の手続き

前回は主に、著作権のライセンスと著作権を売買する場合の違いについて考えました。
今回は、著作権を売る場合の手続き的な側面を考えていきたいと思います。さて、著作権といっても、他の物や権利と同じ様に、売買をすることが可能ですが、目に見えない「権利」を売り買いするのですから、やはり売買契約書というものが必要になってきます。
もちろん法律上、口頭でも売買契約が成立しないわけではないのですが、実務上はやはり契約書がないといろいろな不都合が生じてきます。後日の紛争をなくすためにも、契約書は用意しておいたほうが良いといえる場面でしょう。
今回の質問者の方、契約書はすでに手元にあるようです。アメリカの企業が買い取るのでしょうから、契約書は英語なのでしょうか。アメリカの著作権局に権利の譲渡を登録することを考えると英語の方が言語として妥当だと思われます。
ただ、少なくとも契約書の内容は理解しておかなければなりませんので、何らかの形ですべての条項に目を通しておかれることをお勧めします。

アメリカ著作権局への登録

今回質問にある著作権の売買契約書について、私が目を通したわけではありませんが、一般的に著作権の譲渡についてアメリカ著作権局に登録することを手伝うこと、と書かれています。
著作権局に登録すると、公に誰が著作権者であるかを示せるメリットがあるのです。
ですので、登録についての協力義務が書かれてある場合が多く、これは他の契約書にはない文言です。ただ、著作権の売買では一般的であるということは覚えておいてください。

日本での公証

次に、今回の質問に、公証をしなければならない、という文言があるようですが、日本にいながらアメリカの公証を受けるためには、アメリカ大使館または領事館に出向いて、公証サービスを受けなければなりません。予約をとってわざわざ出向くので大変なことは事実です。
アメリカ国内であれば、公証サービスはどこにでもあります。
宅配業者などでもやってもらえますし、銀行や法律事務所でも可能です。
今回、日本に居住されている方ですから、なかなかアメリカの大使館・領事館に出向くことは難しいかもしれませんので、この公証部分については、交渉して消してもらうことも考えたほうがよいかもしれません。
著作権の売買契約は公証が要件になっていませんので、公証がなくても十分に成立します。公証を要求している意味は、署名している人が間違いなく著作権者ということを第三者に確認してもらうという意味合いがあるのです。

公証に代わる方法

もし、公証を外すことを渋られた場合は、二の矢として、公証の替わりに、証人を1人か2人用意して、「この人に間違いない」ことを確認してもらう方法でも良いと思います。
そのようにすれば、ある程度本人であることは担保できますし、手間もかからなくなります。契約書は本人同士の合意ですから、変更したいところは、躊躇しないで変更を申し出れば良いと思います。もちろん公証をしておくことは、会ったことがない相手方にとっては安心材料になります。
しかし、たとえば、買取金額を銀行口座に入金すれば、その人の名前も確認できるわけですし、他にも確認する方法はあるのですから、証人をたてるという方法で必要十分だと思います。
 
また、次回新しくいただいている質問を考えていきましょう。サンフランシスコは、良い天気になったと思ったらまた雨で、なんだか落ち着かない春ですが、花は水を吸ってとても綺麗です。雨が降っても、春を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。


 
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クリエイターの著作物、売るべきか?(1)_1152





法律ノート 第1152回 弁護士 鈴木淳司
March 16, 2019
日本でも大学の裏口入学問題が取り上げられていましたが、アメリカでも、いわゆるセレブと言われる人たちが自分の子供を裏口(捕まった被告人はサイドドアと呼んでいたので、裏ではなくて脇かもしれませんが)入学させたことが大々的に連邦刑事事件になっています。大統領の息子がここぞとばかりにハリウッドの人たちが静かにしているのはなぜだ、などと揶揄すると、現大統領の批判本を書いた作家に、「父親が多額の寄付をした大学院にいったのは誰か」と突っ込まれ、黙ってしまう、なんていう話がでています。なんだか、どこもかしこも親が子のために小細工しているなんて切ないですね。子供のためにまったくなっていないのですから。
 

クリエイターの著作物、売るべきか?(1)_1152

さて、今回から皆さんから新しくいただいている質問を考えていきましょう。いただいている質問をまとめると「日本在住の者です。色々な文筆活動(クリエーター)を仕事にしています。最近、アメリカのゲームソフト会社から私が書いているゲーム系のストーリーを買いたい、すなわち著作権ごと買いたいという申し入れがありました。そこで、交渉をしているのですが、契約書に公証をしなければならない、と書かれています。このような場合、どのように対応するべきなのか教えてください。」というものです。
何かを生み出すのは才能で、この方も学生時代から色々な創作活動に関わっていらっしゃるようで、すごいですね。音楽や文筆を仕事とすることは本当に大変な面もあるでしょうが、面白いのでしょうね。
 

著作物を「売る」

さて、今回、この方はかなり著作権を「売る」ということに前向きになられているようですが、売ることが果たして長期的に見てよいのか、まず考えてから本題に入りましょう。
著作権というのは、れっきとして権利ですから、アメリカでは売買の対象です。アメリカ著作権局も売買を認めていますし、その売買の記録をしてくれます。
売買できることは明らかなのですが、売ってしまうと、なんらの権利も手元に残らなくなります。買った会社が好きなようにできるということになるわけですね。
逆に、売った側がその著作物を再度利用しようとすれば、著作権に反する行為になり、訴訟で咎められることになりそうです。また、もう少し現実的なことをいえば、売ってしまうと売主は、ゲームなどに著作権者として表示されなくなりますから、いわゆるクレジットが目に触れることにならないのです。
著作権を持っている人や会社はこのクレジットが重要である、という見方をする場合もあります。このように、手を離れてしまうと、対価しか残りませんので、ある程度高額な値段もつく場合も考えられるのです。
 

ライセンシングー手元に著作権を残す

もうひとつの方法は、ライセンシングという方法が考えられます。こちらの方が一般的に使われる考え方です。質問者の方はすでにご存知だとは思いますが、ライセンシングにすれば、手元に著作権が残り、さらにライセンシング料ももらえます。そして、著作権の全部または一部を範囲や期限を決めて使用をしてもよいよ、ということを決めて契約として残しておくのです。
そして使用許可を得た当事者をライセンシーと言いますが、ライセンシーは、許可された範囲で自由に使用をすることができるということになります。ライセンスの場合には、著作権者の表示をする必要が出てくるので、クレジットも入るのが通常になりますので、権利も残るし、宣伝にもなる、という考え方もあるのです。
まあ、今回質問されている方に関しても、色々な事情があるのでしょう。法律的に良くても、ビジネス的にはイマイチという考え方もあるわけです。とにかく、今回の質問は「著作権を売る」ということが前提にあるようです。
 

著作権はオンライン登録できる

アメリカでは、著作権については、その一部でも全部でも譲渡できますが、まず今回質問されている方がどのように著作権を登録されているのかが気になります。
著作権は全世界統一という制度ではないため、アメリカで登録されていないのであれば、登録したうえで売るか、買い主が登録するか、ということも考えておかなければなりません。アメリカで登録をされているのであれば(比較的簡単ですし、オンラインでも申請は可能です)登録している内容を譲渡するということになるでしょう。
ここから次回考えていきたいと思います。
ベイエリアはやっと雨が落ち着いて日中は半袖で歩いている人も多く見かけます。春ですね。花を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。


 
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Golden Gate sanfran

カリフォルニア州弁護士コラム「和解」(2)_958

法律ノート 第958回 弁護士 鈴木淳司
Sep 20, 2015

 前回、質問をいったん休ませていただき、私が調停を仲立ちすることになったというところで終わりました。今回続けさせてください。

カリフォルニア州弁護士コラム「和解」(2)_958

 さて、私は、ビジネスの利益分配に関する紛争の調停人として活動することになりました。今回は、「できるだけ早く解決したい」ということで急遽ホテルの部屋で行うことにしました。

 当事者同士は、険悪になっているので、私がホテルの部屋を行ったり来たりしながら、各当事者から、話を聞き、両方の筋が通る部分、通らない部分を整理ながら、和解に向けて会話を続けました。リゾートホテルで話を聞いている私は、外にあるヤシの木を見ながら考えたりしていました。

 陽が沈み、結局外には一歩も出ることなく8時間以上、辛抱強く話を聞き続け、法律的な意見を言い、自分の経験から色々語りました。途中、夜になると「もういい、裁判で決着する」と両当事者は言うこともありました。

 私だってはやく一杯引っ掛けて、ベッドでゴロゴロしたいけど、お互い膝を割って話す機会はこれが、最初で最後かもしれないよ、と言いながら、議論を煮詰めていきました。お互いが「和解したい」という気持ちがあることを私は知っていましたし、お互いの主張の開きはあまり大きくなかったので、「粘ろう」と思ったのです。

和解は両当事者とも満足で終われることが多い

 両当事者(と言っても、複数人が両方にいましたが)に疲労の色が濃くなってきました。もう午前2時をまわっています。それでも私はホテルの部屋の往復を続け、ようやく話がまとまりました。

 かなり、両当事者は長い間ビジネスの関係を続けていたので、あれやこれや問題が出てきましたが、やっとまとまったのです。これが訴訟になっていたら、たぶん訴状だけでも、50ページにはなっていたであろうという内容でした。

 和解する良いところは、両当事者とも満足で終われることが多い点です。今回、両当事者とも納得し、無事に解決することができました。訴訟になれば、両者合わせれば少なくとも弁護士費用を数十万ドルは覚悟しなければならない争いは、たった1日で終わったのです。

和解契約書の代わりにスマホの動画に内容を残す

 遠山の金さんであれば、これにて一件落着で終わるのですが、現代の訴訟ではそうもいきません。通常、和解が成立すれば少なくともその場で和解契約書を作成しなければなりません。簡単な和解契約書を作成し、その後、正式な形を整えるというのがお約束であります。

 私も今まで何度も、弁護士と裁判官の立場で和解契約書をつくってきました。ところが、和解が成立した時間は、丑三つ時です。いくらタフな私でもヘロヘロな状態になっていました。

 しかし、何らかの形で和解の内容を残さなくてはなりません。疲れていても、名案がひらめいた私は自分のスマートフォンを取り出して、各当事者をビデオに撮りながら、和解の内容を復唱し、内容に疑義がないこと、内容に合意をすること、眠くても判断能力に問題がないことなどを確認しました。我ながらこの方法は「いける」と思ったものです。両当事者のビデオを私のスマホに収め、調停は終了しました。

 当事者と別れ、私は自分のホテルの部屋に戻りました。眠気が去ってしまった私は、深夜に当事者の映ったビデオを見ながら和解契約書を作成し、寝たのは朝6時でした。疲れていましたが、争いをやめた両当事者の晴れた顔(かなり疲れてはいましたが)を見るのは法律家としての醍醐味だな、と感じて眠りにつきました。

クライアントの幸せを願って活動するのが弁護士

 訴訟をしない弁護士というのは、私はよくわかりませんし、何が仕事として面白いのかよく理解できていません。では、法廷活動をやっているだけでも、良いのか、というとそうでは無い訳です。

 あくまでも弁護士というのは、法廷を通じてクライアントの主張を認めさせるというのが役割ですが、ひいてはクライアントの幸せを願って活動をすることを考えなくてはなりません。裁判官をやっているときのように法律に基づく強制力は持っていない調停人ですが、私の経験が各当事者の幸せに直結できたわけです。

 次回は皆さんからいただいている質問を考えていきたいとおもいます。秋を楽しみながら一週間またがんばっていきましょうね。


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カリフォルニア州弁護士コラム「和解」(1)_957

法律ノート 第957回 弁護士 鈴木淳司
Sep 20, 2015

 今回と次回は、いったん皆さんからいただいている質問を考えることを中断して、最近思ったことを書かせてください。日本ではシルバーウィークという私は経験したことのないバケーション期間だそうですが、残念ながら関係のない私はせっせと原稿を書いています。もう秋ですね。

カリフォルニア州弁護士コラム「和解」(1)_957

 弁護士のイメージというのは、訴訟で闘うという職業であると皆さんは思っていらっしゃるのではないでしょうか。法廷で弁論をする姿は良く映画やテレビにも映るので、そればっかりやっていると思われるかもしれません。

 しかし現実は、法廷で争うことをしない(できない)弁護士もたくさんいますし、ビジネスを専門にやっています、と公言する弁護士も多く存在します。とはいえ、やはり弁護士の仕事の根底は訴訟で勝つか負けるかを争うことにある、と長い経験を積んでも私は心の何処かで思っています。

 先日も、私の所属する事務所で担当する案件で高等裁判所の審理において逆転勝訴したときは、やはり醍醐味を感じたものです。訴訟で法律論を駆使して競り合うという生の体験は、たとえ会社の設立をしたり、契約書のレビューをしたりと、法廷には関係ない仕事においても、かなり活かされると思います。弁護士としての価値ある経験はやはり法廷を通して積み重ねられていくのだと思います。

アメリカでは陪審裁判までいく訴訟はごくわずか

 一方で、法廷での経験を積めば積むほど、法廷での闘いに虚しさを感じることがあります。争いの種類にもよりますが、わざわざ高い弁護士費用を使って闘い、結局得るものが少ないという場合も少なからずあるわけです。

 アメリカでは訴訟になったとしても、陪審裁判までいく訴訟というのはごくわずかであって、ほとんどの事件は裁判上の和解に至ります。私は兼任の裁判官をしていますが、私が陪審裁判前の証拠整理を担当し、同時に和解を促す仕事をすると、かなりの確率で和解します。

 そうすると、長い間弁護士費用を費やして闘い、結局和解するのであれば、最初から話し合いをすれば良いのではないか、と思ってしまう事件もかなりの数あります。

クライアントの利益を最優先することが弁護士の義務

 法律事務所の仕事は、言い方は悪いですが、訴訟を増やすことでもあります。わざわざ訴訟にして、闘って勝つことを目指します。私もかなりの数の訴訟を見てきていますが、そもそも訴訟にしないでもなんとか話し合いをすれば済む話ではないか、と思える訴訟を多く目にしてきました。

 私は安易に訴訟の提起はせず、最後の手段にするべきだと思っています。たとえ私の所属する事務所が得られるであろう弁護士費用がなくなろうが、関係ありません。弁護士はクライアントの利益を最優先することが義務であるからです。

 もちろん、訴訟を避けられない場合もあります。刑事事件が最たるものですが、離婚事件などもあるでしょう。また、特許、著作権、不動産など権利を侵害されているような場合にも訴訟になりやすいと思っています。しかし、このような訴訟でも必ず「落とし所」というものが存在するのです。

ビジネスの利益分配を巡る争いの相談を受ける

 最近ある相談を受けました。あるビジネスの利益分配を巡って争いが生じたのです。まず、一方の当事者の話を聞きましたが、結局お金の話でした。弁護士が争う訴訟というのは、権利の帰属が問題になることも多いのですが、結局はお金の問題ということが多いわけです。

 一応、話を聞いて相手方に要求をしてみたところ、相手方も私のことを良く知っていて、私が信頼できると思っているという文面をもらいました。そこで、私は両当事者に連絡をして、中立の立場で調停をしてみようということを提案しました。

 本来であれば、一方からすでに話を聞いているのですから、相手方は弁護士を使って争うことができます。しかし、私の勘で「この案件は訴訟にもなっていない段階で解決してしまうのが両当事者のためだろう」と思ったので、あえて調停の案を提示してみました。

 結局、訴訟になって数年争っても、和解調停をすることになるのは目に見えています。それよりは、はやい時点でまとめてしまったほうが良い、と判断したのです。この調停の提案に対して両当事者は肯定的で、ぜひ早い時点でやりたいということになりました。

 私の勘は当たっていて、両当事者とも一刻もはやく紛争(になりかけている)を解決したいと望んでいたのです。両当事者に、今までは一方の話を聞いていたことを明示して、中立の立場で調停をするということで、案件が進むことになりました。

 次回続けていきたいと思います。


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