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輸入時の不良品続き。日本で裁判できないか(2)_1211

法律ノート 第1211回 弁護士 鈴木淳司
May 4, 2020
 

 コロナ問題はあるのですが、事件は待ってくれません。この数日を利用して拘置所に顔を出してきました。街はどこにいってもガラガラ。もちろん飲食店も開いていません。久しぶりにクライアントと面談がかなったのですが、弁護士であってもコロナのせいで、ビデオストリーミングで面談ということになってしまいました。せっかく拘置所に行っているのに、ビデオはないかな、と思ったのですが、拘置所側も色々な考えがあるのでしょうね。しかし、近くに受付の人も座っているし、ビデオも録画されているんじゃないか、と結局事件のことはあまり深く話せませんでした。現状で5月末まで自宅待機命令が延長されましたが、はやく現状が沈静化することを祈っております。みなさんは5月になっていかがお過ごしですか。

輸入時の不良品続き。日本で裁判できないか(2)_1211

 さて、前回から考え始めた質問を今回も考えていきましょう。「日本在住の者です。アメリカにいる中間業者に頼み、アメリカから物を輸入しているのですが、最近になり不良品が多いため、契約を打ち切ろうと思っていました。ところが、アメリカの業者から、裁判はカリフォルニアに来ないとできないし、法律もカリフォルニアの法律が適用されるといったニュアンスのメールが来ました。私の経営する会社は、中小企業でアメリカに支店などもありません。また、アメリカには遊びには行くのですが、仕事でアメリカに行くことはありません。こういった場合には、日本で裁判は起こせないものなのでしょうか」というものでした。

まずは契約書を確認

 前回、まずはこういったケースの場合、契約書の記載を確認しなければならないことを考えました。

 契約書は、最近は紙だけではなく、オンラインで「同意」している場合もあります。
 ですので、紙がなくても、契約は成立している(少なくともカリフォルニア州法では)可能性も高いので注意が必要です。

 契約書で「どこの法律で」「どの機関の裁定」を受けるのかアメリカでは契約書に記載しておくのが普通です。日本の契約書でも、最近では、似たりよったりの条項が一般条項に記載されていますね。

一般条項(General Provisions)を探す

 今回の質問にお答えするについても、まずは契約書の条項を確認しなければなりません。

 アメリカの企業と取引をされているということで、一般条項(General Provisions)をチェックする必要があるのですね。

 今回の質問には、契約書についての言及がなかったのですが、一般的な例を使って考えます。
 通常、たとえば私が扱う契約書では、「この契約は米国カリフォルニア州法に基づいて解釈される」、「紛争が発生したときには、○○郡を管轄するカリフォルニア州裁判所を第一審裁判所とする」などと記載されています。

 裁判を避けることを契約書に盛り込むことは可能で、「仲裁判断は、カリフォルニア州の○○郡で行われる」といった記載がされることも少なくありません。

 このような契約条項を見つけた場合には、アメリカの特定の州、そして、特定の郡で紛争を解決することになりますし、その紛争解決には、規定されている法律が適用されることになります。

 ですので、基本的に相手方の雛形を使われている場合には、適用される法律は、アメリカの州法、そして裁判所もアメリカになりそうです。

 しかし、海千山千の弁護士であれば、契約書に記載があっても何らかの手立てを思いつく可能性があります。一応の基準として考えておけば良いと思いますが、私は絶対とは思っていません。

契約書に紛争解決場所の指定がない場合

 契約書に規定がない場合には、かなりややこしいことになります。
 ただ、詳しい法律的なことには突っ込まないで考えると、問題が発生している場所、悪いことをしている人がいる場所、特に契約の内容で重要と思われる場所などが紛争の解決にふさわしい地ということになります。法律用語では、密接関連などという言い方をしますが、ピンときませんね。

 また、法律はどこの法律が適用されるか、ということになると難しい問題を生じます。
 ただ、今回の質問のように、国際取引の話であれば、基本的にはどこの土地で裁かれてもあまり結果は変わらないかもしれません。

 ただ、判決が出た後にお金を取る段階で色々苦労があるかもしれません。そして、契約ではなく、いわゆる不法行為(Torts)という事故など、誰かの過失があるケースでは、事故の発生地で裁判ができるというのが一般的です。

 ここまでが、法律的に考えて教科書的な「建前」の考え方であります。あまり実務のノウハウを晒したくないですが、次回実務家がどのように対応するのか、もう少し考えていきたいと思います。

 また、一週間感染に気をつけながら、身体と心を保ちがんばっていきましょうね。


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アメリカの会社との取引。契約違反の裁判は日本で?

法律ノート 第1212回 弁護士 鈴木淳司
May 11, 2020

 長年知っている親しい40代男性が末期がんであるというニュースが入ってきました。コロナで医療機関にもかなり負担が生じているようですが、このような時期に入院をしたり、治療をするのは誰にとっても容易でないことが想像できます。もうお見舞いにも行けない程度弱っているということも聞き、ショックを受けました。ご家族の気持ちを考えると、このようなパンデミックの異常事態だけでも辛いのに、そのなかでの更に辛い出来事です。心が痛いです。

アメリカの会社との取引。契約違反の裁判は日本で?

 「日本在住の者です。アメリカにいる中間業者に頼み、アメリカから物を輸入しているのですが、最近になり不良品が多いため、契約を打ち切ろうと思っていました。ところが、アメリカの業者から、裁判はカリフォルニアに来ないとできないし、法律もカリフォルニアの法律が適用されるといったニュアンスのメールが来ました。私の経営する会社は、中小企業でアメリカに支店などもありません。また、アメリカには遊びには行くのですが、仕事でアメリカに行くことはありません。こういった場合には、日本で裁判は起こせないものなのでしょうか」というものでした。

まずは契約書に沿って

 簡単な前回の復習をすると、契約書に規定があればその契約書に沿って適用される法律と、裁判をする場所が決まります。そして、契約書に規定がないようなケースでは、お互いの関係に密接に関連する場所が裁判をする場所になり、その場所を管轄する法律が適用されることになりそうですが、ケースバイケースです。

相手のビジネスを観察

 今回のケースのような事例において考えにくいですが、かりに契約書がなかったり、裁判管轄・準拠法の規定がなかった場合には、基本的に取引関係においては、相手方の所在地を基本に考えるのが適しています。

 しかし、そうすると、今回の相談では、わざわざ日本からアメリカに行って提訴しなくてはならなくなります。そこで、なんとか日本で提訴できないか、ということになります。

 まず可能性を探るために、相手のビジネスを知ることが重要です。
 かりに、日本と頻繁にビジネスをしているとか、日本に営業所や営業の人を置いているなど、日本との繋がりがどれだけあるのかが、一つ重要なファクターになります。

中間業者の存在は?

 そして、今回質問にある「中間業者」の行動も確認する必要があります。

 かりに、この中間業者が頻繁に日本に滞在しているなどという情報があると、中間業者に対しての訴訟も日本で考えられるかもしれません。

「送達」が可能か

 裁判をするには、単に訴状を裁判所に提出するだけでは足りません。訴状を訴える相手方に対して「送達」しなければなりません。送達というのは、相手方にどのような訴訟を提起して、何を求めているのか書いてある書類です。この送達というのはかなり訴訟において重要で、日本でもアメリカでも厳格なルールが定められています。訴訟をするのであれば必ず必要な行為です。

 この送達がなされてはじめて訴訟としては実質的なゴングが鳴るという感じです。

 ところが送達については相手方に直接手渡しするのが原則ですから、外国にいる人や会社に対して訴訟をする場合には、かなり翻訳などの手間がかかりますし、政府間で送達の取り決めをしている場合も多くありますので、色々な機関を通さなければならず時間もかかります。

 ですので、相手方の行動をよく確認して、日本に頻繁に滞在している場合には送達が日本国内で可能になることもあります。

管轄違いの申立て

 間違ってはいけないのが、送達があれば裁判は出来ますが、相手方は裁判管轄が不適当であるということで争うことは当然できます。
 この争いでそれなりに時間がかかることもありますので覚悟はしておかなければなりません。うまくいけば裁判管轄が認められることになりますが、負ければアメリカで裁判をしなくてはならなくなりそうです。

手を組む会社はないか

 とにかく、相手方がどの程度日本とビジネスなどのつながりがあるのかを先行して確認しておくことが重要です。また、他に似たような不良品を多く見つけて不満を持っている業者などと情報を共有することも重要です。かりに、一社だけではなく数社一緒になるとそれなりに力にもなると思います。

 今回いただいている質問への一般的な考えは上記の通りですが、何か他にも類似の質問があれば、ぜひ法律ノートに質問をされてください。

 まだまだシャットダウンは続いていますが、心身ともに健康に留意してまた一週間がんばっていきましょうね。


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輸入時の不良品続き。日本で裁判できないか(1)_1210

法律ノート 第1210回 弁護士 鈴木淳司
April 28, 2020

 アメリカではウイルスによる死者が、わかっているだけでもすでに5万人を超えるという、かなり深刻な事態になっていますが、実際は検査も受けずに亡くなっている方もかなりいると思われます。ところが、すでに自宅待機の解除を求める人もデモを行ったり、一部の公共施設を開放したりする州もでてきたりしています。二次的な感染の波が怖いです。解除のデモで感染したらどうするのでしょうか。まだまだトンネルの出口が見えないようにも思えるのですが、人々が「終わり」を希求する気持ちも理解できる状況ですよね。皆さんは、どのようにお過ごしでしょうか。

輸入時の不良品続き。日本で裁判できないか(1)_1210

 さて、今回は皆さんからいただいている新たな質問について考えていきたいと思います。

 いただいている質問をまとめると「日本在住の者です。アメリカにいる中間業者に頼み、アメリカから物を輸入しているのですが、最近になり不良品が多いため、契約を打ち切ろうと思っていました。ところが、アメリカの業者から、裁判はカリフォルニアに来ないとできないし、法律もカリフォルニアの法律が適用されるといったニュアンスのメールが来ました。私の経営する会社は、中小企業でアメリカに支店などもありません。また、アメリカには遊びには行くのですが、仕事でアメリカに行くことはありません。こういった場合には、日本で裁判は起こせないものなのでしょうか」というものです。

 今回の質問は法律用語でいうと、「裁判管轄」とか、「準拠法」の問題と言いますが、難しいですよね。法律の勉強をしていないとピンとこないと思います。法律ノートではできるだけ日常使う用語に引きつけて考えていきたいとおもいます。難しかったら指摘してください。角度を変えて考えていければ良いですよね。

まずは契約書を確認

 さて、今回質問されている方ですが、日本でネット販売をするために、アメリカから物を買っているということですので、この日本の会社とアメリカの業者の間には、規模の大小の違いはあれ、売買契約が成り立っていそうです。
そして、その売買契約の内容として、受け取る物に不満があるということなのでしょう。

 この契約がどのように結ばれているのかわかりませんが、通常は契約書を締結します。
 最近では少なくともアメリカでは、ウェブ上で紙を使わずに契約を成立させることができますから、内容をあまり読まずに実際は契約書によって契約が成立している可能性は充分にあります。

 ですので、今回質問されている方も、まず確認しなければならないのは、契約書があるか、ということです。弁護士に相談しても、まず聞かれるのが「契約書はあるか」ということなので、この点は最重要事項として考えてください。以下ですが、契約書がある場合、それから契約書がない場合に分けて考えておきましょう。

紛争解決の方法の条項は?

 まず、契約書がある場合です。
 今回質問されているようなケースでは継続的に売買が繰り返されているので、たぶん契約書は存在すると思われます。

 そして、契約書には通常、紛争になった場合にはどのように解決するのか書かれているものが多いです。

 紛争の解決はいわゆる一般条項(General Provisions)の一部として存在するのが普通です。契約書の最後の方に規定されている一般的な取り決めの部分です。

 ここで、今回の質問に関連して注意してみなければいけない条項がいくつかあります。

 1つ目は、どこの裁判所で紛争を解決するのかという、場所の問題
 2つ目は、どのルールに従って紛争を解決するのか、という紛争解決のために使用する法律
 3つ目は、どのような方法で紛争を解決するのか、という手段の問題があります。

 この3つについて契約書を確認すると、今回の質問に対する答えが明らかになってきます。

どこで裁判をするかー管轄

 詳しく考えていきましょう。
 まず、どこで紛争を解決するか、というのは裁判管轄について合意するなどと言われますが、通常紛争があった場合には、どこどこの裁判所を第一審の管轄とする、とか、サンフランシスコ郡内の範囲において紛争を解決する、などと規定されています。

 すなわち、喧嘩をするなら場所を指定しておこうということです。

 契約書に定められていれば、通常その場所で紛争を解決するということになります。

 しかし、日本でもアメリカでも、たとえ場所が決まっていても、あまりにも不合理な場合には、裁判で否定される場合もあります。私も経験上、契約で決められた紛争の解決場所が「公序良俗に反して」無効、といった判決をみたことがあります。

 このような例外的な場合がありますが、基本的には契約書に規定されている場所において喧嘩をする、ということになります。

次回続けていきましょう。

 なかなか、外で運動をするのも難しいですが、身体を動かすことを怠らずまた一週間がんばっていきましょうね。


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