法律ノート 第1307回 弁護士 鈴木淳司
March 27, 2022
先週、ワシントンDCにいる連邦検事と話をしていた折に、DCの桜がもう咲くのではないかという話でしばし盛り上がりました。
私自身は仕事でしか行ったことがないのですが、ぜひ一度ワシントンDCで、日本とアメリカの架け橋である桜が満開の川沿いを歩いてみたいものです。
東京でも桜の季節ですね。
今年は花見などはどうなっているのでしょうか。
アメリカ_従業員と会社間の契約_ストック・オプションについて_1307
さて、今回から皆さんからいただいている質問を新たに考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると、「ストックオプション制度について教えてください。日本から留学してアメリカの大学を卒業しました。まだHビザの申請前に、インターン(OPT)として働いた会社で、給与は低かったのですが、就職ボーナスということで、少数のオプションをもらいました。また一年働くことにより、さらに少数のストック・オプションがもらえるという契約になっていたのですが、Hビザの申請がうまくいかず、この会社をやめて、日本の同種の会社に就職することになりました。9ヶ月ほど働いたので、一年後にはもらえるはずだったストック・オプションについても、9ヶ月分はもらえないのか、ということが気になりました。日割り計算などで請求することはできないものでしょうか」という質問です。
ストック・オプション契約とは
給与の他にストック・オプションを与えて、ある期間在籍することで、株を買える権利を従業員に与えるという制度です。
何年在籍したら、何株分のオプションがもらえるかということを契約書にしておく仕組みです。
重要なのは、単に株をもらえるということではなく、株を買うことができる権利を一定期間与える、というものです。
ストック・オプション契約を締結しただけでは株をもらうことができません。
今回質問されている方も、ストック・オプションがもらえたからといって、そのままにしておくと株がもらえるわけではないので注意が必要です。
権利はいつ発生し、行使できるかに注目
ストック・オプションというのは、従業員と会社の間の契約ですから、内容についても会社が比較的自由に設定できます。
画一的な内容というわけではありません。
企業毎に違う内容になっていると考えた方が良いと思います。
ただ、基本的に含まれている条項はあります。
まず、何株をいくらで買える権利が与えられるか決められています。
そして、何年会社に在籍すると、権利が発生するのか決められています。
そして、権利を行使するのは、権利が発生してからどの程度の期間に株の対価となる金銭を振り込めば良いのかが決められています。
単純に何年働いたら株を無償でもらえるということではなく、ある株価が当初から設定されており、何年か一生懸命働くと株価が上がるかも、そうしたら、安いときの値段で買えるよ、ということなのです。
急成長する会社では価値がありますが、成長が見込まれない会社では株の購入権利を行使するときに、元々設定されている株価を割り込んでいる可能性もあるわけです。
このようにストック・オプションは、行使することに価値があるのであって、ただ持っていても意味はあまりありません。
オプション行使にはまず支払い
また、ストック・オプションに基づいて株をもらえる日、というのは通常対価を会社が確認した日となります。
したがって、オプションを行使するためには、まず現金を会社に支払う必要があるということになります。
この他にも、ストック・オプションを定める契約にはいろいろな条項が出てきます。
最近私が実際に見ている契約書でも、雇用が終了した場合には、終了日より90日間以内に行使をしなければ、その権利は失効するという規定があります。
被用者都合で終了した場合には、権利そのものが失効すると定められている場合もあると思います。
このように、「ストック・オプション」をもらっただけでは株主になれるわけではなく、ちゃんと対価を払い込むことが必要になってくるわけです。
その対価に応じて株式を受け取ることができるということになるのです。
今回質問されている方においても、「ストック・オプション」をなんらかの確定的な権利だと思われている節がありますので、まずは、契約にしたがって金銭対価を払ったときにはじめて株式を受領できる権利が生じるということを理解しておきましょう。
ここから次回考えていきたいと思います。
春の花がどこでも満開ですね。楽しい気分になります。
一方で花粉もすごいことになっています。
私は、まだ今年は影響ありませんが、敏感な方は花粉対策も怠らず、春を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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