法律ノート 第1265回 弁護士 鈴木淳司
June 3, 2021
今週末は、私がメンバーとして所属するゴルフクラブで、全米女子オープンが開催されます。
世界中からトップの女子プロが集合して競う大会がサンフランシスコで行われるというのは、とても嬉しいです。
私もボランティアとして裏方で参加するのですが、有名選手を間近で見られるので今から楽しみにしています。
アメリカで中古車購入(2)_1265
さて前回から考えてきた「SNSを使った個人売買で車を買いました。もちろん、インターネットのやり取りだけではなく、直接会い、やり取りをして、必要な書類をもらいました。古い車でしたが状態は良いという掲示でした。その掲示された内容は保管しています。無事に車も受け取り、必要な売買の書類も手に入れたのですが、DMV(カリフォルニア自動車局:日本の陸運局と業務内容は類似している)に書類を提出する段階になり、名義にSALVAGEと書いてあり、廃車となった車を売られたことに気づいたのですが、そのような内容は事前にまったく聞いていませんでした。詐欺などという形で訴えられないものでしょうか。」という質問を今回も続けて考えていきましょう。
前回は、基本的なコンセプトを考えました。
サルベージは廃車車両、ピンクスリップはタイトル証書
タイトルの書類にSALVAGEと書かれている場合には、いったん廃車になっている車両だと思った方が良いということを考えました。
タイトルに関する証書は、通常の会話英語ではピンクスリップと呼ばれることも考えました。
売買の際には必ずピンクスリップに「Salvage」と書かれていないか確認するのが良いということも考えました。
また、ピンクスリップがなくとも車両の売買は行なえますが、そういった売買は気をつけた方が良いと思います。
できれば、売り主にピンクスリップを再取得してもらってから、売買をしたほうが良いと思います。
以下、前回考えた用語はそのまま使用していきます。
中古車販売=ピンクスリップの受け渡し
さて、ピンクスリップに関しては、中古車の売買はピンクスリップの受け渡しが実質的な要件となります。
そして、このピンクスリップは各州において違いはあるとは思いますが、カリフォルニア州では売主、買主双方の署名がないとDMVは書類を受け付けてくれませんし、名義変更も完了しません。
お金を支払うと同時に必ずピンクスリップを受け取るだけではなく、表面にSALVAGEの記載がないか確認しなければなりません。
ピンクスリップの受け渡し以外にも契約書を締結する場合もありますが、個人売買ではあまり一般的ではなく、どちらかというと、お金を受け取った受領証程度だけの話になります。
契約書があった場合には、AS IS という車の状態を超えてなんらかの責任が生じる可能性が売主にあります。
したがって、売主は積極的に契約書を作らずに、通常は、ピンクスリップの受け渡しおよび、お金を受け取った受領証(Receipt)だけで、売買を完了したいと思っています。
もちろん買主が契約書を用意していくこともできるでしょうが、売主としては契約書など、ややこしいことが個人売買で出てくると、取引に否定的になってしまう人も少なくありません。
ですので、お金を渡す際に買主としてできることは、ピンクスリップにある情報を念入りにチェックするということになります。
実はサルベージ車、訴えることは可能?
では、今回の質問にあるようなケースは、訴えを提起することができるでしょうか。
まずは、民事訴訟で訴えを起こす場合には「損害」がなくてはならないのが一般的です。
たとえば、訴える額としては、SALVAGEであった車の金額、とSALVAGEでなかった一般的な中古車の金額との差額ということになるとは思います。
この差額について、契約に違反した、詐欺にあったという内容で訴訟をすることになりますが、金額が2万5千ドル以下であると、少額裁判制度をカリフォルニア州では使って争うことになるでしょう。
この場合、場所的には相手方が居住した場所、または、売買が行われた場所を管轄する裁判所に訴訟を提起しなければなりません。
これを法律用語では裁判管轄と言います。
少額裁判制度を使っても、裁判を提起するためには、いくらかお金がかかります。
裁判を提起し、その提起した書類を相手方にわたす(送達)必要があります。
数百ドルはかかるケースもあるでしょう。
裁判を起こすとして、どのような内容の裁判を提起するのかは悩ましいところではあります。
契約に違反したのか、詐欺をしたのか、などが考えられますね。
ここから次回考えていきたいと思います。
ベイエリアでは真夏のような天気の日がでてきています。もう夏に近いですね。
先週は梅酒をつけました。水不足なので、心配でしたが、果実もしっかり成長しています。
また次回続けていきたいと思います。
暑さに注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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