法律ノート 第1217回 弁護士 鈴木淳司
June 15, 2020
6月半ばからサンフランシスコの事務所を再オープンしようと思っていたのですが、まだコロナの影響でダメなのだそうです。もう、いい加減事務所も稼働したいところです。私の妹は、日本の大病院のコロナ対策の責任者をやっていて「第二波に備えている」と言っていましたが、アメリカではそもそも第一波がまだまだ収まっている気配がありません。なんだか、自治体も人々もアメリカでは緩んでいるところが出てきていますが、心配になってしまいます。みなさんのお住いの地域の状況はいかがでしょうか。
弁護士を目指す学生たちへ(2)_1217
さて前回から考えてきた「現在、日本の大学で法学部に在籍しています。将来は弁護士になりたいと思っています。ただ、日本だけで弁護士をするよりもできれば、世界でも仕事ができるようになりたいという夢があります。英語も一生懸命勉強しています。しかし、法曹になるための試験は国ごとに違いますし、このまま日本で大学院に行くべきなのか悩んでいます。何かアドバイスをください。」という質問を続けて考えていきましょう。
さて、国際的な法律の仕事をしたいということですが、まず、日本では「国際弁護士」とか、アメリカでも「インターナショナルローヤー」とかいう表現がありますが、まずこのような肩書をつけている人がいたら疑ってください。今回質問されている方も感じるのかもしれませんが、一般的に「カッコよい」響きがします。
しかし、そのような公的な肩書もないですし、いったい何が「国際的な仕事」なのか定義がありませんね。単に英語の契約書をいじれれば国際法務と言っている人もいるようです。弁護士として活動するためには、どこかの団体に登録してはじめて弁護士として認められます。アメリカであれば各州の弁護士会ですし、日本であれば各単位弁護士会であります。日本とアメリカに同時に登録することもできますが、登録をすれば更新や安全講習を含め運転免許証と同様に色々な義務が生じます。
結局、自分がどこでメインに活動するのかということで免許を更新するというのが一般的ではあります。私の事務所にも若い日本の弁護士がアメリカに多額の費用を使って留学し、アメリカの資格を取ろうとがんばっている子、実際に合格する子などいますが、日本に戻ったら実際にそのアメリカの肩書を使えるかというとかなり限られた使い勝手になると思います。
このような実際を知ってもらったうえで、どのようなことをこれから学生さんは学べばよいのでしょうか。
まずは、一つ言語を文化や歴史、言葉一つ一つの意味も含めてマスターしてください。日本であれば日本語で良いと思います。一つの言語で秀でないと、2つ目の言語を習っても中途半端になります。必ず誰に対して見せても恥ずかしくない語学力を一つの言語でつけてください。
読解力だけでなく解析や推測、アウトプットなど、法律学というのは語学で吸収し、表現する能力が最重要です。そして、言語というのは一朝一夕にできたものではありません。歴史的に言葉にどのような意味があり、文化によってどのように変化してきたか敏感に理解する必要があります。
次に、法律学というのは、哲学的な話は置いておきますが、実務的にはいわば、世の中の事象の「範囲」を知る学問です。
良いこと悪いことでも、どこからどこまでだったら許される、隣人との問題もどこまでだったら良いのか悪いのか、契約を結んだらどこまでの範囲でこちらの意思を通せるのか、といった、人間関係のボーダーラインを設定する学問です。ですので、このラインについては、文化や時代などでも変わってきますね。世界統一ではないわけです。
ということは、この「範囲」を知るためには、本だけではなく、人の日常の考えや、国民性、歴史や、培われてきた文化を勉強する必要がありますね。アメリカを取ってみると、今人種差別などがクローズアップされていますが、多様性の歴史や文化は日本にいると体感できないかもしれません。おざなりな言い方ですが、若いうちは卓上の勉強だけではなく、色々な人に接し、色々な文化や歴史を学び、世の中に存在する多種多様な価値観を素直に咀嚼できる脳を作るのが法律実務家として大事に思います。
法律実務家の仕事も多種多様なニーズが生まれてきていますので、現在弁護士をしている人たちの考え方にこだわらず、多種多様な価値観を勉強しながら自分の将来を思い描いてみてください。時間だけは誰にも買えないのですから、若い間には特権をフル活用されると良いですね。
次回からまた新しい質問を考えていきましょう。まだコロナには油断できませんが、一週間健康に気をつけてまたがんばっていきましょうね。
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