成功について_1220

法律ノート 第1220回 弁護士 鈴木淳司
July 6, 2020

成功について

 みなさんの独立記念日はいかがだったでしょうか。アメリカにいてここまで静寂な独立記念日を過ごしたのははじめてかもしれません。残念ながら、コロナの影響はどんどん増している状況です。気候が暖かくなるとウイルスの活動が収まるという話はいったいどうなったのやら。私も事務所を再開するぞ、と気合をいれていたのですが、サンフランシスコ市も肩透かしにあったようなもので、じっとしています。色々いただいている質問にお答えする必要があるのですが、前回に引き続きこのところのアメリカの情勢を踏まえて、私が考えていることを書かせていただきたいと思います。質問をいただいている方たちには申し訳ありませんが、待っていてください。

 コロナの影響もあるのでしょうが、現在アメリカでは人種差別を撤廃せよ、という運動がかなり広がっています。差別というのは、人の心に存在するものです。人の心は教育なり環境で作られてくると思います。現大統領の発言をみるとよくわかるのですが、自分の心のなかに落ち着きどころがない人は、自己とは違う考えに偏狭であり、また、自分と他人の立ち位置の上下を気にします。アメリカでは色々な人種がいるのでこのような運動が起きるという論調のメディアも外国には多いですが、果たしてそうなのでしょうか。

 私は昔から三木清の人生論ノートを読みながら、自分の人生を考えることがあります。現代社会に合っていないところはありますが、色々なヒントをもらえる本です。その本のなかに「近代の成功主義者は型として明瞭であるが個性ではない」という一節があります。「成功のモラルはオプティミズムに支えられている」ともあります。なるほど、現大統領のコロナに対する発言などはオプティミズムそのままですが、以前にビジネスで成功していた人だから政治的にも凄いという話にはならないように思います。

 弁護士を長年やっていてよかったな、と思うのは色々な価値観に出会えてきたことです。会社や個人の価値観というのは、実に様々です。他人様の金銭的な話を超えて様々な話を聞けるというのは、なかなか一般的なことではないわけです。いくらお金を持っていても不幸な人もいますし、お金がなくてもハッピーな人がいます。

 「私の資産価値は○○ドルである」という人がいますが、それはすごい額なのかもしれませんが、実際にその人が幸せなのか、ということとは無関係であるということも弁護士をやっていて習いました。成功している、というのはいつも他人と比較しているのですね。そうすると実際は気が休まらないでしょう。自分の価値を社会においていつも、「あの人よりは上か下か」とかいう感じになってしまうのでしょう。そういう成功に執着している人たちは、「おれは幸せなんだ」ということを言われますが、細かいところでは他人と比べたりするものなのです。

 アメリカは、成功主義に浸された土壌が出来ているので、どのようなことでも、他人様と比べどうこう、ということが蔓延していると思います。人種問題に敏感になるのもそういった歪が原因になっていると思うのです。成功に対して、幸福というのは人それぞれ自分の心に宿り絶対的なものだと思います。人と比べようがなく、自分が満ち足りている感覚を持っていれば幸福なわけです。人は幸福であれば文句は無いでしょう。差別ももちろん問題ですが、どのような人でも、一人ひとり幸福を感じられる社会をつくるという方向にアメリカはなってほしいな、と思うのです。アメリカでも日本でも、憲法にサクセス(Success)という言葉はないですよね。一方で、幸福(Happiness)という言葉は、日本の憲法13条にも規定されています。人間として追求するべきは幸福であることが、法律にも書かれているわけですね。金銭的量的な成功は幸福と同意義ではないのでしょう。

 幸福というのは、人が一人ひとり自分で感じるものですね。絶対的なものです。自分が幸福を感じていれば、人も幸福にできると思うのです。アメリカでも歪な成功主義にとらわれず一人ひとりが幸福であり、どっしりとした基礎があれば差別問題などはなくなっていくとおもうのですが。他人と比べてうんぬんという話は疲れる話です。

 アメリカ現大統領も、「俺がやっている政策でこれだけ数量的な成果を得たんだ」という成功主義者的な根のない考え方が染み付いているのでしょうが、真に国民の幸福とはなんぞや、ということを考えないと、この国の様々な分断を統一していけないでしょうね。そういえば、アメリカにいて、最近他人から「アーユーハッピー」という問いかけを聞くことが少なくなった気がします。私は常時ハッピーですけどね。人間なんて小さなものです。まず自分を幸福にできない人が他人になにか言うことってできないように思うのですが。成功の押し売りをしても、コロナは収束しませんし、人種差別問題も解消の方向に向かわないように思います。

 次回は、皆さんから頂いている質問を考えていきますね。もう一年が折り返し地点ですね。気を引き締めてまた一週間がんばっていきましょう。

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作成者: jinkencom

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