法律ノート 第1215回 弁護士 鈴木淳司
刑事事件を忘れないわけ_1215
June 1, 2020
今回は、皆さんからの質問にお答えするのを一回休ませていただき、アメリカで起こっているジョージフロイド殺人事件(あえて、殺人と言います。すでに逮捕されていますし。)について、私の考えを述べさせてください。
スマートフォンが普及して良かったな、と思うことはこのような事件が動画で残り、うやむやにされない世の中になったことです。
交通事故でも、様々なDV事件などでも最近では相談に乗ると、一瞬のことが記録されていたりして、事件解決について客観的評価が正確にできるようになってきたのではないでしょうか。
みなさんも今回このような自宅待機命令(日本では解除されたようですが)のなかで、色々フラストレーションも溜まっているとは思います。
しかし、そのフラストレーションを他人にぶつけるのはまったく筋違いであって、それは自分の弱さですよね。私が、ジョージフロイド事件を通じて感じたのは人の弱さです。暴動を起こす人たちは「人種差別だ」、ということを声高に主張します。
そのような一面も否定できないと思います。
たしかに、偽20ドルを使った容疑だけで、黒人が白人の警察官に不合理な抑えつけ方をされて死亡しているわけですから。
一方で、今回の警察官の行動、それに追随する暴動などをみると、色々な自分のフラストレーションを周りに撒き散らしているだけのように見えてしまいます。
今回の事件現場において黒人男性の首を白人警官が膝で押さえつけている図がありますが、私が違和感を覚えるのは白人警察官が自分の手をポケットに突っ込んでいるところです。
もちろん、逮捕される人が暴れたり、危害を加えたりするという危険性があり、警察官はいつでも危険と隣り合わせだということはわかります。そして、警察官も自分の命を守りながら働くことは当たり前であります。
しかし、今回の事件では、殺人容疑(それも、計画性のある第一級殺人ではなく、第三級というレベルとしてはかなり低い容疑)で逮捕された警察官は、逮捕行為を行っているときに、真剣に逮捕と向き合っているというよりは、笑いながらポケットに手を突っ込んでいました。
このような警察官の態度は真摯に職務として逮捕しているとは到底見えません。殺人の嫌疑で逮捕されても仕方がない行動だと思いました。
もちろん、裁判で有罪が認定されるまでは推定無罪ではあります。
このような警察官の行動というのは、なかなか日の目を見ない実際があります。私も、今までの経験であまりにもひどい捜査がなされたケースを実際に体験しています。
警察官が事件捜査の嫌がらせで容疑者の子供の学校にまで聞き込みをするなど、ひどい事例もあった記憶が蘇りました。
権力というのは濫用されるととても深刻な人権侵害を生み出します。私は弁護士になった当初から、いつも権力の行使に対しては懐疑的であるべきだと思っています。そして、決して「長いものには巻かれろ」だけの弁護活動はしたくはないな、と思っていました。
そして、このような事件が起きると、やはり権力に対峙するためには、間接的にはジャーナリスト、そして直接的には弁護士が担っているのだ、ということを実感します。
みなさんは、違法収集証拠排除法則というのをご存知でしょうか?
警察官などの権力を行使する側が違法な方法によって証拠を収集した場合、その証拠は裁判では使えないという法則です。
そもそも、違法に収集したとしても証拠は証拠だろう、と思えますが、アメリカにおいてデュープロセス(適正的続)の精神はかなり強く、違法なことをした権力側にブレーキをかけることが趣旨なのです。裏を返せば、それだけ違法な捜査というのも多いからこのような法則が必要になってくるわけです。
私は若いときから、刑事事件をできるだけ担当して、生の訴訟、捜査機関、検察などと渡り合ってきました。多くの捜査機関の人たちや検察官はフェアな人も多く、人間的にも尊敬できます。
ただ、そのなかには、どうしようもない人間が紛れているのは、社会の定めなのでしょうか。もちろん弁護士だってどうしようもない人間がいますけどね。
今回のような事件を見ると、やはり弁護士としてやはり刑事事件には携わって、感性を研ぎ澄ませておかなければならないな、と自分を戒めました。
事件は現場で起きているので、ものぐさにならずに謙虚に刑事司法にも関わっていくのが弁護士としてのやりがいにつながるのではないかと感じています。私は暴動では何か解決することはないですが、アメリカの権力構造において、米粒でも良いから、問題を提起できる弁護士でいたいと思いました。
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