法律ノート 第961回 弁護士 鈴木淳司
Oct 17, 2015
子供の頃、ダンボールに入ったみかんをコタツで食べながらテレビを見る、というのが、ある意味冬のお約束のようになっていたことを最近TPPが合意に至ったというニュースを見て思い出しました。アメリカは従来いわゆる「オレンジ」しか店頭に並んでおらず、皮を剥くのも一苦労でした。
ところが、最近では「SATSUMA」などという名前で、日本のみかんに近いかたちのみかんが近くのスーパーに並んでいます。アメリカでも、TVみかんといって大流行しているわけです。日本の農作文化が大いに受け入れられているべきです。TPPを巡っては、憂慮される方も多いのかもしれませんが、日本の良いものを外国に知ってもらうチャンスでもありますね。皆さんはどう思われるのでしょうか。
アメリカで転職する際の注意点(3)_961
さて、前二回「現在シリコンバレーで、日系企業に勤めています。日本の本社から派遣されて現地企業で働いているのですが、来年、他の企業に転職しようかと思っています。できるだけ、波風を立てないように転職したいのですが、契約の関係やビザの関係などについて注意点を教えてください」という質問を考えてきました。今回続けて考えます。前回は3点重要な雇用契約に関する内容を考えましたが、今回さらに3点考えたいと思います。もちろん、前回と今回を合わせた6点が、すべてではありません。あくまでも重要なポイントについて考えているだけですので、さらに質問がある方は法律ノートまで、ぜひ質問をいただければと思います。
福利厚生についての処理
前回の雇用契約にも関連することですが、福利厚生についてはどのように処理されるのか、考えておかなければなりません。主に、有給休暇の処理と、401Kなどの退職手当の処理です。
有給休暇については、米国法では被用者に与えることは義務付けられていませんが、かりに就業規則で決められているとすれば、どのような形で消化できるのか、金銭に代替できるのか、休暇を取るのか、などを確認する必要があります。
また、退職手当となりえる401Kなどについては、新しい就職先にどのような形で移行できるのか、移行できないとすれば、どのように現金化するのか、などを確認しなければならないでしょう。
少なくとも転職の半年前程度からビザ申請のことを考えておく
5点目ですが、ビザを保持して就労されている方は、新たに就職する場合には、新たに就労ビザを得なければなりません。重要なのは、従来の就業先のビザを持っているからと言って、そのまま新たな就労先で賃金を受けることはできません。
したがって、充分に時間的余裕を考えながら申請をする必要があります。H-1Bビザ(専門分野に許可されるビザ)をお持ちの場合、毎年の発給上限可能数にかかわらず、就労先の変更はできますが、あくまでも、新たに申請をしなおさなければなりません。時間的にも余裕がなければいけませんので、転職する場合には、少なくとも半年前程度からビザ申請のことを考えておくことは重要かもしれません。
主な就労ビザはEビザ、Hビザ、そしてLビザですが、新たな就労先に合致したビザを新たに取得する必要があります。とにかく、新しい就職先がどの程度協力的なのかで、転職が用意かどうかが決まることになろうと思います。
新たな就職先との雇用契約を確認
6点目ですが、新たに就職する企業と事前にどのような関係を確認しておくべきか重要なポイントになります。基本的には、就労前に雇用契約はまたはオファーレターのような書面を得るか、契約として締結しておくことが必要になります。
オファーレターというのは、雇用主からの一方的な意思表示ですので、通常は雇われる側の署名は要りません。一方で、雇用契約や、メモランダムなどは、契約の当事者として被用者も署名が必要となります。
ここで、重要なのは、ビザ絡みの問題がある方は、契約書を締結する際に、必ずビザが取れることを条件で契約書に組み込むことを主張しておいたほうが良いということです。就労ビザの許可がおりないのに、働くことはできませんから、できれば契約書に条件(解除条件といいます)として盛り込んでおくのが良いと思います。
もちろん企業によってはフォーマルなレターや契約書はなく、メールのやりとりだけの場合もあるでしょう。メールのやり取りだけでも両方の意思が合致すれば、契約は成立していると言えますが、この場合でも、ビザの取得を条件としたい、とはっきり言って
おくことは重要だと思います。
もちろん、賃金や、他の諸条件も重要ですが、今回質問されている方も、ちゃんとビザをとることが前提となりますので、注意をされたほうがよかろうと思います。
次回、新しいトピックを考えていきたいと思います。もうハロウィンが近くなってくると、秋だな、と感じます。アメリカでは、これからビジネスもスローダウンして年末に突入していく感じになりますね。とはいえ、まだ今年も数ヶ月あるのですから、気を引き締めてまた一週間がんばっていきましょうね。
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