法律ノート 第993回 弁護士 鈴木淳司
Feb. 7, 2016
私の所属する事務所付近は「スーパーボールシティー」となってしまい、交通規制がひかれています。スーパーボールはアメリカのスポーツでは最大のお祭りですので、100万人がやってくるとか。その煽りで、事務所の勤務時間を短縮変更したりして、職員の安全を第一にしました。
一方では迷惑なこともあるのですが、他方ではやはり楽しみなイベントでもあります。私も法律ノートを早々に書き上げて、スーパーボールを楽しみたいと思います。週末はずいぶん暖かくなりそうですね。
米国子会社設立にあたって雇用面接を行う際の注意点[3]_993
さて、前回まで考えてきた「今年米国に進出を予定している日系企業で子会社の設立を担当している者です。新規に米国の子会社を設立するにあたり、何人か雇入れをしようと思っています。私が採用の面接をしようと思っているのですが、何か気をつけなければならない点というのはあるのでしょうか。」という質問を続けて考えていきましょう。
面接時、差別に当たる内容は避けるが、一部例外も
前回は要するに法律上差別に当たる内容については、採用面接時に話題にしてはいけない、ということを考えました。また、仕事内容に関連する内容であれば、差別に該当する可能性がある事項でも一定程度の例外は考えられるということも考えました。
今回は具体的にどのような事項の質問が許されるのか、どのような事項が許されないのか考えたいと思います。
カリフォルニア州政府の公正雇用住宅局(DFEH)発表の基準
ここで、カリフォルニア州政府の公正雇用住宅局(DFEH)がどのような基準を発表しているのかが、かなり参考になります。
以下のリンクの先にあるPDFをダウンロードしてみてください。http://www.dfeh.ca.gov/res/docs/publications/dfeh-161.pdf
ここには、かなり大多数の質問が書かれており、質問として許容されるもの、禁止されているものの例が示されています。
基本的に、雇用を司る行政機関が公表しているものですので、この指針にしたがっておけば、まず間違いはありません。ですので、この表をプリントして採用面接の前に頭に叩き込んでおくか、採用面接の際に参考にされると良いと思います。
とにかく、前二回の法律ノートで書きましたが、基本としては差別にかかわることは絶対禁止事項です。
年齢、宗教、犯罪歴などを聞く際の注意点
さて、この表からいくつか、気をつける点を考えておきましょう。年齢についてですが、聞いても良いのは法律で定められている最低就業年齢に達しているのかの確認です。しかし、生年月日など、40歳以上であることを推定させるような質問(これは、法律により年齢差別の推定が40歳を境界線としているからです。)は禁止されています。
宗教に関しては、通常の祝休日に関して問題がないか聞くことは仕事に密接にかかわることですから問題はありませんが、宗教上の祝休日について聞くことは禁止事項となります。
犯罪歴については、仕事と関わりがあると認められる場合には聞くことは例外的に許されます。しかし、一般的な犯罪歴についての質問をすることについては、許されません。もちろん雇用する際に、雇用者側としては犯罪歴を独自にチェックすることはある程度できるので、質問をする必要はないかもしれません。
犯罪歴については、差別禁止と直接関係ないかもしれませんが、カリフォルニア州では聞くことは禁止事項となっています。ただし、政府の機密に接する場合やセキュリティに関係する場合などの例外はあります。
同じように一般的な質問が禁止されるのは、どのような団体に属しているのか、仕事に関わりがない情報を聞くことです。一般的に団体の情報を聞くことで、差別禁止に当たる情報を間接的に引き出す可能性があるからです。
もちろん、建築関係の職場での採用面接で、建築関係の団体への所属を聞くことは許されるわけです。仕事に直結する内容ですから。一方で、宗教や民族的な団体への所属に関する情報は、差別禁止事項にかかわる情報を含むので許されないということになります。
履歴書に写真を添付することは、アメリカでは禁止事項
それから、日本では履歴書に写真を添付することが一般的ですが、アメリカでは禁止事項です。差別事項に関わる可能性があるからです。採用面接が終わり、就職が決まった段階で写真を撮ることは良いのですが、就職が決まる前に写真を履歴書に添付することを求めたり、身長や体重の開示を求めたり、することは許されません。
上記のように、いろいろ気をつけなければならない点がありますが、基本的には差別的な理由につながる事項を排除すること、それから質問は対象となるポジションに関連すること、の二点を常に頭においておくことになるでしょう。
天気が良くなり、虫達も活発になってきているようですね。人間の我々も運動不足に気をつけながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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