ゴルフ場での事故。アメリカの法的処理は?(2) _1115

Golden Gate sanfran

法律ノート 第1115回 弁護士 鈴木淳司
June 25, 2018

 トランプ政権の移民政策はかなり批判を浴び、不法な移民は絶対に許さないといっていた大統領が48時間後には、移民とその子どもたちを引き離す行政を変更すると言い始めました。今度法律ノートでも時事の問題として詳しく考えるチャンスがあればぜひ書きたいのですが、一応理由をもってアメリカに入国しようとしている外国人家族の親と子供を長期にわたって引き離すことを許す移民行政はやりすぎです。大統領の奥さんだって、自分の家族を連れて移民してきているし、自分の先祖もそもそも移民なはずです。歴史的に、なんだか似たような過ちがあったと思うのですが、腰を据えて眼の前のパフォーマンスではなく、アメリカの利益を考えてもらえないものでしょうか。

ゴルフ場での事故。アメリカの法的処理は?(2) _1115

 さて、前回から考えてきた「先日、同僚に誘われてゴルフのコースにはじめていきました。日本ではゴルフをしなかったのですが、アメリカでは職場の近くにゴルフ場もあり、練習を重ねてきました。プレー中に隣のホールからボールが飛んできて、その球にあたりました。なんバウンドかしていたようで、幸い足のアザになる程度で済みましたが、謝られるだけで終わってしまいました。私の英語が達者でないこともあるのですが、もっと深刻な怪我となっていたら、どうなっていたのでしょうか。こういった場合には怪我にいついて、ボールを打った人になにか法的に言えないのでしょうか。」という質問を続けて考えていきたいと思います。

日本では過失責任

 前回は、日本における「過失」を考えました。注意を怠って人に損害を発生させれば、その損害を賠償しなければならないことを過失責任といいます。この「注意の怠り」というのは、日本の裁判所ではかなり広汎に捉えられていますので、パターンとしては、何らかの損害が発生した場合、その責任を誰かに取らせるために、過失を探す、といった実際の構造が現実存在します。

 日本では、ゴルフ場での怪我について、この過失責任(民法709条など)がそのまま適用されることになります。したがって、誰かに怪我が発生した場合には、怪我を発生させたゴルファーの過失があったのか、探していくことになります。

 日本では、たとえば、まだ経験が浅い人に過失が認められた例もありますが、注意喚起の「フォア」を叫んでいても、隣のコースの人にあたったらベテランの人でも「過失」となる場合もありえます。注意して球を打っていない、ということですが、ほぼすべての場合、皆さん注意して打っていると思うのですが。

 とにかく、日本ではゴルフ場での怪我はなんらかの過失の材料とできる可能性が高いわけです。

「過失相殺」というコンセプト

 今回質問されている方も、怪我という損害が発生していれば、何らかのゴルファーの過失責任を問うことは日本では可能かもしれません。ただ、日本では「過失相殺」というコンセプトがよく裁判で出てきます。一方的に注意義務に違反した人だけが悪いのではなくて、被害に遭った方にも落ち度がある場合には、過失の割合を調整するのです。6:4でAさんが悪い、といった感じでしょうか。

 アイスホッケーのギアをつけてゴルフをすれば確かに怪我は最小限に抑えられるでしょうが、それではゴルフなんて炎天下でできるわけがありません。普通にプレーをしているだけで、裁判になったら、過失相殺される理由というのもかなり疑問に感じます。いろいろこじつけはできるのだと思いますが。現状、日本では、過失相殺が適用される場合もあるのですが、基本的にゴルファーの過失責任を認めています。今回の例でも、過失責任が認められるのではないでしょうか。

アメリカに根付くAssumption of Risk

 一方でアメリカは、考え方にかなり違いがあります。ここではカリフォルニア州法に限らず一般的な法律の考え方をもとに進めていきたいと思います。まず、アメリカでも日本と同様に「過失」を考えます。すなわち、注意を怠って損害を生じさせた場合には、その損害を賠償しなければなりません。この部分は、日本とあまり変わりはありません。

 しかし、伝統的にスポーツなど、もともと危険が伴うアクティビテーから発生した損害について、アメリカではAssumption of Riskという基本的概念が根付いています。このAssumption of Riskとは、日本語で訳すと危険をわかって引き受ける、という意味となります。ですので、危険の引受けとでも言っておきましょうか。この考え方から次回続けていきたいと思います。

 なんだか、暑いのは良いのですが、虫によく刺されます。暖かくなって虫も元気に活動をしているのでしょうね。もうすぐ独立記念日ですが、毎年この時期になると、「ああ、今年も半分終わってしまった」と感じます。折返し地点を過ぎるわけですが、後半戦も弛まずいきたいですね。また、一週間体に気をつけて、がんばりましょう。


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作成者: jinkencom

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