ゴルフ場での事故。アメリカの法的処理は?(1) _1114 

Golden Gate sanfran

法律ノート 第1114回 弁護士 鈴木淳司
June 19, 2018

 最近日本で話題になっているまだ犯人が特定されていない事件について、日本のテレビ番組の一部を見ていたのですが、疑いをかけられている人の弁護士がテレビにでて滔々と語っている姿を見て寒くなりました。自分が相談を受けている案件そのものに関してテレビにでていくら「無実だ」とコメントしても、結局は、弁護士本人の売名行為だけ残るような気がします。特殊な場合を除いては、能力を疑いたくなりますね。人の振り見て我が振り直せ、で私も戒めなければと考えさせられます。

ゴルフ場での事故。アメリカの法的処理は?(1) _1114 

 さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。アメリカ(カリフォルニア州外)に駐在されている日本人女性からの質問です。いただいている質問をまとめると「先日、同僚に誘われてゴルフのコースにはじめていきました。日本ではゴルフをしなかったのですが、アメリカでは職場の近くにゴルフ場もあり、練習を重ねてきました。プレー中に隣のホールからボールが飛んできて、その球にあたりました。なんバウンドかしていたようで、幸い足のアザになる程度で済みましたが、謝られるだけで終わってしまいました。私の英語が達者でないこともあるのですが、もっと深刻な怪我となっていたら、どうなっていたのでしょうか。こういった場合には怪我について、ボールを打った人になにか法的に言えないのでしょうか。」というものです。

日米でかなりの違いがあるケース

 私も、力はあるので、ドライバーはよく飛ぶのですが、スピンが変にかかるとテポドンのようになることがあるのは事実です。こわいといえば、こわいですが、もちろん「わざとやっている」わけではありません。プロでも大きく外すことがあるので、ゴルフをする人にとって、今回の質問は必ず考えておかなければならないポイントかもしれません。競技でやっているわけでなければ、楽しい時間を過ごせるかどうかが、スポーツなので重要ですが、注意点も頭にいれておきたいところです。

 さて、今回の質問は、日本とアメリカではかなり違いがあるポイントを含んで興味深いのですが、日本という減点主義が好きな国とアメリカの法律の考え方が良く出ている論点だと思います。

日本におけるゴルフの事故の法的処理

 まず、日本におけるゴルフの事故の法的処理について簡単に考えます。皆さんは「過失」という言葉をお聞きになったことがあると思います。皆さんは一般的に生活を送るうえで、他人に迷惑をかけてはならない、と子供のころから教えられていると思います。たとえ不注意でも他人に迷惑をかけたら、責任を負うということです。

 車の運転でも、事故をしないように安全な運転をしなければなりませんし、仕事のミスで業務上の損害を発生させないようにしなければなりません。他人または他人の物が絡むときに、損害を発生させないようにしなければいけない義務を一般的に注意義務と呼びます。注意を怠ったことについて損害が発生すると、民事法上「過失」とされ、損害賠償の義務を負います。

 この日本法における「過失」というのは、得体の知れない生き物のような面があります。法律では、過失があれば損害賠償義務を負う、としか日本法では基本的に書いてないのですが、この過失、すなわち注意義務に違反したということが様々な場合に成り立ちえます。

減点主義的な発想の日本の裁判例 

 実は、最近私が関わっていた日本の事件でも、大筋過失は「なかった」とされているのに、とても小さな部分を切り抜いて、過失を認めていました。人間というのはパーフェクトではなく、その場その場でいろいろな判断をしながら生きているものですが、日本の裁判所というのは「客観的」とはいうものの、事件や事故が発生した「あと」で、緻密な評価を加えます。そうすると、人間のやったことですから、どこかで不注意というのを見つけるのは難しいことではないように思います。

 一見緻密な法的判断のように見えますが、あとになって「あなたのあのときのあの行為」をピンポイントで注意義務違反と言われてしまうと、なかなかどのような行動するにも抑制効果が先にきてしまうのではと感じてしまいます。日本の裁判例を見ていると、「なんか減点主義的な発想だなぁ」と感じることもあります。

 なぜこのような「過失」について考え始めたかというと、ゴルフ場も日本ではちゃんと「過失」があったかなかったか、かなり細かく判断し、責任を認めています。ちゃんと注意義務を果たしたか、ということを、たとえば、「フォアー」と声をかけたのか、とか、他のホールに人はいたのか確認したのか、とか、どのくらいの経験がある人なのか、とか、「総合判断」をします。

 長くなってきたので、ここから次回考えていきます。まだ、私は花粉症なのか、目が痒くなることがありますが皆さんはいかがでしょうか。夏らしい陽気を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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作成者: jinkencom

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