米国で非営利団体を設立したい(2)_1133

Golden Gate sanfran

法律ノート 第1133回 弁護士 鈴木淳司
Oct. 28, 2018

 以前から購読していた雑誌の再購読を促すメールがよく届くのですが、店頭価格に比べて9割引などと謳っています。月1ドル。通常のビジネスであれば、9割引などとすればかなり存続が大変な状況のように思いますが、デジタル化の波なのでしょうか。マスコミはよく批判の対象に日本でもアメリカでもなりますが、良い記事はお金に変えられない価値があるな、と思うことが多々あります。

 また、文章のセンスもなかなか真似できない素晴らしいものもあります。単に起こっている事象を伝達するだけではなく、掘り下げて考察する力というのが減退していかないことを真に願っているところではあります。

米国で非営利団体を設立したい(2)_1133

 さて、前回から「現在アメリカの大学でソーシャルスタディーズを勉強しています。卒業したら、賛同してくれる友人とともに、海外に住む日本人や、日本に行きたいという外国人を支援する非営利の団体をつくりたいと思っています。まだ、アイディアは漠然としているのですが、寄付を募ってこのような団体を設立し、将来米国を中心にして活動をしたいと思っているのですが、可能なのでしょうか。」という質問を考え始めました。

米国税法では3つのカテゴリーに分けられる

 前回の簡単な復習ですが、アメリカで非営利団体として国に認められるには、まず各州の登記を行い、その次に連邦政府から、非営利団体として税制優遇措置を受ける、という段階的な登記が必要になります。各州では、非営利団体であることを申請時に明示すれば、簡単に登記ができます。一方で、連邦政府から税制優遇措置を受けるには、詳細は割愛しますが、連邦税法503(c)条に基づく優遇措置が認められる必要があり、申請をして認可を受けなければなりません。申請をするには、米国国税局の用意する1023号のフォーム(Form 1023または、Form1023-EZ)を利用することになります。細かい要件は、このフォームを参照させてください。連邦政府から税制優遇措置を受けられる場合、その団体は所得に対して課税されなくなります。

 さて、この税制優遇措置を受けるためには、各州で設立した団体が「非営利」でなくてはなりません。この「非営利」に関して、米国税法では3つのカテゴリーが当てはまるとされています。1つ目は、公的慈善事業(Public Charities)、2つ目は、私的基金(Private Foundations)、3つ目は私的運営基金(Private Operating Foundations)、とされています。この3つの題目からではよくわかりませんので、少し掘り下げて考えていきましょう。

公的慈善事業とは

 公的慈善事業というのは、金銭を得ることを目的にしていない事業で、広く一般に開かれた形で寄付を募る事業です。そして、目的達成のために独立した運営組織を維持していることが必須になります。そして、少なくとも所得の3分の1は寄付によって成立していることが必要です。

 この形態の非営利団体が皆さんにおいては一番目にされるものではないでしょうか。寄付を受けた団体は所得に税金がかかりませんし、寄付をした人については、寄付額の50%が非課税になります(企業が寄付する場合には非課税が下がります)。

 たとえば、教育機関、宗教団体、人権擁護、動物擁護などの擁護団体、動物園や水族館なども場合によってはこの形態に該当するかもしれません。かなりストライクゾーンは広く設定されているということになります。基本的には、このように広く設定されていますので、認可されるかどうかは、過去の認可例などを参照しなければなりませんので、際どいと思われる内容については専門家に助けてもらったほうがスムーズにいくところではあります。

私的基金とは

 2つ目のカテゴリーですが、私的基金というのは、要はお金持ちが節税をするためのツールという面が実際には強いと思います。よく、人の名前を冠した基金がありますが、寄付者には、30%の非課税が約束されます。そして、この基金については、上述した公的慈善などの慈善目的のために、基金を使うということになっています。したがって、公に大きく開かれた非営利団体というよりは、家族やかなり限られたメンバーで構成されており、公的慈善の目的を掲げて寄付者がお金を基金として供出するというニュアンスになります。

 お金を持っている人が、そのままお金を持ち続けると所得税などが大きくかかってきます。そこで、この私的基金を設立して、自分のお金を寄付してしまいます。そうすると、30%は寄付者として非課税になります。さらに、寄付金については基金に入っているのですから、基金がお金を増やしても所得税はかからず、目的達成のために利用されることになるのです。

私的運用基金とは

 3つ目の私的運用基金というのは、わかりにくいのですが、上述した1つ目と2つ目のハイブリッドのような基金です。お金の出処は、2つ目のように限られたメンバーや一つの家族から構成されます。ただ、2つ目のように静的な基金、すなわち基金にあるお金は、公的事業をやっている別の団体に渡されるわけではなく、1つ目の公的事業を基金そのものが行うというイメージを持ってもらえばよいです。基金自体が慈善活動を行うというイメージですね。

 ここから次回考えていきましょう。この私的基金および私的運営基金がアメリカではかなり充実した制度になり、あらゆる分野の研究に役立っているのは間違いありません。ノーベル賞の数もこのような非営利団体の制度が充実していることが寄与しているのではないかと思います。

 もうハロウィンの週ですね。寒暖差に気をつけながら一週間楽しんでいきましょう。


▼グリーンカード抽選DVプログラムの当選後サポート、受付中!

https://jinken.com/win/

グリーンカード取得まで、とことんお手伝い。1年以上の長期にわたって、メールのやり取りは200,300,400以上が当たり前。

各種証明書の翻訳・面接その他のコンサルティング・実際のグリーンカード取得者の経験にもとづく専用QAページ・各国の警察証明取得・大使館等への問い合わせが、すべてセットになっている総合サービス

面接通知はどうやってくる?次に何をすべき?…日常と併行して手続きを進めるのは、本当に大変です。 気軽に相談できる専門家がいれば、心強いこと間違いなし!大きな不安を、ぐっと軽減します。 

*当選後手続きは、細やかなサポートを徹底するため、お断りする場合があります。 サポートをご希望の方は、まずはお気軽にお問い合わせを。(i@jinken.comもしくは各担当者アドレスまで)

▼グリーンカード抽選DVプログラムの抽選サポート、お申込み受付中

https://jinken.com/entry/

絶対アメリカに行きたい!住み続けたい!大きなチャレンジをして自分を変えたい! JINKEN.COMを通じてご応募なさる方々の「本気」にこたえます。

応募期間は例年10月のおよそ1か月。

もしもDVが実施されなかった場合には、もちろん全額対応させていただきますのでご安心ください。政権の移民政策に対する不安も大きいところですが、JINKEN.COMでは柔軟に対応してまいります。

作成者: jinkencom

jinkencom について JINKEN.COMの運営者であり、カリフォルニア州弁護士として活躍中の鈴木淳司弁護士のブログです。「移民法ブログ」では米国の移民分野についてホットな話題を取り上げて月に一度更新、「アメリカ法律ノート」は広くアメリカの法律相談に答える形で、原則毎週更新しています。なお、本ブログの著作権は著者に帰属します。 *たびたび法制度が変わりますので、最新情報をご確認の上、手続きされてください。