法律ノート 第1142回 弁護士 鈴木淳司
Dec. 28, 2018
この原稿が2018年最後の原稿になります。昨年末は私の所属する事務所の引っ越しなどでバタバタしてゆっくりできなかったのですが、今年はやっとゆっくり過ごせそうで、なによりです。風邪などは引きましたが、健康に一年過ごすことができました。皆さんにとっての2018年はいかがだったでしょうか。色々なニュースもありましたが、一番は、読者の皆さんが健康で幸せな毎日を過ごされたかどうかということだと思います。
カリフォルニア州弁護士コラム―「感謝の気持ちを忘れずに」_1142
だんだん私も歯の悪いところがでてきて、最近近所で歯科治療に通っています。心がある歯科医師から人気なのか、とても忙しそうです。私の治療も文句も言わずに、時間がかかっても夜遅くまでやっていただけます。疲れが浮かんでいることが明らかですが、患者のためにがんばる姿がとても印象的です。まだ若い歯科医師なので体力もあるのかもしれません。何度か通っているなかで、待合スペースが殺伐としている感じを受けました。ちょうどホリデーシーズンなので、花を送ることにしました。華やかさがあったほうがいいですよね。
再訪すると、その花は受付に飾られていました。そして、受付の人だけではなく、働いている人全員の笑顔を見ることができました。とても感謝されて逆に驚きました。たしかに、アメリカでは、日本のように、「お土産」的な習慣はないのですが、そのときふと思ったのは、なかなか花などは、もらわないものなのだな、ということでした。この歯科医院、評判はとてもよく、待合でみかける人たちも口々にかなり感謝している様子です。このような光景に接して、思うところがありました。
「できて当たり前」の専門職だが…
歯科医師だけではなく、医師も弁護士も人を扱う職業です。そして、人体や社会の問題を解決するために、高度な知識や経験に裏打ちされた挟持を持ち、常時最新の分野を学び切り開いていかなければなりません。
こういった専門職は、免許がないとできませんから「できて当たり前」という見方をされることがほとんどです。もちろんおっしゃる通りなのですが、専門職の人たちも人間です。寝ないで研究できるわけではありませんし、ミスもあるでしょう。ただ、「できて当たり前」を維持するために、かなり努力を続けて、精神を緊張させていることも事実だと思います。
感謝されると素直に嬉しいもの
「できて当たり前」なのでしょうが、やはり感謝されると素直に嬉しいものです。人を幸せにすることで、自分も幸せを感じられる場合も多く、人から受けた感謝から感じる、「人の問題を解決できたな」という達成感は、なかなか気持ちが良いものです。
もちろん、私もお世話になっている歯科医師にちゃんと御礼は言います。でも、夜遅くまで私のような人間に時間を割いて妥協しない姿を見ていると、「できて当たり前」とは思えなくなるのです。人の問題を解いていくという、性質の似ている専門分野で仕事をしているからかもしれません。花を送ってよかったと本当に思いました。
感謝の意を示すのに最適なホリデーシーズン
皆さんも周りとの人間関係で、どこか「当たり前」だろう、と思って日々生活し、仕事をされているかもしれません。それを信頼関係と呼ぶこともできるかもしれませんし、深い絆があるのかもしれません。あるいは、「当たり前」の関係に慣れてしまっているのかもしれません。
どのような形であっても、せっかくの年末、ホリデーシーズンです。色々な人間関係に思いを馳せて、感謝の気持ちを表すにはもってこいの季節ですね。「当たり前」の関係かもしれませんが、その人がいてくれることに素直に感謝できるというのはとても気持ちの良いことですし、幸せが幸せを呼ぶように思います。
私は、今まで20年以上法律ノートを書き続け、読んでいただいている読者の方々、質問を送ってくださる方々に、全員に花束をお送りして感謝したいとは思います。ただ、現実問題としてそれは難しいことです。紙面となりますが、一人一人の方、励ましてくださる読者の方々、出版を支えてくれている方々、皆さんに本当に感謝します。そして、この原稿をきっかけに、年末年始、皆さんも誰かに感謝の気持ちを持って、2019年をお迎えいただければ、私は嬉しいです。
2019年になっても、法律ノートの執筆がんばっていきますので、皆さんどうかよろしくお願いいたします。皆さんにとって幸多き新年になりますよう、心からお祈りしております。
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