カリフォルニア州における2019年新法・法改正について(1)_1143

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法律ノート 第1143回 弁護士 鈴木淳司
Jan. 10, 2019

 遅くなりましたが、皆さん明けましておめでとうございます。健康的で平穏な年末年始を過ごされましたか。私もすっかりリフレッシュさせていただきました。皆さんにとって、素晴らしい2019年でありますよう、祈っております。

 さて、最近毎年恒例となってきましたが、新しい年の第一回目の法律ノートということで、皆さんからいただいている質問にお答えするのを一回お休みさせていただき、カリフォルニア州における法律のモデルチェンジについて考えてみたいと思います。

 注意していただきたいのは、本稿で取り上げる新法や法改正が、すべてではありません。かなり色々な分野で、それも多岐にわたって変わっている部分があり、知事が署名した1000以上の新法・法改正すべてをこの原稿で取り上げるのは不可能に近いのです。皆さんに関わりがありそうなポイント、そして興味深いポイントを取り上げていきたいと思います。

カリフォルニア州における2019年新法・法改正について(1)_1143

1 労働関係法規

 まず、最低賃金の増加は以前から2022年まで計画的に引き上げることが決まっていましたが、今年は州全体に適用される法で25人以下の従業員がいる企業では最低11ドル、従業員が25人より多い企業では最低12ドルとなりました。もちろん州の規制を上回る最低賃金を設定している郡もありますので、企業の所在地に注意しなければなりません。来年も段階的に最低賃金の賃上げがなされていく予定になっています。

 次に、セクハラ関係については、色々なニュースが2018年もあったので、議会も注目し、様々な規制の法規が作られました。企業はかなり注意する必要があります。現在では、50名以上従業員のいる企業の管理職(Supervisor)に対して、隔年に2時間ずつのセクハラ防止のトレーニングをしなければならないことが決まっていますが、この規定が法律により厳格化されます。

 2020年1月より施行されますが、5名以上就業する、カリフォルニア州内にある企業は、隔年に一度原則としてすべての被用者に対してセクハラ防止トレーニングをしなければならないことになりました。管理職に対しては一回2時間、その他の従業員については一回1時間半のトレーニングが要され、雇用時から6ヶ月以内に行わなければなりません。一時的に雇用されている場合には、雇用から30日以内または雇用時間100時間経過前にトレーニングをしなければならないと規定されています。2019年以内にこの2020年施行の法律に従ったトレーニングをしている場合には、要件は満たされていると判断されます。

 そして、カリフォルニア州均等雇用健康局(DFEH)が作成するセクハラ防止に関するポスターを就業場所に掲示することも義務付けられました。

 色々な弁護士が解説しているところですが、要は今年(2019年)中に、企業内で
(1)全員に対して2時間のトレーニングをすること、
(2)新規雇用が生じる場合には、雇用時にすぐトレーニングをすること、
(3)ポスターが用意されていれば、そのポスターを貼ること、
(4)新規雇用以外の従業員に対して、2年毎にトレーニングをすること、
さえ守っていれば問題はありません。

 トレーニングはどのような形でも良いのですが、参加時間をちゃんと記録しておくことが重要です。

 また、単にコンサル業者に丸投げするのではなく、弁護士にちゃんと相談をして、社内で記録を用意しておくことが、紛争対策になりますので、ちゃんとセクハラ訴訟を経験している法律家に相談されることを強くお勧めします。

セクハラの守秘義務についての修正

 もうひとつセクハラ関係です。私も、今まで訴訟で色々な場面を経験してきたので、セクハラの「和解契約」もたくさん見てきました。今回、セクハラ被害者保護の観点から、様々な法的処置がなされました。いくつか「和解」等についての法改正をみていきたいと思います。

 まず、セクハラの紛争で和解が生じると、「守秘義務条項」というのがお約束的に和解契約書に記載されていました。2018年もっとも話題になったのは、大統領と関係があったとされるモデルの人が公に、関係や和解内容などを話した件でしょうか。

 今回カリフォルニア州においては、この守秘義務について修正がなされました。民事訴訟、行政訴訟において、事実関係として訴訟上顕出した内容については、守秘義務を課すことはできない、としたのです。ですので、和解をしても事実関係については公に話をすることができるのです。

 制限としては、和解の金額、訴訟上問題となっていない内容については、守秘義務を課すことはできますが、訴訟上争われた事実関係について守秘義務は及ばないので、被害者は自由に話ができることになりました。

 したがって、従来に増して、訴訟上どのように争いを広げるのか、絞るのか、弁護士の役割が重要になる部分ではあります。

セクハラのクレームは名誉棄損とはみなされず

 次に、一定の場合、セクハラのクレームを被害者が行う場合に、名誉毀損とはみなされないという保護が法律で明記されました。

 被害者が加害者に関して「セクハラがあったのだ」と色々な人にいうと、加害者が本当にやったかどうかにかかわらず、社会的地位が低下する危険性があるわけです。

 名誉毀損で訴えられることに怯えて、セクハラ被害を訴えられないのではという抑制から解き放つ効果が今回の新法にはあるのです。一定の場合に上司や会社に相談する場合、外部の調査機関や政府機関に相談する場合などが含まれます。どちらにしても、まずは守秘義務で固く守られている弁護士に相談するのが最初だとは思いますが、泣き寝入りは少なくなると思います。

 それからもう一つセクハラ関係について言及しておくと、今までは、企業内でのセクハラが紛争化するのが一般的でしたが、今回法改正がなされて、企業に関係する投資家など、責任を負う加害者の幅が広くなりました。

 これは、最近でよくある、IT企業文化で会社とは直接業務に関係のない「投資家」などがセクハラを行っているというクレームがニュースにもなっていて、これを牽制した法律といえます。他にもセクハラ関連のニュースはありますが、この辺にしておきましょう。

女性の企業進出をサポートする新法も

 もう一つのトレンドとして女性の活躍を推進する法律がいくつもできました。

 上場企業に影響する新しい法制度として、カリフォルニア州内に業務執行所在地がある内外の企業は、2019年末までに必ず一人女性を取締役(Director)として、採用しなければならないという法律ができました。

 さらに、2021年末までに、取締役が5名の場合には女性を2名、6名以上の場合には、3名を女性取締役として委任しなければならなくなりました。

 女性の企業進出を具体的に後押ししている法制度です。もう一つ働く女性をサポートする新法として、女性の授乳が必要な場合には化粧室ではなく、プライベートな授乳の場所を一時的にでもつくることが義務付けられました。

 主な労働関係法の改正・新法制定は上記です。長くなってきましたので、次回続けていきましょう。

 新年です。気分をあらたにまた一年間がんばっていきましょうね。


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作成者: jinkencom

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