法律ノート 第1158回 弁護士 鈴木淳司
April 30, 2019
平成も最後の日になりましたね。令和元年といってもピンと来ません。私のコンピュータもREIWAと入力しても、まだすぐに変換してくれません。少なくとも「鈴木」の字の一部が年号になるのはなんとも嬉しい気もしますが、一区切りというのは、感慨深いですね。しかし、平成の時代をずっと生きてきましたが、なんだか早かったような気がします。天皇家とリンクする元号というのは、世界でもないわけですから、和暦が廃れてきたという意見を持つ方も多くいらっしゃるかもしれませんが、私は素敵な文化なので残るといいな、と思っています。皆さんの平成はいかがだったでしょうか。
それは「ハラスメント」か?_1158
さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきましょう。
いただいている質問をまとめると「日本で5年ほど働いていたのですが、応募をして、今米国にある企業に3年ほど前から就職しています。まだ規模はそれほど大きくないテック関係の会社です。学生の頃、アメリカに住んでいたので、英語には困っていません。私の職場の上司がアジア系の方なのですが、いろいろな場面でパワハラに遭っています。仕事をちゃんとしても難癖つけられて何度もやり直しをさせられたり、大勢の前で恥をかかされたりすることもしばしばあります。同僚に相談しても、そういう性格だから気にするな、できるだけ無視をしておけ、というのが意見です。私もできるだけ、リモート(自宅勤務のことか?)で仕事をして、職場で顔を合わせるのを避けています。しかし、仕事に関しての嫌がらせとか難癖がエスカレートしてきているように感じますし、私自身もカウンセラーに相談をしています。職場には、直接相談できる人が実際いないので、困っています。このような場合に弁護士に相談して、なにか対応する可能なのでしょうか」というものです。
かなり長文の質問で、いろいろな出来事が認められていました。今回は、書かれている個々の出来事を考えるのではなく、全体的にどういうことができるのか、考えていきましょう。
「ハラスメント」?
まずは、カリフォルニア州における「ハラスメント」というものはどういうものが考えられるのかを知っておかなければなりません。
日本は、外国語の言い回しを日本語化するのが得意なので、今ではなんでも「○○ハラ」という言い方をして、あたかも法律的に違法な雰囲気を醸し出そうとする傾向があると思いますが、そのようにカリフォルニアでは「ハラスメント」という言葉は独り歩きしているわけではありません。
カリフォルニア州におけるハラスメント
ここで、カリフォルニア州における「ハラスメント」について労使関係を中心に考えていきましょう。
まず、州適正雇用住宅法(California’s Fair Employment and Housing Act 、略してFEHAと呼ばれています。)によると職場においては2種類のハラスメントが明記されています。
1つ目はいわゆる「セクハラ」ですが、対価要求型のセクハラが明記されています。すなわち、性的な対価を条件として、なにか仕事に関することをする(しない)というタイプのものです。「給料上げてあげるから、今夜付き合ってよ」というのは、この対価要求型セクハラです。
もう一つは、Hostile Work Environmentハラスメントと呼ばれるものです。よく、「敵対的ハラスメント」と言った訳がなされますが、敵対することだけが法律上の意味ではなく、訳語としては不足しています。不穏な職場環境とか、不和な職場環境、というのが日本語ではしっくりくるとおもいます。
このタイプのハラスメントは、対価性のない性的な行為を含みますが、その他にも、人種、宗教、出生、門地、障害、持病、婚姻、性別、年齢、性的嗜好、軍隊の入隊歴などに及びます。
職場において、このような列挙事由に関する発言をすることで、職場にいる人達に働きにくい環境をつくることはハラスメントに該当すると法律で明記されています。
民事ハラスメント
もうひとつ、「ハラスメント」という単語が使われるのは、民事ハラスメント禁止命令手続(A Civil Harassment Restraining Order)と呼ばれる手続きにおいてです。
この手続は、なんらかの継続的な関係が存在しているうえで、一定のハラスメント、脅迫、ストーカー行為を禁止することを審査するものです。
この手続において禁止命令が出せる程度の、「ハラスメント」とは、合理的な人の見地から、請求者が実質的な精神的被害を生じる行為を受け、実際に重大な精神的被害を受けたか、という基準で判断されます(カリフォルニア州民事訴訟法第527.6(b)条)。
職場での「ハラスメント」と言われるものは、主に上記のような場合が該当します。この規定をたたき台にして、また次回考えていきたいと思います。
日本はゴールデンウィークですが、私は働かなくてはなりません。天気が良いので気分転換をしながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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