最近の移民法の動向について

Washington DC Capitol

じんけんニュース 弁護士 鈴木淳司 10-30-2025

今回の法律ノートは少し現地で、移民に対する動向に敏感でなければわからないネタも多いと思いますが、現在アメリカで外国人が労働する環境がいろいろな角度から影響を受けているということをまず認識していただければよいかと思います。

●H-1B関連
2025年10月20日にUSCIS(米国市民権・移民局)が9月19日の大統領令に基づく10万ドルのH-1B手数料に関する追加の情報を加えました。
実際のところ、H-1Bの動向が注目される背景には、政府機関の閉鎖(Government Shutdown)の影響があります。
その影響は労働局にも及んでおり、永住権申請プロセスの一部であるPERM申請が現在完全に停止している状況です。
このため、H-1Bビザの抽選を避けるために早期にPERM申請を開始していたクライアントが、再びH-1B取得の可能性を検討するケースも出てきています。
今後の状況を見守る必要があります。
来年の抽選登録者が減少し、逆に当選確率が上がる可能性も考えられます。

USCISが提供した新しいガイダンスによれば、この10万ドルの手数料は、2025年9月21日午前12時1分(米国東部夏時間)以降に申請された申請書(Petition)に必要であることが確認されました。
手数料が適用されるのは、受益者が現在米国外におり、有効なH-1Bビザを所持していない場合です。
また、I-129フォームで「領事館通知(Consular notification)」が要求された場合、あるいはUSCISがステータス変更(COS)や延長(EOS)を却下した場合、または申請中に受益者が出国した場合にも適用されることがあきらかになりました。

一方で、この期限より前に申請された申請書、またはCOS、EOS、修正(Amendment)の申請が承認された場合には、この手数料は要求されません。
手数料の支払いは、申請前にpay.govを通じて行わなければならず、支払いの証明がない申請書は却下されます。

このように明確になった部分もありますが、依然として不明瞭な点も多く残っています。
例えば、有効なH-1Bビザを保持している場合に、そのビザの有効期間中に行われる継続申請(例えば、新しい雇用主のための申請)も手数料が免除されるのかどうかは、まだはっきりしていません。
また、国家利益の例外(NIE)が企業全体や特定の業界に対して適用されるのかどうかも不明です。

●EAD関連
2025年10月29日の移民法に関して大きなニュースは、EAD(労働許可証)の自動延長を終了するという発表でした。
DHS(国土安全保障省)は10月30日、一定の場合、EADの有効期間を自動的に延長する措置を終了する内容の暫定最終規則(IFR)を発表しました。

AILA(米国移民弁護士協会)は、この変更が「事前の予告なしに」発表されたことを非難しています。
そもそもEADの自動延長(当初180日、後に540日に延長)は、アメリカ移民局(USCIS)における「大規模なバックログと政府の処理遅延」を緩和するために導入された経緯があります。
AILAは、この措置の撤廃が米国の雇用主と労働者に損害を与え、法的手続きに従っている人々を罰するものだと指摘しています。
雇用主は、法的に就労資格があるにもかかわらず、手続きの遅れによって必要な労働者を解雇せざるを得なくなる可能性が生じてきました。

DHSは、この規則変更の目的を、新たな労働許可を付与する前に「適切な審査とスクリーニングを優先する」ためであると説明しています。
新たな規則「8CFR274a.13(e)」が追加され、2025年10月30日以降に提出されたEAD更新申請は自動延長の対象とならないことが定められました。

ただし、この規則は、2025年10月30日より前にすでに自動延長が付与されたEADの有効性には影響を与えません。
この日付より前に更新申請を提出した人々は、引き続き最大540日間の自動延長の恩恵を受けることができます。

DHSは、この措置の正当化として国家安全保障上の懸念を挙げており、自動延長は完全な審査を経ずに利益を供与するものだと主張しています。
DHSは、2025年6月1日にコロラド州ボルダーで発生した攻撃事件に言及し、容疑者が審査中の亡命申請に基づいて自動延長されたEADを所持していたと指摘しています。

●Driver’s License関連
EAD自動延長の廃止は、非移民の方々が直面している運転免許証更新の問題にも深く関連しています。
今回の新規則が発表される以前から、多くの州のDMV(車両管理局)は、USCISが付与するEADやI-129請願書の適時申請(Timely Filing)による自動延長を認めないという問題がありました。

その結果、540日間の自動延長によって合法的に就労を継続できるにもかかわらず、物理的なEADカードが発行されるか、I-129の承認通知が届くまで、運転免許証を更新できないという状況に陥っていました。
例えば、カリフォルニア州自動車運転局(DMV)が「Federal Non-Compliant」(連邦基準非準拠)の運転免許証のために受け付けている書類リストには、「有効または失効したEADカードとNoticeof Action (I-797
C)」が含まれていますが、延長期間中の法的滞在証明は依然として困難な場合があります。

さらに、非市民に対する運転免許証の制限は強化されました。
2025年9月29日、米国運輸省(DOT)は、CDL(商用運転免許証)およびCPL(商用学習者許可証)に影響を与える暫定最終規則を発表しています。
この規則は即時有効となり、「米国に住所が定まっていない(not domiciled)」個人、すなわち就労許可を持つ非市民を対象としています。
運輸省は、非定住のCDL保有者が関与した死亡事故を理由に挙げ、今後はH-1BやL-1などの合法的な「雇用ベースの非移民ステータス」にある個人のみがCDLまたはCPLの資格を得られると定めました。
この変更により、亡命申請者、DACA(若年移民に対する国外強制退去の延期措置)受給者、TPS(一時的保護ステータス)保有者、または永住権申請中(AOS)のEAD保有者は、これらの商用免許の対象から除外されることになりました。
さらに、CDLまたはCPLの有効期限は、FormI-94の有効期限、または1年間のいずれか短い方と一致しなければならないと規定されました。

このように、アメリカにおける移民に対する労働環境や免許証の更新にはかなりの制限がかけられていく方向で現政権のポリシーは進んでいます。
とにかく、移民法を厳守することが外国人には求められていますので、まだまだ注意をすることが必要になりそうです。
また、次回新しいトピックで続けていきたいと思います。


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