アメリカ人と離婚、永住権は?(2)_1459

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1459回 弁護士 鈴木淳司
Mar 2, 2025

 週末にゴルフをご一緒した60代のご夫妻と会話が弾んだのですが、最近の野球観戦チケットの高騰は想像以上ですね。
特に大谷選手の所属するドジャースの観戦チケットは5万円程度が当たり前になっています。
ちょっと高すぎますよね。
選手の契約金が釣り上がっている分が跳ね返っているのでしょうか。
そのご夫妻が子供の頃は、ドジャーススタジアムで2ドルのホットドッグを食べながら、ブリーチャーズ席(外野)に父親と行ったなぁ、と話していました。
実は、そのご夫妻も、大手スポーツ系メディア企業のオーナーであり、この人たちも価格高騰に一役買っているのではないかと、ふと思いましたが。


 さて、前回から考えてきた質問の続きです。

「アメリカ人の夫と結婚して永住権を取得しましたが、父親の介護のため日本に帰国する必要があります。一方、夫はアメリカで新たな職を得たこともあり、日本での生活を望まず、円満離婚を検討中です。将来的にはアメリカに戻りたいのですが、離婚すると永住権を失ってしまうのでしょうか?どのように永住権を維持できるか教えてください」という内容でした。

婚姻後2年間経過した場合の永住権維持

 前回は、婚姻によって永住権を取得してから2年間が経過し、条件が解除された場合について考えました。
このケースでは永住権は条件が解除されますので、アメリカへの再入国に注意しながらであれば、離婚をしたとしても、永住権の保持は可能だと思います。

条件付き永住権での離婚の影響

 今回考えるのは、今回の質問において、かりに婚姻して永住権を申請してから2年間経っていない、条件付き永住権の状態である場合です。

単に、条件付き永住権の状況で離婚をしてしまうと、永住権は取消されてしまいます

I-751条件解除申請の単独申請

そこで、離婚をするとしても、条件付き永住権の条件解除を単独で申請する方法が考えられます

I-751申請(条件解除の申請)は、原則として夫婦が共同で行いますが、一定の条件を満たせば単独申請(Waiver of Joint Filing Requirement)も可能です。単独申請が認められる主な理由は以下の通りです。

ドメスティック・バイオレンス(DV)の被害を受けた場合

真摯な婚姻意思(Bona Fide Marriage)があったことを証明できる場合

・配偶者の死亡など、その他やむを得ない事情がある場合

これらの単独申請(Self-Petition/Waiver申請)では、移民局(USCIS)が求める書式を提出するだけでなく、証拠書類を用いて事実を立証する必要があります。通常の共同申請よりも複雑で、慎重な準備が求められます。

なお、離婚調停中でもI-751の単独申請は可能ですが、正式に離婚が成立するまで移民局からの承認は下りません。タイミングに注意が必要です。

円満離婚で永住権を維持する方法

 今回のケースでは、可能であれば永住権の条件解除(通常は婚姻から2年後)まで離婚を待つことが、永住権を確実に保持する上で最善の選択肢と言えるでしょう。

もしもご家族の介護が緊急に必要な場合は、婚姻関係を維持したまま一時的に日本へ帰国し、ご主人はアメリカに残るという選択肢も考えられます。その後、永住権の条件解除が完了してからアメリカに戻り、将来を改めて検討することもできるでしょう。ただし、長期間アメリカを離れる場合は再入国許可証(Re-entry Permit)の取得をお勧めします。

どうしても、離婚をしなければならないという状況になってしまったら、やはり永住権の条件解除を単独で行わなければなりません
今回のケースは「円満離婚」とのことですので、ご主人の協力を得て、真摯な婚姻意思があったことを証明する必要があります。具体的な証拠書類としては、

  • 結婚式や旅行の写真
  • 夫婦間のメールやメッセージのやり取り
  • 共同名義の銀行口座や賃貸契約書
  • 友人や家族からの宣誓供述書(Affidavit)

などを添付することになります。

ただし、I-751の単独申請は必ずしも承認されるとは限りません移民局(USCIS)の裁量判断となるため、承認されるまでの間は法的地位が不安定な状態が続くということは覚えておいてください。

 また次回新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。


天気がとても良く、花粉がすごいですね。
しかし、天気が良いというのは気分が良いので相殺でしょうか。
やはり、温かい気候は過ごしやすくて良いな、と思っています。
外での活動を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。

免責事項

本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点(2025年3月)の情報に基づいており、法律や規制は変更される可能性があります。

本記事の内容に基づいて行動される場合は、必ず専門の弁護士にご相談のうえ、個別の状況に応じた適切な法的助言を受けてください。本記事を読まれたことにより、JINKEN.COMまたは執筆者との間に弁護士・依頼人関係が成立するものではありません。

関連する米国移民法リソース

本記事で言及した米国移民法に関する公式情報は、以下のリンクからご確認いただけます:


あなたがずっと抱いている疑問を解消しませんか?
しかし、アメリカの法律事務所はハードルが高い!!確かに。

JINKEN.COMでは、アメリカの弁護士事務所への橋渡しのサービスを提供しています。
お客様の状況とニーズ、ご希望を聞き取り、必要な書類等をまとめる お手伝いです。
私たちは、ジャッジ(評価・判断)をいたしません。
皆さんの頭の中、お気持ちを、できるだけ正確に表現する業務を行います。
ご料金は事前に明確にご提示し、追加のご請求は一切ございません。
i@jinken.com または こちらから直接お問い合せください

■関連記事

アメリカ人と離婚、永住権は?(1)_1458

日本のパスポートがリニューアル!

運営弁護士

アメリカ暮らしを現実に。
JINKEN.COMにアカウント登録して最新のアメリカ移民法にキャッチアップ

■アメリカの永住権を抽選で取得ーDiversity Immigrant Visa Program

アメリカの永住権を抽選で取得する制度があるのをご存知ですか?
日本からも、毎年永住権者として長期合法滞在する方々がいらっしゃいます。

応募サポート希望の方はこちらから

日本出生の方は、高校卒業時点からご応募ができます!当選後も安心のサポート。まずは正しい応募から。

■グリーンカードDV当選後サポート

グリーンカードDV抽選に応募して、当選の確認を忘れていませんか?当選は、忘れた頃にやってきます!

グリーンカード当選後サポートはこちらから

充実した当選後サポートで、安心してグリーンカード取得まで進めましょう。家族・仕事・結婚・離婚・海外在住・介護に闘病と場面は様々ですが、お客様のニーズに柔軟にお応えしています。

作成者: jinkencom

jinkencom について JINKEN.COMの運営者であり、カリフォルニア州弁護士として活躍中の鈴木淳司弁護士のブログです。「移民法ブログ」では米国の移民分野についてホットな話題を取り上げて月に一度更新、「アメリカ法律ノート」は広くアメリカの法律相談に答える形で、原則毎週更新しています。なお、本ブログの著作権は著者に帰属します。 *たびたび法制度が変わりますので、最新情報をご確認の上、手続きされてください。