法律ノート 第1344回 弁護士 鈴木淳司
Dec 11, 2022
今回、キリも良いので、皆さんからいただいている質問にお答えするのを一回休ませていただき、私が弁護士人生ではじめて体験した完全ビデオ方式で行われている陪審裁判で行われた反対尋問についてみなさんと経験を共有させてください。
また、私の事務所にいる若い弁護士や、研修生などがどこかで体験記などを書くのかもしれませんし、そちらのほうが客観的に尋問を見ていた可能性もありますが、私の簡単な感想をここで考えておきたいと思います。
ビデオによる反対尋問(1)_1344
さて、今までデポジションという裁判上の手続の一部はビデオで行ったことは何度かあるのですが、12人の陪審(さらに、今回裁判所にお願いして2人から4人に増やしていただいたバックアップの方々を含めると16人)のメンバーが全員ビデオで出廷する状況で、私もビデオで敵対証人に対して反対尋問をすることになりました。
自分のオフィスの自分がいつも座っている席から反対尋問をするというのも座りが悪いのですが、一方では便利でもありました。
まず、尋問を終えて、なにかモヤモヤしているのは、実際に陪審を前にして尋問をしているわけではないので、どのようなところを気にしているのかなどの反応が直接見られないからです。
こちらとしてもメリハリをつけたいのですが、尋問中にチラチラ陪審12人を見ながらできるわけではなく、最近の日本語では当たり前のような言い回しになりましたが「空気が読めない」とでもいいましょうか、同じ空間にいないのでどのような空気なのかがまったくわからないのです。
これは本当に困りました。
2日間に渡って反対尋問をしたのですが、二日目は空気のことは、一旦横においておき、もう証人だけに注力して、質問を重ねるようにしました。
もう陪審の存在というのを気にしてはいられない感じでした。
一般的に、一対一のビデオ会話というのは問題ないと思いますが、画面に総計20人も映っていると、全員の方向性とか、どのような空気になっているのかというのは、かなり知ることは難しいものであると感じました。
結論としてはできれば陪審裁判では直接法廷でやるのがやはり空気を共有できるので良いのではないかと感じました。
陪審の方は20代から80歳までの様々なバックグラウンドの方々がいます。
年代によっても感じ方が違うのでしょうか。
そのうち仮想空間での裁判などになるのかもしれませんね。
反対尋問というのは、法曹の方々であればよくご存知でしょうが、裁判においてはクライマックスであります。
とくに最重要な証人に対する反対尋問は事件の帰趨を左右する場合も多くあります。
たとえば、今回私が関わっている事件は、原告側弁護士が、原告本人を呼んで質問をします。
これを主尋問と言います。
主尋問は簡単です。
弁護士も本人も同じベクトルですから、十分に協議して裁判になれば、掛け合いをしていけばよいのです。
その掛け合いの直後に反対尋問となります。
私は被告側企業を代理していますので、原告にとっては敵そのものです。
被告を代理している私から質問を受けるのは敵から質問を受けているわけで、かなり注意してきますよね。
場合によっては敵対心をむき出しにしている場合もあるわけです。
そこが難しいところなのです。
また、主尋問において出てきた内容を叩きたいので、反射的に聞く内容を調整していかなければなりません。
私はこのような反射的な対応をするのにあるシステムを昔から導入していて、今回も若い弁護士たちにその方法で対応してもらいました。
色々、デジタルなものを駆使しましたが、二日目は結局今まで私がやってきた紙の方式にして、かなりしっくり尋問をすることができました。
変な話ですが、尋問のやり取りはビデオでしたが、やり方は今まで通りの紙の方法が良い感じがしました。
ビデオ越しなので、敵対する証人を崩すのは大変かな、と当初は思っていました。
私はこの原告自身が嘘をついていると思っていましたので、うまく引っ掛けていきました。
無事に?嘘の証言をいくつか引き出せました。
まだまだ裁判は続きますが、今のところ成功していると思います。
この敵対する証人に対峙することについては、ビデオであろうとも実際であろうとも、あまり変わらないのではないかと思いました。
ビデオであっても、うまくやれば証言は引き出せました。
もちろん、経験もいるでしょうし、テクニックもいるのでしょう。
この辺は実際に見ていた若い法曹の人たちにどこかで書いてもらえばよいでしょう。
とにかく、初ビデオ反対尋問はうまくいったと思いますが、色々考えさせられました。
20年前では考えられない変化が法曹界にも起こっているのでしょうね。
雨が多い一週間です。
体調に注意しつつまた一週間がんばっていきましょうね。
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