法律ノート 第1306回 弁護士 鈴木淳司
March 20, 2022
先週は、遠方から友来たるや、という感じで友人や顧問先の方々が続々とサンフランシスコを訪れました。
そして、久しぶりに事務所の会議室を会議目的に使いました。
通常は食堂化していたので、なんだか、新鮮でした。
夜呑みに出るのも久しぶりでしたが、一緒にいった人は2年ぶりの外での食事だ、なんて言っていましたっけ。
オンライン飲み会とかあるみたいですが、やはり直接会って酒飲んで笑ったりすることは人間としては大事なことですよね。
読者の方々とも、どこかで呑みにいけるといいですね。
アメリカ コロナ禍の民事事件_1306
さて、今回ですが、また一回皆さんからいただいている質問にお答えするのを一回休ませていただき、今私が考えてしまっている内容について皆さんにも考えていただきたいと思うのです。
サンフランシスコ・ベイエリアの裁判所も特に刑事事件については稼働が再開され、私もいくつか実際にすでに出廷しています。
マスクをつけて出廷しているので、場合によってはよく裁判官の言っていることが聞き取れなかったり、私の言っていることが聞いてもらえなかったり、といったことがありますが、やはり法廷に直接行くとなんだか、「戻ってきたなぁ」という思いになります。
私も、「出社」している感を味わえるのです。
問題は民事事件です。
刑事事件は、罰を課すことを検察官が求めることが前提の手続で、政府を相手に被告人は闘うことになります。
このような強大な権力対個人の構図があるので、憲法、刑事訴訟法などで迅速に裁判を受ける権利というのが決められています。
ですので、裁判所としても優先して刑事事件を処理しています。
ところが、民事事件というのは、ざっくり言うと、結局「金払え」、「○○するな」、「家族関係を決めてくれ」、「権利義務を確認してくれ」という内容になります。
そうすると、一部の家族関係事件を除いては、お金などの話であって、人を拘束するということにはなりません。
こういう背景があって、裁判所も二の次的な考えをしているのです。
私の担当している雇用関係の訴訟も民事事件ですが、2022年4月中旬にトライアルが始まるということになっています。
私は被告企業の担当で、訴えられている側です。
なので、望んで訴訟をしているわけではありません。
すでに一度コロナで延期されているので、はやくトライアルをやりたいのですが、民事事件がちゃんと再開されておらず、裁判所に電話をしても、留守番電話になって、メールで連絡しろ、的なことを録音で言われるだけです。
メールで連絡しても、来るか来ないか、という感じで、全然以前のように機能していないのです。
この裁判でも異議申立のときにビデオで話している程度で、直接裁判所でなにかすることもなかったのです。
民事事件というのは、実は法廷でなにかやることはもともと少ないのです。
ITが発達しているので、ほとんどの手続きは裁判所内でやるというよりは、書類のやり取りで完結します。
ですので、陪審裁判(トライアル)というのが、民事事件ではある意味裁判所内で行う最大かつ重要なイベントであります。
なので、弁護士をやっている以上、参加しなくては損と思うのです。
書類ばかりいじっている弁護士もいると思いますが、結局AIに取って代わられると思います。
弁護士という職業に光が当たるのは陪審裁判の弁論だと思うのです。
なので、今回も私は楽しみにしていたのですが、なんだか、暗澹たる状況になってきました。
まだ、裁判所がオープンになっていないので、陪審裁判をビデオ会議システムで行うかもしれないというのです。
正直、このパンデミックの最中私は陪審裁判をしたことがありませんし、一緒に仕事をしている人たちも「したことないよ」ということですので、かなり限定的に行われていたと思います。
もちろん、はやく事件は解決したほうが良いのは被告企業にとっては良いことなのですが、はっきりいって私はビデオで陪審員に対して訴えかけることに不安を感じています。
もちろん、ビデオ会議が主流で、他の弁護士はあまり考えずにオンライントライアルをするのかもしれませんが、どうなのでしょうか。
私は、現在この陪審裁判の準備をしています。
陪審裁判のクライマックスは反対尋問です。
原告が自分の言いたいことを主尋問で言うのですが、醍醐味は、この高学歴男性が嘘を言っていることを晒せることを楽しみにしているのです。
私は反対尋問をするのにやはり、その証言をしている原告の目を直接見てやりたいのです。
また、オンラインだと、スクリーンの外で何をされているかわかりません。
はやく裁判はやりたいのですが、オンライン裁判というのは、ちょっと躊躇しています。
勝ちたい事件なので、なおさらです。
被告企業に、期日が先送りになっても、私はどうしても生の反対尋問をしたいと言っています。
理解はもらっているのですが、法廷弁護士としては辛いところであります。
コロナの影響はまだまだ続いています。
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