デポジション-deposition-米民事訴訟(4)_1296

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1296回 弁護士 鈴木淳司
January 10, 2022

 これだけオミクロン株で騒いでいるのですから、ワクチンとリスクの相関性をもう少し客観的な統計で示せないものでしょうか。
アメリカでは、話す人皆、「ブースターも打ったから大丈夫」というノリで話をします。
日本やオーストラリアのような警戒感が希薄であります。
一方でアメリカでも「あのひとはワクチン拒否の人で入院している」という話も聞けば、「ワクチン二回接種していても呼吸器をつけて長らく入院している」という人もいるそうです。
マスコミでは天気予報のように、今日は何人罹患者が出た、という数字だけが語られますが、その数字を取り上げて議論しても、不安を煽るだけですよね。
たとえば、インフルエンザと比べてワクチン接種の効果はどのくらいあるのか、といった信頼できる情報はないのでしょうか。
年始からもううんざりしますね。

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 さて、すでに3回にわたって考えてきた「日本の企業に勤める者です。勤めている会社がアメリカで関わった民事事件で、このたびカリフォルニア州の裁判所の命令でデポジションという手続きで話をすることになりました。通訳の人はつくみたいなのですが、会社の弁護士に話を聞いても、自分に不利になるのかどうなのかよくわからず、個人的な責任を負うのではないかと危惧しています。個人としてどのような責任を負うのか不安です。会社のことでデポジションに出て、個人的な責任を負うとするとどのような事態が考えられるのでしょうか」という質問を今回も続けて考えていきましょう。

 前回、デポジションに呼ばれた人たちが、様々な質問をされるにあたり、どのようなことに気をつけたらよいのか考え始めました。

今回も代表的なポイントについて続けて考えていきましょう。

「記憶にない」が意味するところ

前回、「あまり記憶にない」という答え方もありえることを考えました。
繰り返しますが、デポジションというのは聞かれたその場で答えを言うわけですから、記憶になければ、その旨を言うしかありません。

しかし、後日事実審になってはっきり覚えていると証言すると、その人の記憶が信頼できるかどうかの問題になります。
「証人として大丈夫か」という印象を与えかねないのです。

また、企業で一番聞かれていることに知見がある人として呼ばれた場合、通常、企業内にある書類を精査してからデポジションに出ますので、「覚えていない」とか「記憶にない」ということになると、企業そのものが「記憶にない」ことになってしまいます。
そうすると、その証言について、証言している人ではなく企業そのものの責任になります。
ある意味今回考えている責任問題に関して、企業を背負っているということで、責任はある意味大きくなるのです。

一貫した主張が重要

 重要なのは、企業に存在する情報を法律家のアドバイスに基づいて(守秘義務の関係がある)精査したうえで、デポジションでも、その後行われる可能性のある事実審においても、一貫した陳述、証言ができるようにすることが、責任問題を最小限度にする方策であります。

 「覚えていない」、「記憶にない」と証言したからといって、すぐに責任問題になるわけではありません。

一方で、虚偽の陳述はよくありません。
記憶が曖昧なのにいわゆる「盛った」形で陳述したとしましょう。
あとで、その「盛った」内容が虚偽で誇張である、すなわち虚偽であったとした場合、陳述した人の信用性に傷がつきます。
そうすると、その人の言っていることは一般的に信用できないのだな、と言われてしまう可能性があり、事件に影響する可能性があるのです。

個人の責任になる場面

個人的に責任問題になるのは、デポジションや事実審において、明らかに虚偽や誇張があったことが明るみになった場合です。

相手方の弁護士の申立や裁判所の判断で、偽証罪に問われるリスクがあります。

偽証罪というのは、真実を述べると宣誓していることに反することです。
デポジションでも事実審でも、必ずこの約束をしてから話すことになるのです。

真実を述べるということについて約束したのに、それを反故にしたという責任を咎められるのです。

ですので、最重要なのは、虚偽や誇張、知っているのに知らないと言ったり、黙っていたりすることが責任問題につながるということなのですね。

 デポジションでこの責任問題を回避する方法はいくつかあります。

ノウハウでもあるので、一つだけご紹介しておくと、たとえば何か質問をされて、そのときに記憶していることがある程度曖昧な場合には、「私が記憶する限りでは」、とか「私が現在覚えている範囲では」といった、限定的にするフレーズを回答する前に入れることです。

また、確定的に言わずに、ある程度大きな範囲を取り込む答え方をするのが良いと思います。

たとえば、色についてデポジションで聞かれたとしましょう。
単に「赤」と答えるよりは、「私が現在覚えている範囲では、赤っぽい色、だと思います」と陳述すれば、実際えんじ色であっても、あとで言い訳が聞きますよね。

このような責任回避方法については、具体的な事件で弁護士と相談すると良いヒントがもらえると思います。

とにかく、責任問題が発生するとすれば、かなり明らかな虚偽や誇張があった場合です。とは言え、回答の方法に気をつけながら、念入りに準備する必要があると思います。

また次回から新しくいただいている質問を考えていきましょう。

冬なので外に出る機会が減りますが、太陽を浴びることも忘れずにまた一週間がんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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