デポジション-deposition-米民事訴訟(1)_1291

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1291回 弁護士 鈴木淳司
November 30, 2021

 アメリカにいる読者の皆さんはサンクスギビングの週末いかがお過ごしなりましたか。
日本ではまったく関係ありませんが、この時を境に年内アメリカは、まったりムードになります。
最終日の日曜日に空港に行く用事があったのですが、人でごった返していてびっくりしました。車も普段より多かったです。
サンフランシスコを含め都市部では、路面店舗を狙った集団強盗が多く発生しているようで、コロナの抑圧がアメリカでは緩和されてきたものの、人への抑圧が負の方向に働いている週末でもありました。
私は3度目のコロナワクチン接種で結構ぐったりしていましたが、皆さんは平穏なホリデーを過ごされたでしょうか。
コロナの変異株も出てきているようで、まだまだ気は緩められない状況ですね。

デポジション-deposition-米民事訴訟(1)_1291

 さて、今回からまた新しく頂いている質問を考えていきましょう。

頂いている質問をまとめると「日本の企業に勤める者です。勤めている会社がアメリカで関わった民事事件で、このたびカリフォルニア州の裁判所の命令でデポジションという手続きで話をすることになりました。通訳の人はつくみたいなのですが、会社の弁護士に話を聞いても、自分に不利になるのかどうなのかよくわからず、個人的な責任を負うのではないかと危惧しています。個人としてどのような責任を負うのか不安です。会社のことでデポジションに出て、個人的な責任を負うとするとどのような事態が考えられるのでしょうか」という質問です。

デポジション?

 「デポジション(deposition)」という言葉は一般の方には良くわからないアメリカの法律用語だと思います。

わたしも日本の弁護士が読む月刊誌で書いたこともありますが、日本の弁護士でも良くアメリカの制度はわからない内容だと思います。
ピンとこないかもしれませんが、今回の質問を使わせていただいて、デポジションというものはどういうものか考えていきましょう。

 デポジションというのは、私のように訴訟に長く関わっていると当たり前なのですが、アメリカの民事訴訟では普通に出てくるコンセプトです。
弁護士をしてきて、色々良くも悪くも思い出になる機会でもあります。

デポジションを日本語にすると「陳述録取」と日本の弁護士先生や民事訴訟法学者の方々は訳されます。
裁判の過程で、質問に答えるという場面です。

訴訟の証言(Testimony)とは違う

本当の裁判になった場合の証言(Testimony)とは色合いが違うのですが、よく裁判所で証人が証人席に座って、弁護士が質問をしていく場面は皆さんご覧になったことがあると思います。
そのように質問に答えるような感じではあると思います。

つまり、ライブで質問が出て、その質問に答えるセッションをデポジションと呼ぶのです。
今回質問されている方もなんらかの訴訟で「答える」ことになったのだと思います。

 デポジションは、相手の弁護士や、場合によっては自分の弁護士が質問をして、それに答えるということが目的です。
そして、その答えは速記する人によって記録されていきます。

ですので、答えるとしても気をつけなくてはいけないように思えますし、実際に気をつけなくてはいけない場面もありますが、要するに自分が記憶していることを言う作業がデポジションといいます。

今回質問されている方も所属している会社の事件でデポジションをするということですが、自分の保身もあると思います。
どのような事件かは訴状などを具体的に見ているわけではないですが、できる限り私の経験に基づいて、注意点を考えていきたいと思います。

訴訟の方向性を整理する

デポジションというのは、大きく見て、アメリカで民事訴訟のバトルが行われている間に敵同士お互いに紳士協定で、手持ちにある情報を晒したうえでどう影響するのかを本戦前の予選で占う感じの情報開示手続の一環です。

デポジションを理解して、どのように対処していくべきか、このアメリカに特有の情報開示手続一般の位置づけを知ることが第一段階となります。
隅々まで考えると、論文になってしまいますし、一般的ではないので、次回以降、事例を使いながら、どういうものか考えていきたいと思います。

デポジションはアメリカの訴訟に特有

 長くなってしまいましたが、皆さんに次回以降の内容を理解していただくために今回整理していただきたい事項は、デポジションというのは、アメリカ特有の手続きであって、特に民事訴訟ではお互いに持っている情報を相手方に開示する一環だということです。

そしてデポジションは、口頭で質問されたことについて、回答をするという手順で行われていく手続きであるということです。

 難しいことを考えるので、今回はここまでにして、また次回「デポジション」について考えていきたいと思います。
論点は多岐に渡りますが、私が経験したことも含めて、次回以降も皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

 どんどん変化して強くなっていくウイルスが出てきていますが、我々も抗体を高めながら、生活に注意してまた一週間がんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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