アメリカ_少額裁判制度Small Claims(1)_1289

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1289回 弁護士 鈴木淳司
November 14, 2021

先週、私が8年ほど手掛けてきた大型事件が解決に至りました。
まだ、詳細については言えない段階ですが、25年ほど弁護士をやってきて、ある意味金字塔となった事件であります。
自分を信じ、自分の弁護する顧客を信じ、淡々とやってきたことで私にかかわる全員に満足する結果が出ました。
いつかは本にでもしたいところです。
しかし、まあ、色々な弁護士が登場し、ほとんどは金目当ての人間を見てきて切ない感情を抱きました。
一方、私は親から「金についていく人間になるな、金は人についてくるものだ」と教わってきて、今でもそう思っていきています。
そして、この大型事件で、私がしんがり役を担って、民事、刑事と収束させました。
お金では買えない弁護士冥利を味わっています。皆さんは仕事での充実感を味わっていらっしゃいますか。

アメリカ_少額裁判制度Small Claimsについて(1)_1289

さて、今回からまた皆さんと新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

いただいている質問をまとめてみましょう。
「二年ほど前に、私の乗っていた中古車を友人に売りました。タイトル(権利)も、その友人に売買した際に移転しました。友人は、すぐに全額払えなかったので、2年間の期限を決めて、毎月分割で売買代金を払ってくれていました。しかし、コロナ禍で、支払いが滞りまだ数千ドル支払いを受けていません。このような場合には、小額裁判制度を利用して支払いを受けることができるのでしょうか」という質問です。

コロナの影響

コロナで社会も根本的に変わってしまったこともありますが、コロナが色々なところで「理由付け」に使われてしまっていることも事実であります。

もちろん、コロナは、経済や社会の活動を停止してしまい、様々な軋轢を生んできました。
コロナ禍で、マイナスな打撃を受けたビジネスも少なくありません。
様々な角度で行政も助け船を出してきましたが、それでも色々な変化が生じて、コロナ禍前の生活には戻らないように思います。

今回質問されている方についても、コロナ禍を理由に受けられるべき支払いを受けられない、という憂き目に遭っているようです。

もちろん、支払をするべき人の状況も考えなくてはいけないですが、どのようにして支払いを受けられるのか少額裁判制度について考えていきましょう。

少額裁判制度-カリフォルニア州

まず、カリフォルニア州における少額裁判制度一般について考えておきましょう。

少額裁判はSmall Claimsと呼ばれています。

少額裁判については法律で特別なルールが決められています。

第一に、訴える内容に関してです。

たとえば、認知や離婚など、家族法に関する事件については少額裁判は使えません。
少額裁判は、「金」に換算できる物事についてのみ有効です。

第二に、「金」に換算できたとしても、個人として訴訟するなら1万ドル、法人として訴訟する場合には5千ドルまで請求することができます。
また、一年間で二回以上請求する場合の上限も決まっています。
何度も少額裁判を利用する濫用的な場合を牽制しているわけです。

今回質問されている方の額が1万ドル以下であれば、十分に少額裁判を利用することができると思われます。

どこの裁判所に訴えるか-裁判管轄

次に第三点目ですが、訴訟をするとしても、どこの裁判所に提起するかが問題となります。

無難なのは、相手方の所在する場所を選択することです。

相手方が住んでいる場所を管轄する裁判所に訴えを提起するのが一番てっとり早いです。

もちろん、相手方が住んでいないところでの訴訟も考えられます。
たとえば、事故に起因する損害賠償などは、その事故が発生した場所などが考えられますが、後日色々争われることを避けるためには、相手方が住んでいる場所が確実だと思います。

ここまで考慮したあとで、さて、裁判を提起することになりますが、一般の人にしてみたら、裁判所などというと、かなり「お硬い」場所でありますし、馴染みもないと思います。

しかし、税金から払われている行政機関、すなわち役所とそれほど変わらないもので、システムや手続きさえ知っていれば別に怯むことはまったくありません。
具体的にどのような手続きをやっていくのか次回以降考えていきましょうか。

アメリカでは夏時間が終わり、本格的な冬到来という感じでしょうか。
今年は雪も多くなるとか。
コロナは収束ムードですが、体調に気をつけてまた一週間がんばっていきましょう。
私はインフルエンザの予防接種も受けましたが、目にみえないウイルスには気をつけたいものです。

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作成者: jinkencom

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