法律ノート 第989回 弁護士 鈴木淳司
Jan. 11, 2016
今年のスーパーボールはサンフランシスコで行われるのですが、私の所属する事務所の周りはお祭り騒ぎになるという連絡がビルから来ました。どうも情報を見るとビルの周りがかなり交通規制されたり、店が出たりという状況になりそうです。業務に影響がでないと良いのですが、とんだトバッチリを食いそうです。サンフランシスコの49ersも不本意な一年でしたから、地元の人達は心底盛り上がっていないかもしれませんね。
契約書の作成、アメリカでの一般的な対応は?(1)_989
さて、今回から新しく皆さんからいただいた質問を考えていきたいと思います。いただいている質問をまとめると「現地法人の者です。日本の法務部から赴任してきたばかりです。現地法人では法務部というのはないので、法務担当として働いています。前任者は、様々な市販の契約作成ソフトで契約書をつくって使っていたようです。前任者に聞いたところ、法律家の目を通さなくても、今まで問題はなかった、ということでした。このようなやり方でも良いのでしょうか。また、アメリカでは一般的にどのように企業は対応しているのかを教えていただけないでしょうか」というものです。
内部に法曹がいる企業と外部の弁護士に委託する企業
企業の規模によって、内部に法曹がいる企業と、外部の弁護士に委託する企業と大きく分けて2つあると思います。どちらも良い悪い点があるでしょうが、内部で法曹がいる場合には、契約書の作成からレビューを頼めるので楽ですし安心感もあります。また、社内法曹であれば、外部の法曹とはちがって、その企業のみの仕事をしているので、仕事も早いしバックグラウンドの把握もはやいかもしれませんね。
一方で、外部の法曹に委託をする場合、外部の法曹は企業単位ではなく、いろいろな案件を見ていますので、ある意味様々な違った事例からの指摘や考え方を提供してくれるかもしれませんし、企業に迎合しない客観的な意見を聞けるかもしれませんよね。
作成プログラムでつくる契約書もそれほど悪くない
さて、今回質問されている方は、後者の例で社内法曹がいないという企業のようです。こういった企業は少なくありません。いきなり、何も法律実務の知識のない人が契約書を作れといわれても、なかなか作成することはできません。それなりに、法律の考え方が基礎にありますし、独特の言い回しなども存在していますからね。
そこで、今回質問されている方が憂慮されているのは、いわゆる市販の契約書作成プログラムの使用です。私は職業柄、このような作成プログラムを使ったことがないですが、プログラムを使った契約書というのをいくつも見たことがあります。
私の意見を言えば、このようなプログラムでつくった契約書もそんなに悪くはないという印象です。一応、必要最低の内容は盛り込まれていますし、用語もちゃんと使われています。おかしいな、と思うところは文法で、his, her, itがちゃんと使われていなかったり、文中ででてくる定義がしっかり定義されていないなどという細かい点がまず目につきます。大局的には「悪くない」と思います。
どうしても、コストをセーブしたい場合、比較的契約の対象の価格が安いとか、内容が軽微であるという場合などには、プログラムの使用はまったく問題ないと思います。
また、同じように、別に作成した契約書を流用することも少なく無いと思います。コンピュータがあれば、コピペをして、契約書を継ぎ接ぎして作成することも可能ですね。これも契約書作成プログラムを使った時のように、あまり激しく内容を変えなければ、大局的に見て「悪くない」とは思います。
契約書の内容に、意見を言い合えればさらに良い
まず、今回質問されている方のように、法務経験者が社内に少ないと、自分が作成した契約書をなかなか他の人にみてもらうということができません。このフィルターがないことが若干不安になります。
弁護士にしても、一人で経営している法律事務所だと、他の弁護士の意見をもらいにくいため、考えが曲がってしまうということもありえるわけですから、社内にそのような意見を言ってくれる人がいなければ、なおさらですよね。
ですから、社内や、今回質問されている方は日本の本社に法務関係者がいれば、内容を共有して意見を言い合えれば、「さらに良い」ということがいえるでしょうか。
次回続けて考えていきましょう。雨が多いベイエリアですが、皆さんのお住まいの地域の天気はいかがでしょうか。暖かいところもあれば、風が強いところもあるようです。春を楽しみにしながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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