法律ノート 第1116回 弁護士 鈴木淳司
June 30, 2018
サッカーはアメリカでは盛り上がっていませんが、日本はお祭りなのでしょうか。私はテレビをあまり見ないのですが、サッカーの中継はリプレイですが、ちょっと見ています。あまり知らないスポーツですが、ハンサムでかっこ良い選手が多いのですね。
英語の中継で面白いのが、中継している人の興奮度です。一人は冷静なのにもうひとりは長々「ゴール」と叫ぶ声を聞いていると温度差になぜか笑ってしまいます。スポーツはいいですね。
ゴルフ場での事故。アメリカの法的処理は?(3) _1116
さて、前二回考えてきた「先日、同僚に誘われてゴルフのコースにはじめていきました。日本ではゴルフをしなかったのですが、アメリカでは職場の近くにゴルフ場もあり、練習を重ねてきました。プレー中に隣のホールからボールが飛んできて、その球にあたりました。なんバウンドかしていたようで、幸い足のアザになる程度で済みましたが、謝られるだけで終わってしまいました。私の英語が達者でないこともあるのですが、もっと深刻な怪我となっていたら、どうなっていたのでしょうか。こういった場合には怪我にいついて、ボールを打った人になにか法的に言えないのでしょうか。」という質問を続けて考えていきましょう。
危険の引受け(Assumption of Risk)とは
前回は危険の引受け(Assumption of Risk)というコンセプトを考え始めました。危険なことをする場合、その潜在的なリスクはわかっているよね、ということです。
余談ですが、危険負担となぜか訳す人もいるようですが、間違いです。ちょっと法律的になるのですが、危険負担というのは契約法上のコンセプトでRisk of Lossと言います。これは、今回の質問にあるような事例を不法行為(Tort)と呼ぶのですが、その不法行為法の範囲内で発生するのが原則です。
前回まで、日本では今回のような事例には「過失」があるのかどうかが議論されることは理解できたと思います。アメリカでも、このような事例では日本と同じように「過失」があるかどうかが議論されるのですが、その枠組で議論されるとしても、主なポイントに「危険の引受け」がある事例なのか、議論されます。危険の引受けがあったと判断された場合には、かりにゴルフボールを打った人に過失があったとしても、責任を負わないことになるのです。これがアメリカの根本的な考え方なのです。
では、どのような場合に危険を引き受けていると言えるのかというと、ここが法律の面倒なところで、一律の基準というのはアメリカではなく、事例ごとに判断されて、判例を積み重ねてある程度の基準が作られているのです。ですので、一概に危険な行為をしたからといって、危険を引き受けたとはいえず、事例ごとに判断がされなければなりません。こういった判断の補助をするのが弁護士の役目でもあるわけです。
ゴルファーは、ボールに当たる危険も引き受けているとみなす
さて、今回質問があるようなゴルフ場のケースも、州によって違いがあると思いますが、ゴルフをしている人は、ボールが飛んでくるという危険を一般的に負担していると考えられています。ですので、ゴルフ場でボールがあたっても、一般的にボールを打った人に対して損害を請求できないということになります。
もちろん、故意にボールを人に当てたり、通常のゴルフとは言えないような状況で怪我が発生した場合などは、加害者に対して責任を追及することはできますが、ゴルフのプレーの範囲内でボールがあたったら、ゴルフというスポーツに存在する危険であり、ゴルフをしている以上、その危険をプレーヤーは引き受けているとみなされるのです。ですので、今回の事例の場合は、大怪我に至らないで本当によかったのですが、ボールにあたるという危険は引き受けていたと考えられます。これがアメリカの考え方なのです。
裏を返せば、変な球を打ったら、必ず責任として、日本人は「ファー」と叫ぶ、Foreという注意喚起は必ずプレーヤーとしては他のプレーヤーのために不可欠なマナーということになりますね。
アメリカでは損害賠償請求できない可能性が高い
このように、アメリカでは危険の引受けという概念が広く受け入れられているので、今回の質問者の怪我については、残念ながら球を打った人にも、ゴルフ場にも損害を請求出来ない可能性が高いと思います。次回新たな質問を考えていきたいと思います。
天気の良い日が続きますね。カリフォルニアはかなり乾燥しているので、火事には注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。とは言っても来週は独立記念日ですから、少し一年の折返し地点なので、ガス抜きもしながら地道にいきましょう。
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