トランプ大統領の入国禁止政策(1)_1117
July 9, 2018
2018年6月26日に、アメリカ連邦裁判所で判決があり、かなりニュースになっていたトランプ政権によるアメリカ入国禁止令が結論としては支持されました。
もともと構成員のほとんどが移民の国で大幅な入国禁止令が出されたということで、議論が沸騰して、未だとどまるところを知りません。判決を受けて各地でデモも起こっています。
判決の内容をご存知ない方も多いと思いますが、日本人、そして日系人の強制収容についても言及されている判例なので、一弁護士の一考として、皆さんからの質問にお答えするのを休ませていただき、考えてみたいと思いました。
大統領令-Executive Order 13780-とその後の経緯
さて、今回連邦最高裁判所まで上り詰めた問題について少しおさらいしておきましょう。
トランプ大統領は、一定の国からのアメリカ入国を厳しく制限する大統領令を二度出しました。もちろん二度とも、かなりの議論が沸騰しましたが、今回の大統領令は直近の二度目の大統領令(Executive Order 13780)についてです。
この二度目の大統領令では、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、およびイエメンからのアメリカ入国を原則禁止し、例外的に難民申請などは、数は半減するが、考慮する、という規定がなされました。
この入国禁止令に対し、多くのアメリカ国民が反発し、訴訟提起に至りました。
主な訴訟では、ハワイ州、メリーランド州の連邦地方裁判所の判断により、大統領令の執行停止となりました。政権側は不服として控訴、控訴審も地裁判決を支持し、最高裁判所の判断に委ねられました。
過去の入国禁止事例
歴史を遡ってみると、実は、特定の国に対して、原則入国禁止をする政権はアメリカにもありました。たとえば、キューバに対する制裁として、キューバ人の入国を制限した過去があります。
このような例にあるように、国は政治的に、特定の国からの入国を制限することは、アメリカだけでなく、各国でもなされているという事実はあるわけです。
ですので、安易に、「国を一括りにして制限をするのはよくない」という批判は妥当ではないわけです。
大統領令の政治的背景
しかし、今回このような論争になっているのは、トランプ大統領の大統領選挙中および、就任直後の発言に端緒を求められるのかもしれません。
すなわち、トランプ大統領は、「テロは許さない」というだけではなく、「イスラム信者をアメリカにいれるな」と言った発言を繰り返していて、政策の目玉の一つにしました。そして、今回の大統領令が出たわけです。
人の信じる宗教を軸にして打ち出したスローガンに沿った内容の大統領令が出た、ということで、宗教に基づく差別的な大統領であるのではないか、という議論が沸騰し、訴訟に至ったわけです。
連邦最高裁判所の議論
最高裁判所の議論も割れました。
保守派と呼ばれる4人対リベラルの4人、それにどっちにも転ぶ1人という構図で、結局5対4で大統領令の支持に至りました。この判決のあと、「どっちにも転ぶ1人」が退官を発表しました。
アメリカの憲法の仕組みとして、大統領が最高裁判官の指名権を持っていて、議会の承認が必要となりますが、トランプ大統領が代替えの保守派を据えるということは間違いありません。そうすると、今後は議論も割れずに5対4の構図が続くことになるのではないかということが、今論点になっています。
合憲とした判事の判断理由
さて、今回問題となった大統領令について、保守派の判事5名はどのような理由で「問題ない」としたのか、考えてみましょう。
まず、大統領が今回の大統領令のように、国を指定して入国を禁止できるのかを論じています。この点については、上記でも触れましたが、「問題はない」という結論になります。アメリカ憲法では、移民法については議会が法律を制定できるとして、現存する移民法には(8 U.S.C Section 1182(f))、大統領が一定の範囲を定めた外国人がアメリカに入国することによって、危害が発生すると判断した場合には、入国を禁止できる、と規定されています。細かい議論も最高裁判所でなされていますが、基本的に、大統領は外国人の入国に関して広汎な裁量をもっている、ということになろうかと思います。日本でもマクリーン事件という判例がありますが、類似した解析方法です。
次に、今回の制限は適法かどうか、という点が問題になります。ここから次回続けていきたいと思います。
夏ですね。ベイエリアも暑いですが、他の地域もかなり暑いようです。夏バテしないように気をつけてまた一週間がんばっていきましょう。日本では大雨の災害もあり心配ですし、暑さも尋常じゃないようです。影響されている方々の無事を祈るばかりです。
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