過去の飲酒運転と有罪。犯罪歴抹消はできる?(1)_1060

空港これからアメリカへ

法律ノート 第1060回 弁護士 鈴木淳司
June 10, 2017

なんだか、最近刺し身などの生モノに対してあまり胃腸が機能してくれなくなってきたような気がします。もちろん、刺し身も寿司も好きなのですが、食事のときに酒ばかり飲んでいて、胃が弱っているのでしょうか。全体的に生きている過程で、体調が変わってきているのかもしれません。皆さんも生きているとそういった体調の変化はあるものでしょうか。皆さんは美味しいものを食べられていらっしゃいますか。

過去の飲酒運転と有罪。犯罪歴抹消はできる?(1)_1060

さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
いただいている質問は、まとめると「以前(10年ほど前)、学生のとき、飲酒運転で有罪の判決をカリフォルニア州で受けました。当時、罰金を支払い、指定された講習などすべて裁判所から言い渡されたことは終了しました。その後、警察にかかわるような問題はまったくありません。現在、トランプ政権になって移民に厳しくなってきたということを聞いています。私は現在就労ビザでアメリカに滞在しているのですが、以前、飲酒運転があったということで、強制送還などになるのではないかと不安になっています。色々検索すると、犯罪歴を抹消する手続きがあるということがみつかりました。この抹消手続きというものはどのようなものなのか、やはり私はやっておくべきなのか、教えていただけないでしょうか」というものです。

移民政策の厳格化、実は以前から

トランプ政権になって、まず不法移民について厳しい対応を行っていくということを言明していますが、そもそもオバマ政権のもとでも、不法移民はそれなりに厳しく対応されていました。
スポットライトがあたっていた論点としては、トランプ政権は、不法移民の子供がアメリカで産まれていた(ということはアメリカ国籍を持っている)としても、不法移民を強制送還するという態度を取ったことです。オバマ政権は、子供がアメリカ国籍である場合、不法移民の強制送還には否定的でした。
このトランプ政権の不法移民の強制送還の姿勢がまずスポットライトにあたりましたが、次は、アメリカへの入国審査の厳格化にスポットライトがあたっています。
中東6カ国に対する厳しい行政の対処は最近ニュースにもなっていましたし、私が書いている「移民法ブログ」(「3/16発効の大統領令、日本人への影響」http://jinken.com/momsusa/archives/3546)でも取り上げました。
今後は、犯罪歴がある外国人に対しても審査が厳しくなる傾向は続くとは思われます。こういった背景から、今回の質問につながってきているのだと思います。

犯罪歴の抹消ーExpungement

さて、今回質問をいただいている「犯罪歴の抹消」ですが、法律用語ではExpungement(エクスパンジメント) と呼ばれています。
あまり、一般的には聞き慣れない単語ですね。今回はこのエクスパンジメントという手続きについて考えていきたいと思います。法律用語では「手続」といいますが、ここでは手続きという一般的な書き方をしていきます。

犯罪歴の集約と保管・共有

従来、刑事事件で、有罪を認めると、犯罪歴については、その有罪を認めた裁判所に保管されます。アメリカでは、どこかの官庁が、前科について一括して保管しているわけではなかったのです。
もともと、アメリカには、裁判所といっても連邦裁判所もあり、州の裁判所もあります。州の裁判所でも多岐にわたっていますので、なかなか一つの機関で情報を整えることができませんでした。
同時多発テロ事件以降、連邦政府の主導により、前科の情報共有が様々な政府機関によって行われるようになりました。デジタル情報の共有が容易になってきた時期だったこととも重なります。

入国管理局も情報共有

現在では、アメリカの入国管理局も、各裁判所の前科の記録を共有しています。
したがって、移民関係においても、前科はビザの申請、再申請そして再入国時に避けることはできず、向かい会わなければなりません
したがって、10年前といっても、今回質問されている方のように前科がある場合には、慎重にならなければいけません。

上記を踏まえて、次回は、エクスパンジメントの内容および前科と移民法関係について考えていきたいと思います。

日本は梅雨の季節でしょうか。体調に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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作成者: jinkencom

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