法律ノート 第1056回 弁護士 鈴木淳司
May 14, 2017
日本はゴールデンウィークということもあり、仕事や勉強に区切りをつけて、ゆっくりされている方も多いのではないでしょうか。日本は祝日がかなり多い国ですね。カリフォルニアでも天気が良くなって来ました。
先週読んだ記事のなかに、シリコンバレーで酔っ払いが100キロ以上ある警備ロボットと戦いになって横転させたというニュースがありました。暖かくなってきて、屋外で酔っ払って問題となったようですが、もう人がロボットと戦うようなシナリオが出てきているということですね。考えさせられます。
トラストや遺言を作っておかないと、財産は政府に没収されるのですか?
さて、今回からまた新しくいただいている質問を皆さんと一緒に考えていきましょう。
前回まで考えてきた遺言執行者のトピックに似ているところもあります。
いただいた質問をまとめると「遺言やトラストを作っておかないと、最悪の場合財産を政府に没収されてしまうということを、トラストのセミナーで聞きました。これを聞いて、夫婦で話をして、何かしなければと思っています。万が一政府に財産を没収された場合、それを取り戻す手続などはあるのでしょうか?」という質問です。
今まで弁護士をしていると、何度もこのような質問に出会ってきたのですが、最近になってその原因がわかってきました。このような情報を得ている方たちはどうも、トラストのセミナーなどに参加してそこで情報をもらって来るようなのです。もちろん法律事務所などトラストを作って欲しいと思う側が主催するセミナーであれば、色々トラストや遺言を作るように誘導するでしょうね。そうであれば、政府に取られちゃうよ、的なことを言うのかもしれません。
ただ、そのようなセミナーは一種の情報として聞き流しておけば良く、具体的に相談をしながら何が良いのか確認することが重要だと思います。
財産没収はされませんー法定相続制度
まず、最初にクリアーにしておきますが、セミナーで弁護士が話してようが、誰が話してようが、遺言やトラストがなくても、財産を没収されると言うことはまずありません。
まず、遺言やトラストがあれば、皆さんがなくなったときに、その遺言やトラストに沿った内容で、相続財産が分配されていきます。そのためのツールですから当たり前です。
そして、遺言やトラストがない状態で亡くなる方たちもたくさんいますが、いきなり政府に財産が取られてしまう訳ではありません。法定相続(intestate)といって、法律で自分の血族を含む家族にどのように分配されるのか決まっているのです。
天涯孤独、いとこもはとこも、まったくいない、という方で、法律に照らして、まったく法定相続人が存在しないごく例外的な場合には州の財産に組み込まれる可能性はごくわずかにありますが、このような極端な例を除いて、いきなり政府に財産が取られるということはないのですね。
法定相続制度は日本でもアメリカでも存在する制度ですから、そこまでナーバスに政府に取られてしまうと考えなくても良いと思います。
法定相続制度ー死後は近親者に財産分与
法定相続制度は法律ノートでも何度か考えましたので、また皆さんの質問を待って考えていきますが、概略だけ考えておくと、まず遺言やトラストがなければ、配偶者および子が法定相続人となるのが一般的で、これらぼ近親者がいない場合には、血族を親等の近い方から法定相続人とするのがかなり共通した考え方です。
遺言やトラストは法定相続にプラスするもの
そうすると、一人っ子で親も親の兄弟も祖父母も子供もいないなどという限られた場合には、誰を相続人にするのかを、遺言やトラストなどで考えておかないとややっこしいことになるかもしれません。法定相続を利用することも別に少なくありませんから、遺言やトラストを作らなければならないという義務感はあまり切実に持つ必要はないと思います。
どちらかというと、法定相続で使われるような内容をそのまま遺言やトラストにするケースも少なくありません。
法定相続の問題点と遺言・トラストのメリット
じゃあ、なぜこのようなセミナーは遺言やトラストを勧めるかと言えば、それは自分たちの利益になるように誘導しているからなのですが、じゃあ、法定相続に任せておけばそれはそれで、いいではないか、と思われる方もいらっしゃると思います。
弁護士に関わるのも面倒だし、書類の作成も厄介だ、と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。まあ、それもごもっともなのですが、法定相続になったときの問題点を次回考えていきましょう。
これから、バーベキューにも良い気節ですね。
アウトドアを楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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