法律ノート 第1036回 弁護士 鈴木淳司
December 16, 2016
最近、ある交通事故の相談を受けたときに、日本ではドライブレコーダーという前方を常時録画するビデオカメラを設置することで、ずいぶん状況を把握するのが楽になったと感じました。
アメリカではダッシュ・カムなどとも呼ばれますが、過失を争うときにある程度の証拠にもできるのではないでしょうか。
他国では、ドライブレコーダーを設置すると、保険も割安になる制度があるようですが、アメリカでは、そのような割引料金は各社設定していないようですね。
事故の事実関係における紛争が少なくなることと、本体はあまり高くないので、今度私も設置してみようかと思っています。読者の皆さんはもう使われていらっしゃいますか?何か、使って良かったという例があれば、ぜひ、法律ノートにお便りくださいね。
銀行小切手で詐欺。対処方法は?(2)_1036
さて前回から、「振り込め詐欺のような状況に遭っています。友人からの紹介だったので信用したのですが、その友人も騙されていたようです。小切手が送られてきて、それを現金に換金し、郵送をして欲しいと言われその通りにしました。このような場合どこへ相談をすればいいか、または泣き寝入りになってしまうのでしょうか」という質問を考えはじめました。
前回はどのような形で小切手を使った詐欺が行われているのか、といった点を考えました。今回続けていきましょう。
キャッシャーズチェック、本物を見分けるには?
まず、前回の復習になりますが、銀行が支払責任を負う、いわゆるキャッシャーズチェックは、個人振出の小切手(パーソナルチェック)よりも一般的に信用が高いわけです。
よく、個人売買などでも、「キャッシャーズチェック・オンリー」と書かれているところもあります。今回の詐欺は、この信用された銀行振出小切手を悪用したものです。
では、かりにキャッシャーズチェックを受け取らなければならない状況になった場合、どのような注意をしなければならないでしょうか。
まず、銀行振出小切手は必ず、支払の責任を負う銀行の名称、住所、電話番号が書かれています。これらが実在するのか、実際に電話をするなりして確認するのが第一歩です。もちろん、これらの情報も完全にコピーしてきている可能性はあり、安心ではありません。
次に、キャッシャーズチェックを換金する場合、金融機関にその信頼ができるのか確認してもらうことも可能でしょう。注意したいのは、たとえ、チェックが口座にデポジットでき、残高が確認できたとしても、その後に、不渡小切手となる可能性は充分にあります。
したがって、銀行に調査をしてもらい、銀行が支払を確保できた時点で、はじめて用意された残高を引き出すべきです。この手の詐欺は、「はやく現金が欲しいので、小切手の換金を頼む」という筋が多いわけで、かりに残高確認ができていない状況であれば、待つように言うしかないと思います。
小切手以外の方法を用いる
また、これはインターネットが普及したことによる穴になる点ですが、信頼できる人や会社でなければ、銀行振出小切手でのやり取りはやめて、金融機関の送金、クレジットカード、など代替えの方法を使うことがベターです。
最近では、Paypalが、補償もついて安全ということを売りにしていますし、幅広く使われていますね。
小切手偽造は米財務局ページを参照
ちなみに、米国財務局(US Department of Treasury)は、小切手の偽造などの案件を逐一公表していますので、似たような状況に直面したときに、詐欺に気付きやすくなるかもしれません。
2016年の事例に関するリンクはhttps://occ.gov/news-issuances/alerts/2016/index-2016-alerts.html となります。
詐欺被害と対応方法
では、詐欺に遭ってしまったときに、どのような対応が可能になるでしょうか。
まず、弁護士に依頼したとしても、充分な対応ができない場合も多くあります。すなわち、小切手が他国や他州のものであったり、州を超えて取引があったりすると、裁判で対応するということは難しい面があります。また、詐欺をした人がどこに所在するのか、そもそも、誰なのか、という事実的な関係を調査するのも簡単ではないかもしれません。
とにかく、どのくらいの証拠があるのか、相手方となる詐欺をした人の情報などを含めて検討しなければ、なりませんし、実際に解決は難しいことが多いです。
政府系で、チェックの詐欺に遭った場合には、シークレットサービス金融犯罪課(U.S. Secret Service Financial Crimes Division)に被害を届けることができます。
リンクはhttp://www.secretservice.gov/investigation/ となります。
その他にも連邦の機関として、FBIやFTCといった機関に通報することは可能ですが、インターネット犯罪などに限られます。
とにかく、このような小切手の犯罪は、少額であることも多いですし、一方で多額な取引でも被害が出ています。
したがって、小切手で取引をするということは、現状においてかなりリスクが多い取引ということを理解されてください。
現代では、他の決算方法もふんだんにありますので、小切手の使用は面識がない場合、できるだけ消極的に考えるべきだと思います。
以上で、今回の質問をある程度全般的に考えましたが、他にも疑問点があれば、いつでも法律ノートに質問をいただければと思います。
もう師走になってしまいました。ホリデーシーズン真っ盛りになり、街がきらびやかになってきました。
空気の乾燥から身体を守りつつまた一週間がんばっていきましょうね。