前科があるとアメリカ再入国できない?(1)_1445

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1445回 弁護士 鈴木淳司
Nov 26, 2024

 最近ある私も個人的にかかわってアメリカに進出する会社のウェブサイトを構築していました。
昔は何万ドルも払っていたことですが、今では一年間で100ドル以下の維持費を払えばできてしまいます。
アメリカではすぐに「人任せ」という文化があります。
掃除、料理、等人にお金を払って任せてしまうということです。
私はどちらかというと禅の精神が好きです。
自分のことは自分でやる、ということです。
ですので、ウェブサイトも何年も前に勉強して自分で構築することにしたのです。
今でもその勉強したことが使えて、さらに簡単になっているので時代は変わりました。
またビジネスが動きだしたら皆さんにも報告しますね。

前科があるとアメリカ再入国できない?(1)_1445

 さて、今回からまた新しく皆さんからいただいている質問を考えていきたいと思います。

いただいている内容をまとめると「日本に在住しています。学生時代にアメリカに留学していたのですが、友人が最近日本に遊びに来ていました。会話のなかで、またアメリカに遊びに行くことになったのですが、実は学生時代アメリカで飲酒運転の罪で捕まり有罪歴があります。有罪歴があると、アメリカに再入国できないと思って今まで諦めていたのですが、最近になってインターネットで情報を検索すると、サイトによっては再度アメリカに入国することもできるとするものもありました。どういった場合、前科があるとアメリカに入れる(入れない)のか教えて下さい。」というものです。

 犯罪といっても、様々なものがあり、移民法だけ扱っている法曹だと刑事法についてよく理解がなされていない可能性がありますので、どのようなウェブサイトを参考にされているのかわかりませんが、今回質問されている方も、みなさんも注意して検討したほうが良いと思います。
場合によっては、移民法などの連邦法制に反する入国となり、事態が悪化する可能性があります。

前科のある日本人を含む外国人のアメリカへの再入国および入国拒否は、その人に紐づいた前科の性質、強制退去させられたかどうかの状況に基づいて、連邦法や行政規則でさまざまな制限が定められています。
(Bartonv. Barr, 590 U.S. 222 Fowlin v. Monica, 221 Fed. Appx.147)

今回の法律ノートで、すべての点を取り上げることは難しいので、一応概ねの基準として考えておいてください。

まず、複数の軽罪または重罪がある場合の再入国拒否が考えられます。

今回質問されている方は、たぶん飲酒運転1罪だけのようですので(もちろん書類を確認しなければわかりませんが)この再入国拒否には引っかからないかもしれません。

ここで、軽罪というのは、法律で、禁錮・懲役1年以下の法定刑が定められているものをいいます。

重罪とは、禁錮・懲役が一年以上の法定刑が定められているものをいいます。

過去に複数の軽罪または重罪がある場合には、アメリカに入国する申請をする前に、米国の司法長官に対して申請をするための事前許可を受けなければなりません。
この許可が与えられる可能性は低く、結論に至るまで時間がかかります。

今回質問されている方も、複数の軽罪または重罪の前科がある場合には、簡単にはアメリカにまた渡航できるということにはなりません。

日本でも、日本で罪を犯した外国人は、有罪を言い渡したうえで、強制送還をさせますが、もうこれらの人はほぼ日本に戻ってこられないということに事実上なっています。
同じような状況であるということですね。

また、これらの前科が麻薬または人身犯罪に関連する前科である場合には、再入国に関する司法長官の許可が必要ですが、許可はかなり難しくなります。
United States v. Andino, 148 Fed. Appx. 828 米国対フラガ・アライゴ事件、2001 U.S. App.LEXIS 31016。

また、これらの前科があるにもかかわらず、司法長官の事前の許可なくして、何らかの方法でアメリカに再入国した場合には、連邦法で最長10年の禁錮刑が科せられる可能性があります。

加重重罪の前科がある場合の再入国禁止:加重重罪で有罪判決を受けた場合上記の重罪に比べてかなりアメリカへの再入国が難しくなります。
(米国対キンタニラ・ベンチュラ事件、616 Fed. Appx. 189 米国対ペレス・ヒメネス事件、744 Fed. Appx.862参照)。

加重重罪というのは、重罪の類型です。

類型と言われてもなんのことかわからないと思いますので、ここで説明させてください。

たとえば、強盗というのは基本的に重罪なのですが、武器を使ったとか、人を傷害した、といった場合には、加重された強盗の罪が規定されているのです。

凶暴であったり、被害が拡大するような要素がある場合ですね。

加重重罪の前科がある場合には、もちろん司法長官の許可が必要になりますが、そもそも許可になることはかなり難しくなります。
また、このような個人が許可なく米国に再入国した場合、最長20年の禁固刑に問われる可能性があります。

ここから次回考えていきたいと思います。

ずいぶん寒い日がでてきました。
咳をする人も多いですので、みなさんも体調に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。



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作成者: jinkencom

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