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アメリカで経営が困難に、破産すべきか(2)_1124





法律ノート 第1124回 弁護士 鈴木淳司
アメリカで経営が困難に、破産すべきか(2)_1124
August 28, 2018
この数日、付近の火事は鎮火しつつあるはずですが、ベイエリアはかなり「煙たい」空気に包まれていました。橋も曇って見えます。また、近所で火事が発生しているのか、と思ってニュースを良く見ると、オレゴンやワシントン、その上のカナダでも大規模な火災が発生し、太平洋を経由して、ベイエリアに流入しているとか。以前は、カリフォルニアの夏といえば、カラッと乾いているけど、樹々は緑、青い空が映えるというのが定番でしたが、過去のことなのでしょうか。日本でも猛暑がひどいようですね。
 
さて、前回から考えてきた質問を続けて考えていきましょう。
「抽選でアメリカの永住権を取得できたので、5年ほど前からアメリカに移り住み、輸出入の会社を経営しています。最近では、競争が激しくなり思うように利益があがりません。他社との値段競争についていけない状況なのです。夫婦でやっている会社なので、実際個人の負債もかなりあります。色々相談をしているのですが、ビジネスを現在売っても負債がすべて返せない状況にあり、破産を勧められています。本意ではありませんし、日本人的な感覚かもしれませんが、破産ということについてかなり抵抗があります。アメリカで破産した場合、永住権しか持っていない私にはどのような影響があるのでしょうか。また破産した場合、負債は本当に減るかなくなるのでしょうか」という質問内容です。
前回、アメリカの破産法には、チャプター7と13と呼ばれる方法があることを考えました。これらは個人の破産についてです。一方で、法人の破産については、チャプター7に加え、チャプター11と呼ばれるものもあります。このチャプターというのは、アメリカ法典の「第7章」という番号から由来するもので、あまり意味はありません。
個人でも法人でも、チャプター7というのは、いわゆるすべての負債で担保がついていない債務に関しては「免責」されるタイプの破産です。
免責というのは、負債があっても、もう払わなくても良いことにするという意味です。
この免責の許可は、アメリカの連邦裁判所のみが与えられることになっています。
保証人などの人的担保、抵当権などの物的担保がついていない債務、たとえばクレジットカードの債務などは、裁判所から免責許可を得れば、払う必要がなくなるのです。
このチャプター7は、個人にしても法人にしても、支払能力がまったくないような状態、支払能力が著しく低い状態の場合に有効ということになります。ある程度収支が存在しているような場合には、チャプター7を使わず、チャプター11や13を考えることになります。
たとえば、今回の質問をされている方は、どうも、毎月の収支はそれなりにあって、お金が回っている状態のようです。
そうすると、チャプター7を利用して、負債等をゼロにして、再スタートするよりも、手持ちにある財産をできるだけ保持しつつ、再建したいと思うはずです。
たしかにチャプター7を利用すると、担保の負債がついていない債務については、「チャラ」になる、すなわち免責されますが、担保がついている債務、たとえば家、車、高価な電化製品、家具、機器など割賦払いで買っている場合には、債務はなくなりますが、原則として、物を返還しなければなりません。文字通り、すべての債権債務をゼロに巻き戻すという感覚でいなければなりません。
このように、チャプター7によって債権者は不測の不利益を被る可能性があります。
そこで、一般的に金融機関が融資をするときに担保を取る、大家さんが商業物件を貸すときに担保を取る、というのは、破産対策というわけです。クレジットカードの発行審査も結局「チャプター7」の可能性が低い人、ちゃんと支払いを継続できる人、という観点から行われるのは、チャプター7による免責があるからです。
ここで、注意しなければならないことは、今回質問されている方の会社は、ほぼ質問者御本人の個人保証がついている借り入れで成り立っていますので、たとえ、会社がチャプター7をしても、結局は保証人である質問者本人の財務的力量が問題になってくると思います。
会社だけ潰してしまえば良い、というものではなく、会社の債務を保証している場合には、その保証人にも同額責任が生じるのです。また、場合によっては家族や第三者が保証人になっている可能性もあります。このような場合には、会社がチャプター7で免責されたとしても、保証人にはかかってくる可能性があり、こういう場合には「迷惑をかける」と一般的に言われる場合になるのではないでしょうか。
会社が破産する場合には、まずはどのような保証がついているのか、すべての債務を検証して、その影響を考えるのが第一歩となります。
次回続けて考えていきたいと思います。
 
まだまだ暑い日が続きますが、体調管理を万全にしてまた1週間がんばっていきましょう。
 


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アメリカで経営が困難に、破産すべきか(1)_1123





法律ノート 第1123回 弁護士 鈴木淳司
アメリカで経営が困難に、破産すべきか(1)_1123
Augut 21, 2018
元巨人の桑田真澄投手が夏の高校野球の始球式で投げましたが、彼の紳士的な立ち振舞いは素敵でした。今でも野球を愛しているんだなぁ、という気持ちが伝わってきました。しかし、アメリカの始球式には、打者はいないですが、日本は打者がちゃんと立っていますね。当たったらどうするのだと思いますが、早稲田の安倍球場からの伝統なのですね。
 
さて、今回から新しく法律ノート宛にいただいている電子メールでの質問を考えていきたいと思います。あまり個人的には得意な分野の法律ではないので、かなり一般論的な内容になりますが、がんばって皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると「抽選でアメリカの永住権を取得できたので、5年ほど前からアメリカに移り住み、輸出入の会社を経営しています。最近では、競争が激しくなり思うように利益があがりません。他社との値段競争についていけない状況なのです。夫婦でやっている会社なので、実際個人の負債もかなりあります。色々相談をしているのですが、ビジネスを現在売っても負債がすべて返せない状況にあり、破産を勧められています。本意ではありませんし、日本人的な感覚かもしれませんが、破産ということについてかなり抵抗があります。アメリカで破産した場合、永住権しか持っていない私にはどのような影響があるのでしょうか。また破産した場合、負債は本当に減るかなくなるのでしょうか」という質問です。
 
破産(Bankruptcy)というのは、アメリカではかなり特殊な分野で、弁護士でも、破産だけに特化して業務を行っている人が多いと思います。
破産に関しては、連邦裁判所の専属の法律分野であり、州の裁判所は関係しません。破産というのは、簡単に言うと、借金を背負っている人が、現在の資産や将来の収入を考えると、借りたお金を返しきれない場合など、裁判所に申立をして、借金を免除してもらうか、持っている財産の範囲で、借りたお金を公平に分配する法律上の制度です。
破産を申し立てて、裁判所から、「免責許可(Discharge)」という許可をもらうことで、破産手続は基本的に完了します。
破産をアメリカで申し立てると、たとえば債権回収の執拗な電話などを止めることができます。これを自動停止(Automatic Stay)の効力といいます。
ですので、借金の取り立てなどで悩まなくなるというメリットが発生します。また、貸主から債権回収の訴訟を提起された場合などは、その裁判手続きも同じように自動停止します。さらに裁判所から免責を許可されると、基本的に負債を払うことを免除されます。
しかし、免除されるといっても、すべての負債が免除されるわけではなく、以下詳しく考えますが、一定範囲の負債は免責されません。アメリカでは一般的に個人の破産については、チャプター7とチャプター13という2つの主な方法が定められています。
7の方は免責をゴールとする方法で、13というのは、財産や収入を勘案して、再建が可能な場合に使われる方法です。7の方はほぼ財産がない、という場合に有効な方法ということになります。今回質問されている方も、自分の財産がどの程度あるのか、会社の負債といっても個人保証をつけられているようなので、保証している負債はどの程度の額なのか、などをすべて表にして、どの方法を使うか考えていかなければならないわけです。
破産で免責を受けると、クレジットカードの負債など、担保がついていない負債の支払いは免責されます。
ただ、破産を申し立てた人については免責されるとしても、保証人となっている人は免責されません。
ですので、たとえば、家族が保証人になってお金を借りているような場合には、家族は免責されず、支払いの義務は残るということになってしまいます。
よく、破産をしても「家族に迷惑をかける」というシナリオはこのような場合を指すのですね。クレジットカードだけでなく、未払いの請求書などもほぼ免責されますので、アメリカでは高額の医療費を払えないので、破産をするというのもニュースになります。
ただし、支払いを免責されたとしても、何か物を買った代金を支払わなかったような場合には、その物は、売主に返還されます。車や家具などは、支払い免責を受けた場合、返還しなければならないのです。
ここから次回続けていきたいと思います。
まだまだ暑い夏が続きます。ベイエリアは涼しいのですが、暑いエリアの方々は体調管理にくれぐれも注意されてください。また1週間がんばっていきましょうね。
 


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Golden Gate sanfran

アメリカで経営が困難に、破産すべきか(3)_1125

法律ノート 第1125回 弁護士 鈴木淳司
Sep. 4, 2018

 レーバーデーを含む3連休でした。天気も良く、野外活動に最高の週末でした。私もかなり体を動かして気分転換をしました。レーバーデーのときは、野外遊園地やフェスティバルも多いので、みなさんも楽しい時間をお過ごしになったのではないでしょうか。日本は台風などの話題で落ち着かないですが、皆さんお元気にされていますか。

アメリカで経営が困難に、破産すべきか(3)_1125

 さて、前回まで、まとめると「抽選でアメリカの永住権を取得できたので、5年ほど前からアメリカに移り住み、輸出入の会社を経営しています。最近では、競争が激しくなり思うように利益があがりません。他社との値段競争についていけない状況なのです。夫婦でやっている会社なので、実際個人の負債もかなりあります。色々相談をしているのですが、ビジネスを現在売っても負債がすべて返せない状況にあり、破産を勧められています。本意ではありませんし、日本人的な感覚かもしれませんが、破産ということについてかなり抵抗があります。アメリカで破産した場合、永住権しか持っていない私にはどのような影響があるのでしょうか。また破産した場合、負債は本当に減るかなくなるのでしょうか」という質問を考えてきました。今回、個人保証がついている会社の財産がある場合について続けて考えていきましょう。

破産でも内容が異なる消滅型と再建型

 前回、個人保証がついている場合は、会社が破産をしたとしても、債権者は個人を追いかけてくるということを考えました。ですので、会社のように、ある程度の収入があり、個人保証のついた財産がある場合には、完全に債務を消滅する形のチャプター7は使いにくいことになります。

 かりに、会社がある程度収入を維持でき、将来的に収支の計画を建てることができれば、いわゆる再建型である破産を利用することがオプションとして考えられます。チャプター7は、担保のついていない債務に関しては免除されるというメリットはありますが、一方で、担保そのものは消滅しないので、残額が残っている不動産やら、車などは手放さなくてはならないことになりますし、保証人に対して追いかけることができます。

 他方、再建型においては、今までの負債について一旦整理をして、払えるだけ払っていこうという、ある意味、責任のとり方を再構築する方法ですので、将来を見据えての財務的な責任は負うことになります。どちらも「破産」ですが、内容的には異なるものなのです。どちらかというと再建型であるチャプター11とか13などは、責任からすべて逃げるということではなく、過去の負債を将来においてどのように整理するか、という方法論を取るわけですから、ある程度責任を負い続けるというところに、いわゆる「責任感」はあるとも言えると思います。

 しかし、日本社会と違ってアメリカでは、他人の目はあまり気にしません。自分で何をしなければならないのかを第一次的に考える文化ですので、消滅型、再建型、どちらの破産方法をとるかは、まず自分の財務的状況に応じて判断するしかないと思います。

破産しても免責されない債務もある

 破産申請が受理され、免責がされるといっても、上述したように担保はなくなることはありません。金融機関は、お金を貸すにあたって担保を取りますが、一部この破産を想定していることは明らかです。担保がついていない場合でも一定の場合には、破産しても、免責されない債務があります。

 アメリカでは、主なものを挙げると、離婚に伴う元配偶者や子の養育の支払いは、破産があっても免責されません。払えないとしても、その債務は残ります。税金の支払いについても、例外はありますが、基本的には支払義務は破産をしても残ります。税金はどこまでも追いかけてくる、というのはこのことです。

 税金に似ているかもしれませんが、罰金や被害者弁済など裁判所を通して支払い義務が生じたものについては、基本的に支払義務は残ります。私が経験したものでは、通常の交通事故によって発生する損害賠償義務は破産で免責の対象となりますが、これらの損害が飲酒・薬物に起因した事故で発生した場合には、免責の対象外となります。こういったファクターを考慮して、どのような破産をするのかを考える必要があります。

破産をしてもすぐに永住権の保持に影響しない

 それから、今回質問されている方は永住権保持者ということですが、破産をしたからといって、すぐに永住権の保持に影響はしません。まったく別系統の話なので、永住権を持っていれば、何も滞在資格に直接的な影響はありません。一方で、非移民型のビザで滞在されている外国人が破産をする場合には、滞在資格が影響することがありえます。ビジネスビザで滞在している場合、更新はかなり難しくなると思います。

 まだ色々考えたいところですが、今回はこの辺までにしておきたいと思います。また、皆さんからの質問を待って考えていきたいと思います。今週もまだ「夏」が続きますが、今週末、鹿の子供を見ました。秋が近づいてきているということでしょうか。体調管理に気を配りながらまた1週間がんばっていきましょうね。


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