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辞職した社員に守秘義務契約違反の疑い(2)_1120

法律ノート 第1120回 弁護士 鈴木淳司
July 31, 2018

 アメリカの大統領も女性問題に関して弁護士との録音テープが公開されていますが、日本でも官僚の贈賄立件のためのテープが公開されました。今ではスマホでも簡単に録音や録画できてしまうので、このようなニュースになってしまうのでしょう。公の人たちは常に注意をしないと、いつカウンターパンチを食らうかわかりませんね。もちろん通常の訴訟で相手の同意がない録音は使えない可能性が高いのですが、強制捜査を受けた場合には、このような録音も公になってしまう可能性はあるのですね。皆さんは夏の暑さをどう乗り切っていらっしゃいますか。

辞職した社員に守秘義務契約違反の疑い(2)_1120

 さて、前回から考え始めた、「私はベイエリアの企業で人事関係に携わっています。昨年辞職した社員が、会社の情報を持ち出して使用しているのではないか、という疑念が会社内で出てきました。もちろん、会社におけるコンプライアンスの一環として、入社時に守秘義務契約を締結しています。このような場合、なにか会社として法的にクレームをすることができないのでしょうか。」という質問を続けて考えていきましょう。

守秘義務の期間も確認

 前回、どのような情報を守秘しなければならないかどうかについては、特にビジネスに関連する場合、守秘義務契約書を確認する必要があるというところまで考えました。一般論ですが、守秘義務契約書というのは、どちらかというと金銭や物品のやり取りが発生しない契約書で、ビジネスの付き合いをはじめる最初に締結することも多くあります。そうすると、内容をよく読まずに、署名をしてしまうということも発生します。さらに、ビジネスが進むと守秘義務があるという意識も希薄になってしまいます。したがって、どのような内容を守秘するのかは、必ず契約書に立ち戻って考えなければなりません。

 今回質問されている方のように会社を辞めてしまった人間が、守秘対象の情報を使用していると懸念されている場合、まずは、当該の被用者がどのような守秘をしなければならないのか、そしてその守秘の期間はどの程度なのかを確認する必要があります。守秘の期間については、まちまちで永続的な場合もあります。

辞職した被用者に守秘義務を喚起する通知を

 情報が漏洩しているのではないか、確実に証拠を抑えられない場合には、なかなか法的な対応に踏み込めないケースも少なくありません。私も相談に乗ることは多々あるのですが、訴訟まで踏み切れるというケースはとにかく証拠がなければならないのです。

 ただ、この辞職した被用者に対して、通知をすることであれば、ハードルは低くないわけです。簡単に言えば、「あなたは、当社を辞したあとも、守秘義務があることを喚起します」と言った文言とともに、守秘義務契約書のコピーを添付して送っておけば、心のタガにはなるのではないでしょうか。これが今回の質問にあるような場合の対応第一歩です。

情報漏洩先の第三者に通知する場合

 今回質問されている方も、社内または第三者からの情報で、何らかの漏洩を疑われていますが、一体どのような情報が漏洩されているのかを契約書に照らして推測していかなければなりません。

 漏洩というのですから、守秘義務契約書の当事者ではない第三者が絡んでいるはずです。会社にとってプラスにもマイナスにもなる場合があるでしょうが、場合によってはその漏洩先の第三者に対して「当社の情報が漏洩されている懸念があるので、そのような場合があれば機密情報の使用をただちにやめていただきたい」といった内容の通知を行うことも考えられます。

 このような通知を受け取った場合は、十中八九弁護士に相談するでしょうし、その弁護士は一切「回答する必要はない」というでしょう。そうすると、実際の効果があるかないかはわかりませんが、少なくとも、機密情報については気にすることになると思います。

 この第三者に対して通知を行うということになった場合、契約書そのものは添付しない方が良い場合が多いと思います。

証拠があれば訴訟を提起することも

 さらに、情報漏洩が明らかな場合も実際にあります。証拠としては、人の証言や、メモなどが考えられます。証拠があれば、訴訟を提起することになりますが、その損害というのは、守秘義務契約書そのものに記載されている場合も少なくありません。

 守秘義務契約書に損害賠償だけではなく、情報の使用の差止めも記載されている場合もあります。その場合には、情報の使用の禁止および規定された損害額を請求していくことになろうかと思います。ただ、証拠をはっきり抑えるのは、なかなか難しい類の事件ではあろうかと思います。

 次回また新しいトピックを考えていきたいと思います。夏バテに気をつけつつまた1週間がんばっていきましょうね。


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辞職した社員に守秘義務契約違反の疑い(1)_1119

法律ノート 第1119回 弁護士 鈴木淳司
July 21, 2018

 カリフォルニア州では山火事がコントロール不能なほど広がっています。日本でも異常な暑さや土砂崩れなど、どうみても天候がおかしい状況にあります。日本でもアメリカでも、40度に迫りそうな気温が珍しくないというのは、20年前にはなかったのではないでしょうか。今後気候がどうなっていくのか、人間はちゃんと対応できるのか、心配になります。しかし、なにかできることはないかと言っても、恥ずかしながら具体的に頭に浮かびません。かりに気候の温暖化が人間の功罪であれば、なにか人としてしなければならないという義務感はあるのですが。みなさんの体調はいかがでしょうか。

辞職した社員に守秘義務契約違反の疑い(1)_1119

 さて、今回からまた新しくいただいている質問を取り上げて、みなさんと一緒に考えていきましょう。いただいた質問をまとめると「私はベイエリアの企業で人事関係に携わっています。昨年辞職した社員が、会社の情報を持ち出して使用しているのではないか、という疑念が会社内で出てきました。もちろん、会社におけるコンプライアンスの一環として、入社時に守秘義務契約を締結しています。このような場合、なにか会社として法的にクレームをすることができないのでしょうか。」というものです。守秘義務契約については以前法律ノートで取り上げたと思いますが、今回は守秘義務に違反しているのではないかという嫌疑がある場合にどのような対応が考えられるかを考えていきたいと思います。

守秘義務契約書とは

 まず、守秘義務契約書というのは、どういうものかというと、ビジネスや訴訟などにおいて、目的や対象を決めて、関わっている人たちに開示された内容を口外せずに秘密にしておくことを取り決める書類です。口外しないように秘密にしておくことを当事者間で約束するので、守秘義務を契約書という書類にして負わせるわけです。

 秘密にしておこうとする対象は様々です。契約書ですから、当事者間が合意さえすれば、違法でなければかなり広範囲の内容が守秘義務の対象となります。よく、ビジネスをはじめるにあたりアイディアなどの保護に使用するというのは、よくある使い方です。また、今回質問されている方のように、会社の情報や財産を守るために、被用者に合意をさせる場合もあります。

弁護士は守秘義務が命

 私の所属する事務所でも、弁護士は守秘義務が命ですので、従業員全員は、もちろん弁護士としての守秘義務の傘の下で行動しているのですが、弁護士に自動的に課される守秘義務に加えて、守秘義務契約書をサインして二重に情報を保護しています。訴訟でも良く利用されます。

 たとえば、和解をした場合、その和解内容を秘密にしておくというのはよくあります。たとえば、事件が「和解した」という事実は、公表されても、和解の「内容」については、公表されないことが多いわけです。これは、当事者が守秘義務契約書を作成しているからです。私も和解によく立ち会いますが、その内容は弁護士としても、守秘義務を負いますし、一方で、守秘義務契約書の一環としても、守秘義務を負うのです。

守秘義務契約書で対象となる内容を確認

 守秘義務の対象となる内容についても様々あります。知的財産の内容もあるでしょうし、訴訟の内容ということもあります。どのような内容を秘密にしておかなければならないかは、一般的に決まっているというよりは、守秘義務契約書によってコントロールされます。したがって、「どのような守秘義務を負っているのか」という質問に対しては、守秘義務契約書をよく解析しないとわからないわけです。裏を返せば守秘義務契約書を締結する場合、どのような内容について秘密にしておかなければならないのか、よく注意して読んで理解しておかないと、思わぬトラブルになる可能性があります。

 今回の質問に関しても、まず読んで確認したいのが、守秘義務契約書にどのような内容が守秘の対象になると書かれているのかです。この内容によって、義務に違反するかどうかがある程度判断されるわけです。次回ここから続けていきましょう。

 本格的な夏、というか、暑すぎる夏ですが、熱中症にくれぐれも注意しながらまた1週間がんばっていきましょうね。


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契約書の作成、アメリカでの一般的な対応は?(2)_990

法律ノート  第990回 弁護士 鈴木淳司
Jan. 20, 2016

 アメリカの宝くじはジャックポッドが数百億円にまで膨れ上がり、ちょっとしたフィーバーになっていました。私もハズレクジを買いましたが、まあ、3億分の1の当選確率らしいので、ちょっとしたお遊びみたいなものですね。私は車の運転中、いつも交通渋滞も流れるニュースチャンネルにラジオを合わせているのですが、宝くじを買った人にインタビューしているニュースはかなり微笑ましかったです。哀しいニュースよりも、ウキウキしている人たちの声は聞いていて楽しいですね。みなさんの宝くじは当たりましたか。

契約書の作成、アメリカでの一般的な対応は?(2)_990

 さて、前回から「現地法人の者です。日本の法務部から赴任してきたばかりです。現地法人では法務部というのはないので、法務担当として働いています。前任者は、様々な市販の契約作成ソフトで契約書をつくって使っていたようです。前任者に聞いたところ、法律家の目を通さなくても、今まで問題はなかった、ということでした。このようなやり方でも良いのでしょうか。また、アメリカでは一般的にどのように企業は対応しているのかを教えていただけないでしょうか」

弁護士に相談するコストを捻出できるか

 前回は契約作成プログラムで生成される契約書について考えました。基本的には、そこまでトンチンカンな変更をしなければ、一般的には「そんなに悪くはない」と思います。一般的に、このようなプログラムを主につかって契約書の作成に対応している会社も存在します。

 しかし、一方で、弁護士などの法律家に相談できる企業もあります。もちろん、弁護士などに相談ができるのであれば、そういった企業はある程度契約作成プログラムなどの雛形を使っても安心感があるでしょうが、そのように、いちいち弁護士に相談するコストも捻出できないという企業もあると思います。

 今回の質問にざっくりお答えするとして、一般的には、頻繁に弁護士に相談する企業と、たまに必要なものだけ、弁護士に相談する企業があると思います。

 会社の費用捻出などの観点から、頻繁に弁護士に相談ができない企業、たぶん今回質問をされている企業も同様でしょうが、どのように契約作成に関してリスクを減らしながら対応していけば良いのでしょうか。いくつかの注意点を考えておきましょう。

信頼できるソースからの雛形を利用し、できるだけ変更しない

 まず、雛形を利用する場合には、信頼できるソースから出されているものを利用することです。単にインターネット上に転がっているものは信頼がおけませんし、内容についても、実際の契約内容に沿っているとは限りません。あくまでも、雛形についてある程度の責任があるような団体のものを利用することが重要です。

 次に、雛形を使用する場合には、できるだけ内容を変更しないようにしてください。もともとある程度完成形で雛形としているわけですから、雛形をできるだけいじらない方が、問題が発生しづらいわけです。

 もし、内容をかなり手を加えなければならないときがあれば、その部分については専門家に相談をしたほうが良かろうと思います。とにかく、雛形をいじると、齟齬が生じやすいということを理解してください。

継続的な契約をしている相手か、初めて契約をする相手か

 第3点目ですが、契約の相手方を見て、単にプログラム作成の契約書で良いのか、法律家に相談するべきなのか、を考えた方が良いと思います。

 何度も継続的に契約をしている相手方では、同じように雛形の契約書を利用しても、さほどの問題はないと思います。また、一度法律家が目を通した、雛形的な反復継続して利用する雛形であれば、これもそこまで問題は無いと思います。

 しかし、はじめての案件で、相手方と交渉内容がかなりヒートアップするような場合、はじめての契約でさらに交渉内容が多岐に渡る場合などは、専門家の力を借りた方が良いと思います。

一回的な契約か、継続契約か

 また、第4点目ですが、契約の性質を一回的な契約(たとえば、物の売買契約ですね)と、継続契約(商品の製造・再販や、コンサルティングサービスなど)という観点から分けた場合、一回的な契約であれば、雛形でも問題は少ないと思います。なぜなら、物とお金を交換すれば、それで基本的には「終わり」だからです。

 ところが、家を借りるなどの賃貸借契約をはじめ、継続契約においては、契約期間中ずっと契約関係が持続するわけですね。そうすると、問題が生じたときに、契約書に立ち戻る可能性が大きいわけです。ですので、継続的な契約については、特に全体の金額が大きくなる場合には、専門家に簡単にでも内容を確認してもらったほうが良いと思います。

 今回質問されている方も、一回的な契約であれば、問題ないかもしれませんが、継続的な契約関係がある場合には、一応目を通して、気になったところは専門家に聞いてみるのが良いと思います。

 以上で、だいたい今回の質問にはお答えしたと思いますが、他にも気になるところがあればいつでも質問をしてくださいね。

 雨が多いですが、運転などには気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。


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カリフォルニア州弁護士コラム「調停で思うこと」(2)_952

法律ノート 第952回 弁護士 鈴木淳司
Aug 16, 2015

 前回調停というのは紛争解決においてどのような性格を持っているのか一般的に考えました。調停というのは、事実審で争うことを避けて、合意によって紛争を解決するうえでは有効であるということはわかっていただけたと思います。

カリフォルニア州弁護士コラム「調停で思うこと」(2)_952

 調停人は、私が出席した数多くの調停において、必ず言うのは「事実審で陪審員が判断すると、勝つか負けるかわからないから、調停で和解するのはとてもよいことだ」という台詞です。これは確かにおっしゃるとおりです。裁判になってしまうと、第三者が事件を見て、第三者が判断をするわけですから、実際に判断を「委ねる」ことになりますね。自分で解決策に納得して、事件を終了させることができなくなるわけです。

 そういう意味では私もまとめられるのであれば調停でまとめた方が、結果にハラハラしないので、良いと思っています。これは正論ですし、きわどい事件では有効な説得材料であるわけです。もう私も20年法廷弁護士をやっているわけで、いくつも調停にでているわけですが、調停では調停人の口から「お約束」のように出てくる説得材料であって、紛争当事者は真摯に耳を傾ける必要があると思います。平和的な解決をしてしまえば、不安定な要素がなくなるわけです。

通常、調停人は和解した方がお金がかからないと説得するが…

 調停において問題となる調停人の発言は「お金」に関する話です。すなわち、調停人は必ずと言って良いほど、実際に事実審(トライアル)に行って陪審員や裁判官の判断を仰ぐことになると、弁護士や裁判を維持する費用がかなり天文学的になるので、和解してしまった方がよいであろう、と言ってきます。

 交通事故の原告側弁護士のように成功報酬で事件をやっていれば、弁護士の費用がうんぬんということについては結果がすべてなのである程度関係がないかもしれませんが、時間給で弁護士費用を支払っている被告側の弁護士の費用は陪審裁判までいってしまうと、かなり高額になってきます。

 さらに負ければ、その分の損害も支払わなければなりません。この危険性を調停人は説得材料として使うことがかなり多いのですが、事件によっては、この説得方法は逆に交渉を悪化させる可能性があります。

金より名誉を大事にすることが多いセクハラ事件

 ビジネスの事件で、純粋にお金だけを争う事件では「皮算用」が働くわけですから、自分側の弁護士にいくらお金を使うのか、相手方にいくら払うのか、など出費の合計で和解しても良いのか決めても悪くないわけです。

 企業を代理する場合、担当者も会社のプラスマイナスの総額から事件の解決策を模索して、ドライに金額を割り切ることができます。ところが、最近立て続けに私が担当したセクハラの企業側の弁護が、ドライに割り切ることができない内容も少なくありません。

 セクハラで訴えられた企業としては、セクハラをしたと言われている本人の名誉も考えなくてはなりません。特に、セクハラかどうか疑問が残るような事件では、「金ではなく名誉だ」と考えることが珍しくありません。そうすると、「今後弁護士費用が嵩むから、和解した方が良いのでは」と説得されても、逆にバックファイアします。「ふざけるな、金がいくらかかっても、やっていないものはやっていない。白黒つけてやる」と考える当事者もいますし、「従業員がセクハラしたからといって、経営者として最善を尽くして、なんで相手に金を払わなくてはいけないのか」という社長さんもいます。

 おっしゃる通りで、調停人が裁判にお金がかかるから、いくらか相手に支払って終わりにしてしまえ、と言っても確実に事態が悪化します。

調停人の経験やセンスが問われる

 そういった、雰囲気を感じ取るのは調停人のセンスでしょうし、説得材料を適切に選ぶのも調停人の経験なのかもしれません。ただ、ほとんどの事件で調停人は、「弁護士の費用が嵩むので、和解したほうが良いのでは」という論調の話をします。

 事件によっては、私も裁判まで行ってやる、と思うこともあるわけで、私としても、あまり好まない説得材料だと思うのです。紛争当事者によっては脅迫されたと思う人もいるのも理解できなくもないわけです。

 自分でつけた弁護士の費用が嵩むから、和解をした方が良い、という考え方はなんだか私が当事者だったら納得がいかないような気がします。結局司法のシステムで事件を解決すると費用倒れするので、和解した方が良い、というのは、司法システムの自殺の側面があるのではないかと思っています。

 それなら、紛争になる前に、弁護士の費用がこれだけかかる、裁判をするとこれだけかかる、ということをある程度裁判所が表示しておけば、当事者は、「じゃあ、裁判なんてやるのやめよう」と思うかもしれません。

 このところ立て続けにおこなった調停ではなんとか事件は解決しましたが、セクハラ事件など、感情も交じる事件においては、かなり考えさせられるポイントでした。


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*当選後手続きは、細やかなサポートを徹底するため、お断りする場合があります。 サポートをご希望の方は、まずはお気軽にお問い合わせを。(i@jinken.comもしくは各担当者アドレスまで)

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