辞職した社員に守秘義務契約違反の疑い(1)_1119

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法律ノート 第1119回 弁護士 鈴木淳司
July 21, 2018

 カリフォルニア州では山火事がコントロール不能なほど広がっています。日本でも異常な暑さや土砂崩れなど、どうみても天候がおかしい状況にあります。日本でもアメリカでも、40度に迫りそうな気温が珍しくないというのは、20年前にはなかったのではないでしょうか。今後気候がどうなっていくのか、人間はちゃんと対応できるのか、心配になります。しかし、なにかできることはないかと言っても、恥ずかしながら具体的に頭に浮かびません。かりに気候の温暖化が人間の功罪であれば、なにか人としてしなければならないという義務感はあるのですが。みなさんの体調はいかがでしょうか。

辞職した社員に守秘義務契約違反の疑い(1)_1119

 さて、今回からまた新しくいただいている質問を取り上げて、みなさんと一緒に考えていきましょう。いただいた質問をまとめると「私はベイエリアの企業で人事関係に携わっています。昨年辞職した社員が、会社の情報を持ち出して使用しているのではないか、という疑念が会社内で出てきました。もちろん、会社におけるコンプライアンスの一環として、入社時に守秘義務契約を締結しています。このような場合、なにか会社として法的にクレームをすることができないのでしょうか。」というものです。守秘義務契約については以前法律ノートで取り上げたと思いますが、今回は守秘義務に違反しているのではないかという嫌疑がある場合にどのような対応が考えられるかを考えていきたいと思います。

守秘義務契約書とは

 まず、守秘義務契約書というのは、どういうものかというと、ビジネスや訴訟などにおいて、目的や対象を決めて、関わっている人たちに開示された内容を口外せずに秘密にしておくことを取り決める書類です。口外しないように秘密にしておくことを当事者間で約束するので、守秘義務を契約書という書類にして負わせるわけです。

 秘密にしておこうとする対象は様々です。契約書ですから、当事者間が合意さえすれば、違法でなければかなり広範囲の内容が守秘義務の対象となります。よく、ビジネスをはじめるにあたりアイディアなどの保護に使用するというのは、よくある使い方です。また、今回質問されている方のように、会社の情報や財産を守るために、被用者に合意をさせる場合もあります。

弁護士は守秘義務が命

 私の所属する事務所でも、弁護士は守秘義務が命ですので、従業員全員は、もちろん弁護士としての守秘義務の傘の下で行動しているのですが、弁護士に自動的に課される守秘義務に加えて、守秘義務契約書をサインして二重に情報を保護しています。訴訟でも良く利用されます。

 たとえば、和解をした場合、その和解内容を秘密にしておくというのはよくあります。たとえば、事件が「和解した」という事実は、公表されても、和解の「内容」については、公表されないことが多いわけです。これは、当事者が守秘義務契約書を作成しているからです。私も和解によく立ち会いますが、その内容は弁護士としても、守秘義務を負いますし、一方で、守秘義務契約書の一環としても、守秘義務を負うのです。

守秘義務契約書で対象となる内容を確認

 守秘義務の対象となる内容についても様々あります。知的財産の内容もあるでしょうし、訴訟の内容ということもあります。どのような内容を秘密にしておかなければならないかは、一般的に決まっているというよりは、守秘義務契約書によってコントロールされます。したがって、「どのような守秘義務を負っているのか」という質問に対しては、守秘義務契約書をよく解析しないとわからないわけです。裏を返せば守秘義務契約書を締結する場合、どのような内容について秘密にしておかなければならないのか、よく注意して読んで理解しておかないと、思わぬトラブルになる可能性があります。

 今回の質問に関しても、まず読んで確認したいのが、守秘義務契約書にどのような内容が守秘の対象になると書かれているのかです。この内容によって、義務に違反するかどうかがある程度判断されるわけです。次回ここから続けていきましょう。

 本格的な夏、というか、暑すぎる夏ですが、熱中症にくれぐれも注意しながらまた1週間がんばっていきましょうね。


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作成者: jinkencom

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