法律ノート 第1231回 弁護士 鈴木淳司
September 28, 2020
カリフォルニア州の火事による大気汚染も収束傾向にあり、ほっとしていますが、自然のことですから、また火事が起こるのではないかという不安が残ってしまいます。考えてみると、このような火事による深刻な大気汚染というのは15年前にはカリフォルニアではあまり聞かなかったと思います。確実に温暖化が進んでいるように思います。次の世代のためになにができるのか、アメリカも政治にとらわれず真剣に考えなくてはならないと思います。一つでも良いので、国民のベクトルを一つにできないものでしょうか。
会社をたたむー法的な手続きは?(2)_1231
さて前回から考えてきた「日本とアメリカの間で、インターネット売買の仲介をしている会社を経営しています(経営はカリフォルニア州)。最近コロナ禍によって売上が激減し、会社を畳もうと思っています。カリフォルニア州の法人として活動をしていたのですが、会社の営業活動を一切やめることを前提でどのような法的手続きを取ったら良いのか教えてください。」という質問を続けて考えていきましょう。
会社を取り巻く様々な取引の整理ー債権債務
前回は、法律的な手続を最小限度にしつつ、廃業するという方法を考えはじめました。
前回、雇用と賃借物については、今後将来に発生する債権債務関係なので、まずは関係を整理するために話をしなければならないということを考えました。ここから考えましょう。
将来だけではなく、会社にはたぶん過去に発生した債権債務関係があると思います。お金を借入している場合などでしょうか。これらについては、まず個人保証がついているのかを確認しましょう。会社が廃業したとしても、保証関係があると、個人の財産にも債権者の権利が及びます。
ですので、まずは債権債務関係のベースとなる契約書を確認する必要があります。
銀行や政府からの借り入れなどもありますが、知り合いなどからの借り入れなども考えなければなりません。
いったん、このような債権債務関係を整理したら、各債権者に連絡をして、廃業を考えているという前提で交渉をしなければなりません。もちろん弁護士が代理できますが、会社の代表者が真摯に直接交渉するほうが良いと思います。できれば、免除を頼み、ダメであれば減額を頼むという形でしょうか。
ただ、簡単に免除や減額を得られるということではないですから、かりにすべての債権債務関係が整理できるようであれば(たとえば、自己資本等を利用して、債権債務関係を解消する)、あとは基本的にやることはありません。
事実的には廃業をするということを、各関係者に通知して、終了です。
「法人」のかたちはどうするか
法人格については、放置する方も多く、長期に放置しておくと(毎年の税務申告や、州への登録などを行わないなど)、州において会社の登録が更新未了という形になります。
それだけでも、事実的には十分かもしれませんが、できればちゃんと法人を解散するのが良いと思います。
正式に法人を解散する方がベター
この法人格の解散は専門家に相談したほうがよいかもしれませんが、会計書類を整え、法人における解散決議の書類を整え、そして州に解散の届出を行います。
受理されれば、法人は法人格を失います。ここで一つ重要なのは、州によっても違うと思いますが、会社の解散において、債権債務関係が存在する場合の保証を求められる場合があります。
これは、会社が解散してしまうと、あとから債権債務関係が生じている場合が発覚したときに誰かが責任を取らなければならないからです。
保証をつけられない、つけたくない、という場合には、会社の解散は申請をしてからたとえば、2年後に実際に解散されるといった法制度を用意しています。
どちらにしても、法人格の解散をすることで、廃業は完了します。
税金はいつまでも追ってくる
ただ、一つ覚えておかなければならないのは、過去に遡る未納の税金です。
法人格を廃業しようがなにをしようが、税金は元法人の代表者も追っかけてきます。ですので、債権債務関係については、税金については優先的に対応しなければなりません。
ここまでは、将来と過去の債権債務関係などがスムーズに解消できたと仮定した場合です。
ある意味、深刻なコロナ禍の影響がある中、このようにスムーズに廃業できることは難しい場合もたくさんあると思います。場合によっては、自分個人の財産を使って廃業をするということもありえるのでしょうか。
ただ、どうしてもスムーズに廃業をすることが困難になるのであれば、まずは専門家に相談をしたほうが良いと思います。会計の専門家の方が入り口としては適当だと思います。なぜなら、結局債権債務関係がどの程度あって、どのように処理できるのか、ということが最重要になるからです。一つの選択肢として会社を倒産させるということも考えなければなりません。次回簡単に破産法について考えていきましょう。
秋らしくなってきましたが、さすがに今年のハロウィンは皆さん自粛なのでしょうか。なんだか、人が集まって盛り上がるということが今年はほぼないので寂しいですよね。ただ、コロナはあっても季節は変わっていきます。秋を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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