個人給付 米ビザ保持者が受け取っても大丈夫?_1209

JINKEN.COM_Golden Gate, San Francisco, California, USA.

法律ノート 第1209回 弁護士 鈴木淳司

 アメリカでは、マスク着用について医師のなかでも反対する人がいました。どうもマスクの付け心地が悪く、結局汚い手で顔を触ってしまうということでした。結局サンフランシスコ市は、マスク着用の命令を出し、アメリカ各地でマスクをする人が激増しました。方向転換ですね。ただ、方針の転換に否定的な論調のものは見かけませんので、こういうところが日本と違うな、と思わされるところです。

 日本では一時給付についての方針転換について、「誰々の失態」とか、「誰が恥をかいた」とか言った論調の記事や発言が多くてうんざりします。一丸となって、今を乗り切ることが大切ですよね。

アメリカ政府の緊急給付は?

 さて、現状、COVID-19の大流行により、日本もアメリカも、国民にいわゆるバラマキ政策を行い、生活や経済の維持を図ろうとしています。

 このところ、実は多くの質問がアメリカ政府による緊急給付について法律ノートにも寄せられています。PPPといわれる、雇用の維持を狙った給付(Paycheck Protection Program)についての質問も多いのですが、これは雇用主が申請するものであって、どちらかというと個人給付の色合いはありません。

 アメリカのCARES Actには、各納税者に対し1200ドルを支払うというものがあります。これについて、日本人や外国人の方から、受け取ってもよいのかという質問が多数寄せられています。移民法との絡みですね。

 今回、この対個人給付(1200ドル、子は各500ドル)の基本的な部分は取り上げません。色々なところで確認できますし、受領可能な人は直接に送られてくるので、納税者側からは何もすることはありません。

個人給付は移民法上の公的扶助制限に引っかかる?!

 今回取り上げたいのは、ビザ保持者や永住権を申請中の外国人の方々が、この個人給付を受け取っても、2020年2月24日に施行された移民法上の公的扶助制限に引っかからないかという点です。

 この移民法の新規則は、アメリカ政府から公的扶助を受ける一定の場合、永住権申請や、非移民ビザ申請が不許可となるとしたものです。詳細は今回考えませんが(じんけんニュース、www.jinken.comで随時取り上げています。)、公的扶助に関する今回の新法では、そもそも災害時(Disaster)の給付は明確に制限から除外しています。

 したがって、移民法上は、今回の対個人給付を受け取ったとしても、公的扶助を得たこととみなされません。ですので、結論からいうと、移民行政上のステータスに関わらず、受給することができます

非居住外国人(Non-resident Alien)の意味に注意

 一方で、混乱が生じているのは、CARES Actにおける対個人給付について、「Non-resident Alien」という単語を使っているところです。

 これは、移民法でも使う単語ですが、今回の新法においては、税法上の概念として使われています。「非居住外国人」といっても、市民権を持たないとか、ビザしか保持していない、という意味ではなく、税法上の「非居住外国人」ということになります。

 税法上は、基本的に2つのテストで「非居住外国人」を設定しています。

 一つは、永住権を持っていれば、市民と同様に考えますので「非居住外国人」には該当しません。

 もう一つのテストは、183日以上(つまり半年ですね)、アメリカ国内に滞在した場合には、「非居住外国人」には該当しない、ということです。該当しなければ、納税義務が発生するということです。そして、CARES Actsに基づいて支払いを受けられるのは原則として、継続して納税をしている人ですから、結局納税義務が生じている人たちは、今回の対個人給付を受けられ、なんら移民法には影響しないということになるのですね。

 したがって、アメリカで現在ビザを保持して生活されている外国人の方々でも、受給することはできます。

 将来永住権もとりたい、と考えている場合、その将来の申請に今回の対個人給付を受けたとしてもなんらマイナスな影響は生じませんので、安心して受け取ってください。

 日本でも、外国人労働者に対しての保障はされるのか、という議論はありますが、日本で働き、納税をしている人たちには、国籍を問わずに支払いをするのが理想だと思います。

外国人所有の会社も申請可能

 それから、似たような質問で上述のPPPに関して、例えば外国人が有する会社(Eビザの場合などが考えられます。)が申請できるのか、ということですが、当初、PPPは会社の所有者を米国市民権および永住権保持者に限っていましたが、その制限を外しました。

 ですので、主に、Eビザで会社を所有する外国人は申請することは可能になりました。また、将来の永住権や、ビザ更新には移民法上影響はありません

 また、次回新しい質問を考えていきましょう。

 まだまだ、ウイルスは下降基調とはなっていないですが、とにかく今は耐えるしかないですね。皆さん一人ひとりがウイルスをやっつけるためにできること、といえば今は自宅待機です。使命感を持って対応していきたいですね。

 また、一週間がんばっていきましょう。

Update:給付金の返還が必要な場合

読者からのご質問にお答えし、アップデートしました。(June 2, 2020)

Q. 2019年分のタックスリターンを行っていたため、給付金が自動的に振り込まれています。4月の時点では受け取り可能という案内がなされていましたが、先日確認したところ、qualified aliens  for 2020 ではない人、nonresident aliens は対象外であり、返還が必要と更新されていました。返還しなければならないでしょうか?判断がつきません。

A.IRS(米国国税局)のインフォメーションセンターに詳細情報があります。
https://wあww.irs.gov/coronavirus/economic-impact-payment-information-center

これによると、2020年に税法上の「居住者」、すなわち基本的に外国人を指しますが、2020年に183日以上アメリカに滞在しているか、永住者の必要があります。
したがって、2020年にアメリカに183日以上居住しなければ返還しなければならず、返還方法についても、上記サイトに書かれています。

Q11. Does someone who is a resident alien qualify for the Payment? (added May 6, 2020)

Q11. A person who is a nonresident alien in 2020 is not eligible for the Payment. A person who is a qualifying resident alien with a valid SSN is eligible for the Payment only if he or she is a qualifying resident alien in 2020 and could not be claimed as a dependent of another taxpayer for 2020. Aliens who received a Payment but are not qualifying resident aliens for 2020 should return the Payment to the IRS by following the instructions about repayments.

なお、情報は6月1日時点ものであり、今後更新もあり得ます。
ファイルする時点で、再度ご確認ください。

作成者: jinkencom

jinkencom について JINKEN.COMの運営者であり、カリフォルニア州弁護士として活躍中の鈴木淳司弁護士のブログです。「移民法ブログ」では米国の移民分野についてホットな話題を取り上げて月に一度更新、「アメリカ法律ノート」は広くアメリカの法律相談に答える形で、原則毎週更新しています。なお、本ブログの著作権は著者に帰属します。 *たびたび法制度が変わりますので、最新情報をご確認の上、手続きされてください。