カリフォルニア州弁護士コラム「OJT不足の弁護士」_982

Golden Gate sanfran

法律ノート 第982回 弁護士 鈴木淳司
July 5, 2015

 今回は皆さんからのご質問にお答えするのを一旦休ませていただき、最近思ったことを書かせてください。

 日本で弁護士になる制度が「改革」されて、10年程度が経ち、新世代の弁護士が輩出されるようになりました。どんどん活躍する弁護士が増えることは良いことなのですが、一方でオンザジョブトレーニング(OJT)すなわち実地訓練をあまり受けていない弁護士も相当数出てきていると日本の友人弁護士達は言います。

 弁護士の数が増えるのが問題ではなく、5年でも10年でも、経験年数の多い弁護士から学んだり、相談したりする環境がないと、一般社会や法曹界の常識というものが理解できないと思うのです。そこが問題なのだと思います。

カリフォルニア州弁護士コラム「OJT不足の弁護士」_982

 先日、米国に住む相続人が日本語を読めないので、私が所属する事務所から、日本の経験の浅い弁護士に連絡して情報を得て欲しいということだったのですが、その日本の弁護士は守秘義務を盾にして情報の開示を拒んできました。

 もちろん相続人は相続財産に関する情報はもらえるべきであるのは日本もアメリカも変わりませんが、不可解な理由でダメだしをしてくるのです。法律上の根拠を求めても、説明もでてきません。詳細は省きますが、どうもその弁護士は、弁護士としてのプライドが異常に高く、「弁護士は特別だ」くらいに思っていることが電子メールの文面でわかります。

 以前、法律ノートでとりあげたOJT不足の初老新人弁護士がプライドだけは異常に高いのに、事件の処理はまったくできないことを思い出しました。どんな弁護士でも、OJTが不足していると弁護士の自己満足にはつながっても、結局顧客に迷惑をかけますし、訴訟になれば出てくるキャラクターはほぼ全員法曹なので、「俺は特別だ」感などを持ってもまったく役に立ちません。

いろいろな考え方の筋道を学ぶ法律論

 弁護士になるには、量的にはたくさん勉強しなければなりませんし、要求される試験も簡単ではありません。一見難しいことをたくさん吸収することも必要です。ただ、自然科学と違って、法律論は正解がありません。いろいろな考え方の筋道を学ぶ学問であります。法律論は人間の関係を主に扱いますが、人間論そのものや、人生論ではありません。ですので、思いやりとか優しさ、寛容などは法律の本にはでてきません。ましてや、愛などという言葉は法律論には出てこないのです。

 ところが、弁護士になる試験に受かって、弁護士になるとなんだか偉くなったように思う人が後を絶ちません。法律論は正解がないので、どんな人でも無謬ということはありえないはずなのに、なんだか「特別な存在」になったような気がするのでしょうか。弁護士といっても、試験に受かっただけであって、いきなり人格が深奥になるわけではありません。弁護士の資格を持っていても、顧客の金を持ち逃げしたり、事件処理を怠って懲戒されたりする弁護士も少なからず存在するわけです。

上から目線の弁護士にならないために…

 吉川英治が世の中に100人いたら100人が師であると書いていましたが、その通りです。弁護士が上から目線で顧客から事情を聞いても、事件の全体はわかりません。相手方弁護士に単に法律論を振り回すだけでは何も解決しません。裁判所で偉そうな態度や蝶ネクタイをしても、白い目で見られるだけです。

 こういった弁護士にならないように、社会的に必要な能力は本来OJTで他の弁護士から怒られたり、学んだりして身につけていくべきことなのです。新人弁護士は社会人としては新米なのですから、必ず何年もOJTを受けて、はじめて一人前になっていくということを理解し実行しなければならないと思います。

 私のパートナーは現在教授職に力を入れていますが、私の元上司です。今でも、ためらいなく事件処理について相談し、怒られています。20年前に比べたら、怒られる回数は減ったと思いますけどね。このように、人に恵まれない弁護士というのは、たぶん不幸でもありますし、仲間がいなくて、「自分は特別だ」感を前面に出してなければ弁護士をやっていけないのかもしれません。私はそういう弁護士を哀れに思います。

 文頭に登場した、日本の経験の浅い弁護士さんですが、やたら書いてくる文章に、「事務員」という言葉を使いたがります。この弁護士なりの屁理屈があるのだと思いますが、私は試験に一回通ろうが通っていないのだろうが、事務所の中で分け隔てをしたことがないので、「事務員」という呼び方にかなり違和感を持っています。

 一つの法律事務所の中でもパートナーとかアソシエートとか色々な区別をすることを、アメリカでも日本でも行っていますが、私はなぜか違和感があるので、私は「うちの事務所の弁護士」程度でしか紹介したことがありません。私は、みんなが仲間で意見を交換できるようにして、和気藹々と仕事ができることが良いと思っていますし、仕事をするうえで、あまり上下関係にこだわる必要がないと思っています。

 事務所で人を雇うときも、弁護士だろうが、そうでないだろうが、必ず全員で一致しなければ雇いません。そうやって雇われた人は全員で盛り上げていこうという雰囲気になるからです。

事務所内の人間関係がパワーに

 こないだ、特別のボーナスプランをつくろう、と事務所の会計チームが言い出しました。よく働く弁護士と他の人たちとちょっとはもらえる額に差をつけないと、申し訳ないのではないかと思って、弁護士たちと軽く話しをしたのですが、

「もともと、どのようなことでも鈴木さんが、誰も差別的に扱わないというのが、この事務所の良いところじゃないですか」と言われてしまいました。

 私は弁護士であることを誇りに思うのではなく、こういう人たちと仕事を一緒にしていけることが弁護士であろうがなかろうが、人としての幸せだと思えるのです。この事務所内の人間関係が事務所内でもクライアントとも相乗的なパワーを生み出して事件を解決できるのであって、決して偉い弁護士が一人いるから、何かを成し遂げているわけではないのですね。


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作成者: jinkencom

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