アメリカ他州へ旅行中の交通事故。裁判の管轄は?(1)_1097

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法律ノート 第1097回 弁護士 鈴木淳司
Feb. 21, 2018

 冬季オリンピックのニュースが多いですね。私はあまりウィンタースポーツ派ではないので、競技種目にのめり込めないのですが、スキーやスノーボードなどのスピードをテレビで観ていると、あんなに高スピードでよく対応できるものですね。自分がやったらすぐに複雑骨折しそうな気がします。

 しかし、米国女性の選手が自分の番になったとき、他の選手のコーチに、「うまくいくように祈っていてね」と言って滑走しはじめました。敵国にも自分のことを祈らせるというのは、なかなか感心しました。皆さんも、オリンピックを楽しまれていますか。

アメリカ他州へ旅行中の交通事故。裁判の管轄は?(1)_1097

 さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。頂いている質問をまとめると「カリフォルニア州在住の者です。家族でアメリカ国内を旅行していたときに交通事故に巻き込まれました。子供は英語が達者なので、力を借りながら相手方の保険会社と事故について自分で交渉を続けていました。しかし、フロリダ州で事故にあったのですが、一定期間を経過するともう請求ができなくなると周りから言われています。カリフォルニア州とフロリダ州では、交通事故の裁判をするかどうか決める期限が違うということを知りましたが、カリフォルニア州で裁判はできるのでしょうか。また、請求ができる期限についても、私達家族が住むカリフォルニアの法律が適用されるのでしょうか」というものです。

どこの州の裁判所で、いつまで裁判できるのか?

 質問の詳細を読むと大きな事故ではなかったようで、身体が大丈夫であったことが何よりです。質問の内容を読むと、相手方の運転手に過失がありそうな案件ではあります。弁護士の方にも相談されたようですが、ご自身で補償金の交渉をされているようで、うまくいくことを願っています。

 さて、今回の質問はいくつか法律ノートで考えるべき論点があります。一つは、今回のような事例はいったいどこの州の裁判所で判断されるのかという問題です。そして、もう一つは裁判をすることができる期限ということになると思います。

不法行為が発生した場所か、不法行為者が居住する場所が裁判管轄

 まず、今回のようなケースではどこの裁判所に提訴できるのかを考えたいと思います。

 交通事故のように、契約関係もない赤の他人から損害を被るような場合、法律的には不法行為(Tort)と呼びます。これは法律用語ですが、路上でいきなり殴られたとかいう場合も不法行為です。今回は深くは考えませんが、ある人が注意するべきことをしなかったことで、損害を発生させた場合に不法行為責任を負うということです。

 今回の事例では運転に過失があり、その過失から損害が発生したことを証明したら、注意義務に違反した人は損害を賠償しなければなりません。ここでは一般論になりますが、不法行為責任に関して訴訟を提起する場合、その不法行為が発生した場所、または不法行為者が居住する場所が裁判管轄を持つということになります。

 そうすると、今回の場合、一番可能性があるのが、フロリダ州で事故に遭った場所ということになります。次に可能性があるのが、運転を誤った人が住む場所ということになるでしょうか。

 残念ですが、被害に遭った今回の質問者の居住地であるカリフォルニア州では裁判はできない可能性が高いと思います。もちろん加害者もカリフォルニア州に住んでいればカリフォルニア州でも可能かもしれません。

裁判を受け付けてもらえる期間は州で異なる

 次に、いつまでに裁判を提起しなければならないのか、ということについて考えていきたいと思います。

 まず、フロリダ州で事故に遭い、フロリダ州で裁判するとなると、基本的にフロリダ州の法律が適用されます。カリフォルニア州在住の人が提訴しようと、どこの州の人であろうと、関係はありません。フロリダ州の法律が原則適用になると考えてください。

 フロリダ州では、交通事故の発生から4年以内に出訴すれば、裁判を受け付けてもらえます。これを出訴期間と言います。カリフォルニア州法で定められている出訴期間は交通事故の発生から2年ですので、フロリダ州の方がのんびり裁判するかどうか、考えられることになります。そうすると、今回の質問の場合には、フロリダ州の法律に拠った方が、裁判を起こさないで交渉できる期間が長いので、ある意味有利なのかもしれません。

 ここで、法律ノートでは出訴期間という言葉を使いましたが、よく日本語で時効という言葉も使います。次回、この出訴期間と時効という概念について、考えてみたいと思います。

 春が来たと思ったら寒かったり、私の周りでも風邪をひいている人が多いですね。私はうがいに加え、鼻洗浄という荒業を使って、風邪を免れています。今年の風邪はかなりしつこいようなので、注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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作成者: jinkencom

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