日米の経営判断の違いに関する一考(2)―日本人にとっての「和」_1106

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法律ノート 第1106回 弁護士 鈴木淳司
Apr. 21, 2018

 日本という国が外国のいわゆる支配の下に置かれるのは、卑弥呼と足利尊氏の弟(これらは中国の「王」になった)、そして第二次世界大戦後しかありません。この第二次世界大戦を引き起こした原因は、日本という資源のない小国が、中国とアメリカを両方相手にして戦争なんてできない、のに突っ走ったということになります。

日米の経営判断の違いに関する一考(2)―日本人にとっての「和」_1106

 私の友人弁護士のお勧めの本で堀田江理「1941決意なき開戦」(英語名ではJapan 1941)という本があり秀逸なのですが、「御前会議」などの名前において、軍が率先して戦争をすることを決めてしまいました。たしかに、この本に書かれている決議の方法は強引ですし、決議の過程が西洋的には曖昧なニュアンスもあるのです。形式的に天皇を立てつつ、同時に天皇をないがしろにしながら、日本の方向性が決まっていきました。会議をしたにもかかわらず戦争には勝てなかった日本です。そこからなんとなく、日本式の会議はどうなんだ、という疑問につながっていったのかもしれません。

元首が変わればすべて変わる中国、アメリカ

 日本では、鎌倉時代から武士が育ち、商業も栄え、室町時代には確実に守護大名というブレーンが確立しました。政治的な判断をするには、この大名が会議に出席し日本の「経営判断」をしてきました。現在経済戦争をしているアメリカと中国と違って、日本は歴史的にどのような政治状況でも、血脈を継いだ天皇が生き残っているということです。どの時代でも、天皇は生きているのです。中国もアメリカも、元首が変わればすべて変わります。中国は、国が変われば全政府の一家郎党はむな殺しになっていました。まあ、徳川家康も似たようなことをしたといえば、しましたが。しかし、日本はどの時代においても天皇はかならず存在しています。不思議な国だと思います。

室町時代と同様の方法論で経営する日本企業

 アメリカでは、Board of Directorsという機関が根本的な意思決定をして、その意思を執行するOfficerがいるというのが会社の建付けです。日本は、取締役会というのがあり、そのなかで決まった事柄を執行するのが取締役の一人である代表取締役となります。

 アメリカでは、重要事項の意思決定の機関と執行機関は分離されていますが、日本では厳格に意思決定と経営の分離が峻別されていません。

 アメリカの方法論はそれはそれで、経営の迅速化には役立っているのだと思います。アメリカ人にとってはこれが当たり前で、CEOが高額の給与を取るというのは、長年に渡って何かしろ、と言っているわけではなく、その数年で結果を出せと言っていることの裏返しというわけです。

 一方で、日本の企業は室町時代から基本的には同様の方法論で経営をしている企業が多くあります。DNAもありましょうし、進化はしているのでしょうが、原則、この方法論が1000年以上は機能していることになります。ウイスキーやワインのビンテージじゃないですが、古くからあることは貴重でもあり、それなりに意味あることかもしれません。

歴史から学ぶ、世界に通用する経営

 ここで、日本の企業経営を考えると「和」が切っては切り離せません。日本の歴史で、専制政治をひこうとすると足利尊教や織田信長のようになってしまいます。戦のあとに、丸腰のところをやられてしまう反面、謀反した者はあまり良い末路を辿りません。強引に経営方針を決めると、日本はダメな国なのです。未だに日本の企業でアメリカ式の経営の方法に疑念を持っている経営者も多くいます。一方で、現代社会では、海外とのからみがないと、日本企業のビジネスも成り立ちません。

 私は、日本の企業を見てきて、ちゃんと経営判断をしている会社はしているように思います。しかし、企業によってはその判断プロセスが遅いということも他の国と比べたら言えるとおもうのです。豊臣秀吉が出て来る以前、日本の武将は、情報を収集し、判断をするのがとてもはやく、生きるか死ぬかの瀬戸際で戦っていました。当時でさえ、一方で守護大名の会議はあったわけです。

 歴史から学べば日本の企業も世界に劣らない経営判断をできるDNAは充分にあるわけで、(1)迅速な判断ができるよう取締役会の機動性を常に念頭において進化させていくこと、(2)判断をするための情報収集のソースを常に広げて確保すること、を怠らなければ、アメリカ式の経営方法を模倣しなくても、世界で通用していくと考えられます。

「人」を重んじる日本の会社経営

 日本の会社経営は、「人」を重んじてきました。これに習うことは、これからも人間が生きていくうえで、重要なことかもしれません。いわゆる「和」というのは、ネガティブに日本社会にあらわれている部分はあるのかもしれませんが、良い部分もたくさん歴史上残っています。表面的な人参をぶら下げるのではなく、人を高めてくれる会社が日本にはいくつもあります。アメリカ式だから良いという風潮がありますが、日本人は長く持ち続いている歴史から学ばないと損なのではないかな、と最近企業の経営判断を仕事で見ていて思いました。以前、友人の弁護士から「三流の弁護士は金を残す。二流の弁護士は名誉を残す。一流の弁護士は人を残す。」と教わりましたが、人を育てるためには、怒らずも阿らない「和」の心が経営をするうえでも大事な視点なのかもしれません。

 次回は皆さんからの質問をまた取り上げていきたいと思います。


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作成者: jinkencom

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