H-1Bビザの新規発給上限
もう、インターネットでもいろいろな情報が出ていますが、2008年度以降はじめて、H-1Bビザの新規申請枠が完全に埋まる事態が発生しています。他の就労ビザ、たとえばEビザやLビザといった種類の非永住型ビザには、この発行枠の上限というものがありませんが、H-1Bビザは、連邦議会が制定した法律によって、上限が決められています。基本的に新規発行分の上限は、一年度に6万5千件であり、さらに最近ではこれに加えて、米国で修士以上の学位を持つ外国人に2万件が枠として用意されています。したがって、合算すると、8万5千件の新規発行枠があるということになります。
ここで注意したいのは、この枠にはすでにH-1Bビザが発行されており、そのビザを更新(更新とは言っても、内容は再申請と変わりませんが)する場合は含まれていません。
ですので、新規申請枠というのは、今までにH-1Bビザの許可を受けていない外国人によって主に使われていることになります。これは雇用が促進されているという状況にもつながっているので、ある意味景気回復のバロメーターになっているともいえます。アメリカの景気はよくなっているようですね。
2014年度の申請分については、すでに受付期間開始からすでに12万4千件の申請を移民局は受理したようで、その中から、合計8万5千件を抽選で抽出したようです。
したがって、抽選に外れた申請については、申請書は差し戻されることになります。差し戻された場合には、申請費用等すべてが返却されることになります。
H-1B抽選にもれた方の就労ビザ
抽選に外れた方々は、他の就労ビザを模索しなければならなくなります。
就労ビザの種類はいくつかありますが、卓越した功績があれば、以前ご紹介したOビザというのも考えられますし、会社の形態や申請者本人の経歴を加味して、EビザやLビザというのも考えられます。EビザやLビザというのは、資本関係または親子会社関係で、米国と外国のつながりを要求されます。その点がHビザと大きく違うところです。Hビザは基本的に米国の会社で外国人が働くということだけを前提にしており、その外国人の能力および会社の給与支払能力にスポットライトが当てられるビザです。
したがって、EビザやLビザは外国の企業や資本をアメリカに呼び寄せる性質がありますが、Hビザはアメリカ国内の労働者人口のポジションと完全にバッティングするわけです。
ですので、Hビザには発行枠の上限が決められるという立法の経緯があります。以前、私の事務所にいらっしゃったクライアントの方が、Hビザだけ上限を決めるのは違法ではないかとおっしゃっていました。
しかし、議会は外国人の出入国および滞在について広汎な裁量を持っています。これはアメリカでも日本でも変わりません。ですので、違法とは評価されないでしょうね。
H-1B新規発給と新規以外の発給
今回2014年度の枠については、新規申請分のみが上限にカウントされることはお話しました。ですので、覚えておいていただきたいのは、新規申請分以外の申請については、カウントされないということです。このカウントされない申請には、上述したビザの延長申請、現在の雇用者のもとで職種を変更する申請、雇用者を変更する申請などが含まれることに注意してください。
H-1Bビザの申請が抽選に漏れて、対策を立てなくてはならない方々もでてくると思います。対応策はいくつか考えられますから、万が一抽選に漏れた場合には、多国籍企業であれば、他の国に配置をするなどの対応も考えてくれるかもしれませんし、アメリカにとどまって別のビザを申請するということも考えられるかもしれません。どちらにしても、現在の滞在資格の期限内に余裕を持って対応されてくださいね。