著作権侵害による損害賠償、備えは十分?(3)_1156





法律ノート 第1156回 弁護士 鈴木淳司
April 16, 2019
ゴルフのマスターズ大会で、タイガー・ウッズ選手が電撃的なカムバック優勝をしました。10年ほどのブランクを乗り越えての優勝でした。プライベートについても、マスコミに散々叩かれました。手術を含め、体調もよくない状態で逮捕されたりしながら、ついに再度の優勝をもぎ取りました。彼の忍耐を含む精神力にはとても感動しました。ところで、ゴルフを少しはご存知の方はマスターズの優勝者は、大会直後に緑のブレザーを着て、トロフィーを持ちます。選手の体型はマチマチなわけで、誰が優勝するのかは、大会が終わる直前までわからないわけです。ところが、タイガー・ウッズ選手が着ていたブレザーは彼にピッタリしていました。優勝が決まった瞬間に誰かが裏で仕立てるのでしょうか。
 

著作権侵害による損害賠償、備えは十分?(3)_1156

さて、前二回考えてきた、「ベイエリアでスタートアップ企業に参加している者です。最近、当社のウェブサイトについて、第三者から当社が使用している写真や画像が不正使用なので、使用を差止めるように警告文が来ました。ウェブサイトの作成段階で、意図せず使用していたような形なのですが、すぐに使用はやめました。今後、損害賠償などがくる可能性はあるのでしょうか。また、このような問題を避けるため、どのような対応をしていくのか教えてください。当社は、まだ規模が小さく弁護士に頻繁に相談することがファイナンス的に難しいのです。」という、質問を続けて考えていきましょう。
 

損害賠償がなされた場合

今回は警告文が届いていた場合、かりに損害賠償請求をされたとき、どのようなシナリオが考えられるのでしょうか。
まず、かなり有名な作品の侵害があった場合には、侵害によって得られた利益などを基礎に損害額を考えますが、アメリカの法律では、法律で定められた(法定といいます)損害が定められています。連邦の法律では、基本的に、一作品毎の損害として区切っています。色々な事情はありますが、法律で、竹を割ったように考えるためには、「一作品」として考えるようにしているのです。
連邦の著作権に関する法によると基本的な損害は、750ドルから3万ドルとされています(17 U.S.C. § 504)。この幅は、裁判所の裁量によって決まります。
なので、警告文をもらったとしたならば、一応、可能性としてこのような幅の損害額が考えられます。
ただ、訴訟にも費用もかかるわけで、かなり大規模な侵害行為がなければ、訴訟をしてもコスト倒れになる可能性はあり、テークダウンがあれば、そのまま事件にはならないケースが大部分だと思います。
 

警告文後も侵害継続と認定されたら

とは言え、警告文が来た場合、その通知に書かれている侵害行為を「知っている」と思われてしまう可能性があります。
侵害があると知っていて、ことさらに侵害を続けていると、連邦の法律では、最高で一作品15万ドルの損害が認められています。法律では、「知らなかった」ということが防御方法になりますが、警告文を受け取っていると、このような防御がかなり難しくなってきます。
かりに、警告文を受け取っていなかった、侵害を知らなかった、と主張できれば、損害額を減額できるのですが、裁判で認められるかはかなり難しくなるわけです。
 

著作権の登録が前提

ここまで考えてきた連邦の法律に基づく損害金を求める場合には、少なくとも侵害されたと主張する人が、連邦著作権局に著作権を登録していること(17 U.S.C. § 412)が必要ですし、その登録から3ヶ月が経過していなければなりません。
著作権は、なにか創造した場合には生まれるのですが、損害金を求める場合には、著作権を登録して公にしておかなければならなりません。
裏から言えば、著作権の侵害を言われた場合には、その著作権が本当に存在するのか、著作権局のウェブサイトから確認することも可能です。
したがって、弁護士に相談する前に、一度、本当に侵害があったかは、各自で確認することが重要だと思います。
 

利用する写真・ロゴ・文章を著作権局に登録

上記が、今回の質問にある損害に関するまとめです。
このようなトラブルを防ぐためには、今回の相談者のように、ウェブサイトなどで利用する写真、ロゴ、文章などは、出来る範囲で、著作権局に登録をして、自己が正当な著作権者であることを公にしておくことも一つ考えられる手段だと思います。
 
これでひとまず、今回の質問へのお答えは締めくくって次回新しい質問を考えていきましょう。
サンフランシスコではやっと春だ、と思ったら、雨が降って、花が散ってしまわないか心配です。忙しい毎日なのですが、綺麗な自然を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。


▼DVグリーンカード抽選サポート、お申込み受付中
https://jinken.com/entry/

絶対アメリカに行きたい!住み続けたい!大きなチャレンジをして自分を変えたい!
Momsを通じてご応募なさる方々の「本気」にこたえます。
応募期間は例年10月のおよそ1か月。
もしもDVが実施されなかった場合には、もちろん全額対応させていただきますのでご安心ください。政権の移民政策に対する不安も大きいところですが、Momsでは柔軟に対応してまいります。









 

作成者: jinkencom

jinkencom について JINKEN.COMの運営者であり、カリフォルニア州弁護士として活躍中の鈴木淳司弁護士のブログです。「移民法ブログ」では米国の移民分野についてホットな話題を取り上げて月に一度更新、「アメリカ法律ノート」は広くアメリカの法律相談に答える形で、原則毎週更新しています。なお、本ブログの著作権は著者に帰属します。 *たびたび法制度が変わりますので、最新情報をご確認の上、手続きされてください。