アメリカで事業買収(2)_1140





法律ノート 第1140回 弁護士 鈴木淳司
Dec 15, 2018
アメリカで事業買収(2)_1140
飛行機の機内で忘れ物が見つかり、わざわざ引き返したというニュースがありました。忘れ物は人の心臓。見つけた人もびっくりしたでしょう。たぶん移植のために、運搬中に起きた事故らしいです。長いフライトだとなんらかの忘れ物をすることはよくありますが、どうもプロの臓器を運搬する会社が忘れてしまったそうです。機内清掃もするでしょうし、なぜ離陸を終えるまでわからなかったのか、不可思議なニュースでした。移植用でしょうから、手術に間に合ったかが気になります。世の中には不思議なニュースがありますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
 
さて、前回考えてきた「日本から質問しています。現地カリフォルニアに所在する小さな加工業者を買収しようと計画を進めていたのですが、最近になってこの業者は、会社形態ではなく、オーナーの個人所有ということがわかってきました。当社(日本の企業)としては、このカリフォルニアにある生産加工のロジスティックを一括して譲り受け事業をアメリカ国外にも展開したいと思っているのですが、このような個人事業を買い受けることが社内で問題になっています。注意点を教えてください。」という質問を続けて考えていきましょう。
 

個人事業主の買収

前回は個人事業主と会社形態について、どのように棲み分けるのかを考えました。少々注意をすれば、わかることなので、これを機に理解をしておいてください。
今回は、少し進めて、かりに個人事業主の商売を、買い取る場合には、どのような法律的な点を気にしなければならないのか考えていきたいと思います。
個人事業主というのは、個人の会計と商売の会計が一体になっているはずです。すなわち収入も個人で受けて、必要な経費を払い、税務申告も個人で行っています。
そうすると、かりに個人の税務申告書を確認したとしてもわからない点がかなりあるのだと思います。
とすれば、「ビジネスを買う」といっても何を買うのか、判断基準がわかりにくいということになります。
 

個人事業主の負債を見極める

一番に注意しなくてはならないであろうポイントは、この売主となる個人事業主にどの程度の負債があり、事業に影響しているのかを確認することです。
毎月ローンとして返しているのであれば、それは会計書類にも出てくるでしょうが、借入金のなかには、何年後に一括返済などというものもあるので注意が必要です。
もちろん本人に聞き取りをして詳細を明らかにするのが重要ですが、すべて網羅しているのかは、不安なこともあります。最終的に不知の負債については、売主が責任を負う、という形で契約書のなかに盛り込むことになりますが、不意打ちが発生する可能性もあるので、詳しく調べておくことは重要です。
単に負債があるだけでは、個人事業主の売主が負うような形になっているかもしれませんが、肝はどのような担保権が動産などの財産に設定されているのかを明らかにすることが大事です。
 

株式会社の買収方法

次に、株式会社であれば、株を譲り受けるという売買方法と、財産を譲り受けるという事業譲渡の方法が考えられます。株を譲り受けると、会社に存在する負債、たとえば、税金の滞納分なども引き継がれるので一般的におすすめできません。もちろん、親会社が完全にコントロールしている子会社を合併するというのであれば、全体像が把握できているのですから、あまり問題はありません。
一方で、まったく以前から関係のない第三者から会社をそのまま譲り受けるのは、不知の負債がある可能性から、リスクは存在するのです。
したがって、売主である会社にある財産だけを切り抜いて事業譲渡とすることが、他に考慮事情がなければより良い選択になることが多いわけです。負債を切り離せるのです。
 

個人事業から譲渡可能な財産のリスト化

この会社の考え方からわかるように、個人事業主のビジネスにしても、譲り渡しの可能な財産を定めて、価値をつけ、その対価を払うことで事業を譲渡することが可能になります。
財産といっても、目に見えるものだけではなく、ノウハウや顧客リスト、知的財産権など、目に見えないが、かなり重要なものも含まれます。のれん代、ということもありえます。
もちろん、売買が発生すると課税対象になりますので、税理に詳しい人をいれて、詳細な財産の構成をつくるべきなのですが、購入の対象となる財産をリスト化していくことがまず第一歩になります。
ここから次回考えていきましょう。
 
私の所属する事務所のパーティーも無事に終わり、もう年末だな、という感じになってきました。やり残したことも多くあるので、色々忙しいのも年末感でしょうか。体調を崩す人が周りでも多いです。体調に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。
 


 
▼DVグリーンカード抽選サポート、お申込み受付中
https://jinken.com/entry/

絶対アメリカに行きたい!住み続けたい!大きなチャレンジをして自分を変えたい!
Momsを通じてご応募なさる方々の「本気」にこたえます。
応募期間は例年10月のおよそ1か月。
もしもDVが実施されなかった場合には、もちろん全額対応させていただきますのでご安心ください。政権の移民政策に対する不安も大きいところですが、Momsでは柔軟に対応してまいります。
 






 

作成者: jinkencom

jinkencom について JINKEN.COMの運営者であり、カリフォルニア州弁護士として活躍中の鈴木淳司弁護士のブログです。「移民法ブログ」では米国の移民分野についてホットな話題を取り上げて月に一度更新、「アメリカ法律ノート」は広くアメリカの法律相談に答える形で、原則毎週更新しています。なお、本ブログの著作権は著者に帰属します。 *たびたび法制度が変わりますので、最新情報をご確認の上、手続きされてください。