車の急接近に驚いて転倒。運転手の責任は?[2]_1011

JINKEN.COM_Golden Gate, San Francisco, California, USA.

法律ノート 第1011回 弁護士 鈴木淳司
June 16, 2016
 
 先週サンフランシスコで、救急車が緊急時にかけつけた場所で盗まれて、ベイブリッジの欄干に激突炎上して大渋滞を引き起こしました。盗難事態も、ひどい話ですが、ここまで多くの人に迷惑をかけるのは非常識極まりないなぁ、と思いました。人命にかかわる仕事に水を差すことは本当にやめてもらいたいと思います。
みなさんはバスケットボールのファイナルシリーズを観戦されていらっしゃいますか。

車の急接近に驚いて転倒。運転手の責任は?(2)_1011

 さて、「高齢の母と私が歩いているところ、急に車が来ました。それをよけたところ、逃げ切れず、母は転んで頭などを打ちました。目撃者がいたとしても、その車が、あくまでも直接母にぶつかっていない場合には、運転手には何の責任もないのでしょうか。」という質問を続けて考えていきましょう。

不法行為による責任追及

 前回はごく基本的な法律の概念ですが、「不法行為(Tort)」というものについて考えてみました。
難しかったでしょうか。理解が難しかったら、また法律ノートまで「もっと説明しろ」とおっしゃっていただければと思います。

 とにかく、前回考えたことをまとめると、今回の質問のような場合、運転手に過失が認められ、質問者のお母様が転んだことと因果関係が認められれば、運転手は法律的に損害賠償責任を負うことになります。

運転の過安の前提、安全に運転する義務?

 さて、今回運転手に過失があるのかを考えるにおいて、どのような安全に運転する義務があったのか、その義務にどのように違反しているのか考えなければなりません。
もし、信号への注意や停止する注意を怠ったという事実があれば、それは過失になり得ます。またスピード違反なども注意義務違反になりえ、過失となります。

 よくある事例としては、車が右折や左折をしてきて、横断歩道をわたっている人にぶつかるか、またはぶつかりそうになるようなケースです。このような場合には、基本的に車側が歩行者を優先させる義務があるので、それを怠っていれば車側に責任があることになります。

義務違反行為の結果、生じた怪我か

 車両側に上記のような安全配慮義務に違反するような運転があり、その行為から怪我が発生した場合には、今回のような事例では損害賠償を請求できることになります。

 具体的には、たとえば合法的に横断歩道を渡っているときに、右折か左折してきた車にひかれそうになり、それを避けるためにひっくり返って怪我をすれば、充分に損害賠償請求をすることができます。
今回質問されている方のお母様がこのような事故に巻き込まれているのであれば、充分に損害賠償ができることになると思います。 

因果関係の認定は難しい

 以上のような場合には、損害賠償が可能と捉えられますが、実際に接触事故がない場合には、運転手に過失があったのか、また、運転と怪我のあいだに因果関係があったのか、よく検討をしなければなりません。
 これは、専門家の意見を事件ごとに聞くべきでしょうが、いくつか、損害賠償請求をするにおいて問題になりそうなケースを考えておきます。

被害者側の非も考慮される

 たとえば、今回質問されている方がお母様と一緒に信号無視をして道路をわたっているという場合が考えられます。
もちろん車は避けなければなりませんが、接触していないと、信号無視の責任も問われる可能性があります。また、似たような事例で歩道を歩いていて、後ろからきた車にクラクションを鳴らされびっくりして、横転してしまうという場合もあるかもしれません。このような場合には、歩行者に非が認められるかもしれません。
 
 あるいは、いきなり車がでてきて驚いてひっくり返ってしまったという場合も考えられるかもしれません。
このような場合では、車に一時停止無視などの違反が見つからないかぎり、歩行者も車の運行には注意しなければならないわけですから、運転手の責任にすることは難しいかもしれません。
 
 歩行者対車だと、一般的に車側が悪い、といったことを言われますが、歩行者側に問題があれば、立派な過失となります。
信号無視があれば歩行者は自分の責任もあるので、損害賠償を請求したとしても、自分の過失で相殺されるか、請求自体が難しくなるということは理解されておいた方が良いと思います。

事例に即した判断が求められる

 このように今回の質問については、簡単にはお答えできないのです。
事例に基いてどのような過失が認められるのかを慎重に判例などに照らして考えなければなりません。

 一方で、泣き寝入りをする必要はなく、気軽に法律の専門家にお尋ねになるのが良いと思います。
 
 
次回、また新しいトピックを考えていきたいと思います。
また一週間暑くなったり涼しくなったり忙しいですが、体調を整えて夏を乗り切っていきましょうね。

 

アメリカ法務への橋渡し ブリッジサービス

 敷居が高いと思われがちなアメリカの法律事務所・弁護士とのご相談に向けて、JINKEN.COM日本人スタッフが状況把握・情報整理のお手伝いいたします。しっかりとご事情をお伺いし、何が課題かを見極めることが、迅速な解決につながります。
 やり取りは、すべて日本語です。また、ご希望に応じ、Zoom/お電話等での直接相談の手配もお受けいたします。i@jinken.com または下記フォームよりお問い合わせください。

■アメリカの永住権を抽選で取得ーDiversity Immigrant Visa Program

 アメリカの永住権を抽選で取得する制度があるのをご存知ですか?
日本からも、毎年永住権者が生まれています。

 日本出生の方は、高校卒業時点からご応募ができます!当選後も安心のサポート。まずは正しい応募から。

■グリーンカードDV当選後サポート

 グリーンカードDV抽選に応募して、当選の確認を忘れていませんか?当選は、忘れた頃にやってきます!

作成者: jinkencom

jinkencom について JINKEN.COMの運営者であり、カリフォルニア州弁護士として活躍中の鈴木淳司弁護士のブログです。「移民法ブログ」では米国の移民分野についてホットな話題を取り上げて月に一度更新、「アメリカ法律ノート」は広くアメリカの法律相談に答える形で、原則毎週更新しています。なお、本ブログの著作権は著者に帰属します。 *たびたび法制度が変わりますので、最新情報をご確認の上、手続きされてください。