法律ノート 第1065回 弁護士 鈴木淳司
July 11, 2017
アメリカではラーメンが大流行していますね。かなりの数の日本食店舗がラーメンを出しています。日本では、ラーメンは短時間で食べて、店を出るというのがお約束ですが、アメリカではずいぶんゆっくり食べているのをみかけます。のびちゃうように思うのですが。極めつけは、残った麺と汁を容器に入れて持ち帰る人もいます。次の日に食べている姿は想像したくありません。外国から入ってきた新しい食文化の波という感じなのでしょうか。
トラストとトラスティ、仕組みを知りたい[3]
引き続き、以下の質問を考えてみましょう。
「私と夫は(あるカリフォルニア州外)90代と80代で二人で暮らしています。現在、トラストを作成してあるのですが、ある税務会計事務所の方に相談をしたところ、その事務所の方がトラスティになってくれるということになりました。とても親切な方で最初は感謝したのですが、月500ドルを支払うように要求された上に、トラストを書き直して、今我々が住んでいるアパートは、我々夫婦が死んだら彼女の所有になることになってしまいました。そこで質問ですが、何故、トラスティには無料のトラスティと有料(月500ドル+実費)の2種類のトラスティがあるのでしょうか。アメリカの法律では、有料のトラスティを認めているのでしょうか。」という質問です。
裁判所が関与する後見制度、そうでないトラスト
前回、皆さんと考えたのは、後見というのは裁判所が精神的、肉体的に自分自身の判断をするのが難しい人を後見人という立場の人を付けてモニターする制度であるということです。
後見制度の対象となる人のことを被後見人と言います。日本の法律用語で「被」なんとか、という言い方があった場合、何らかの法律的な効果が及ぶ、という意味です。被後見人といえば、後見の効力が及ぶ人ということになります。
後見制度は裁判所が監督する制度ですので、被後見人の自由になんでも決まるわけではありません。後見をする人の費用や、被後見人に関して生じた出費については裁判所の許可が必要となります。
さらに前回、トラストについて後見と対比して考えましたが、トラストというのは裁判所がかかわるわけではなく、自分の意思で作成し、その内容が実行されていくということになります。
トラストは自由意思で財産管理を決定
トラストというのは、設定する人の自由意思で色々決められるわけですから、後見制度の被後見人とは色合いが違います。
あくまでも設定する人が自分の財産をどのように使うかを決めるのですから、今回の質問にあるトラスティを誰にするのかも、自由意思で決められることになるわけです。
今回質問されている方は、80代ということですが、かなり意思もしっかりしていて、質問の内容もよくわかります。ただ、トラストというものの性質について、「自分で決めるのが基本である」ということを理解していれば、自ずから答えはでるようにも思います。
自分の死後のトラスティ継承者を指定
トラスティの設定は自分の意思でできるのですから、たとえば自分が生きている間は自分や配偶者がトラスティになり、死亡した場合には、承継するトラスティ、通常は家族(子や兄弟など)を予め指定しておきます。これが、鉄板のパターンです。
契約内容の確認を
今回質問されている方のように有料でトラスティを設定するというのは、かなり変則的です。そもそも、トラスティになっていたとしても、毎日何かするということではないので、もしかしたら、通常のトラスティの業務を超えて、何らかのサービスを提供する契約になっているのかもしれません。
いずれにしても、トラストにトラスティがどのように規定されているのか、自分の意思を確かめることと、このように有料のトラスティ・サービスというのがあるのであれば、その契約にかかわる契約書が存在するはずですので、その内容を確認する必要があります。トラスティを誰にするかは、あくまでも自由意思ですので、無料であろうと有料であろうと、自分がどのような契約をしたのかにかかってきます。もし、自分で色々なことをする能力があるのであれば、御自身が生存中は御自身をトラスティに指定すればお金はかかりませんし、家族をトラスティにしておけばお金はかかりません。もちろん、お金を要求する家族もいるのかもしれませんが、それは例外的だと思います。
とにかく、有料のトラスティなどいるのか?と思われているのであれば、トラストと有料サービスの契約書を利害関係のない法律家にみてもらうのがよいかもしれませんね。
次回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
カリフォルニア州では、異常に暑いところもあり、気候が変だな、という気がします。皆さんがお住いの地域も暑いのでしょうか。熱中症などに気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。